『ギークス』第3話 俳優としての滝沢カレンが内包するギャップ
#ギークス
14日に放送された『ボクらの時代』(フジテレビ系)で、まったく中身のない雑談を披露していた松岡茉優、田中みな実、滝沢カレンの3人が警察勤務の女性を演じる『ギークス~警察署の変人たち~』(同)も第3話となりました。
「週末の井戸端会議で事件解決をスーパーアシストしてしまう新感覚の“井戸端謎解きエンターテイメント”」という触れ込みですが、本来ならあの『ボクらの時代』みたいな井戸端会議の感じを出したいんだろうなと思うんですよね。あの感じで、なーんも捜査に参加しないまましゃべってるうちに事件が解決できたら、ホントにすごいドラマになってたと思う。なかなか難しいよね。
振り返りましょう。
■ミステリーとしては複雑なことをやってる
第1話の結婚式、第2話のぬいぐるみ、今回の学校での幽霊騒ぎと、謎解きとしてはこれまでの全話で二重構造の謎を作っていて、けっこう複雑なことをやってるんですよね。ちゃんと、ミステリーとしてもおもしろいものを作ろうとしている。
それはもちろんいいことだし、現状ではミステリーの強度が『ギークス』というドラマを引っ張っているとも思うんですが、事件が複雑であるがゆえに本来は「あんまやる気ない」「定時で帰ることが最優先」というキャラクターで登場したはずの3人が、積極的に捜査に参加しなければならない状況が生まれていると感じるんです。
前回のレビューで、ただ楽しいだけのダベってる時間を増やしてほしいみたいなことを書きましたが、これだけ事件の解決について伝えなければならないことが多いと、確かにダベるヒマがないよなぁというのが今回の印象でした。
ミステリーとしておもしろいことで、コンセプトから離れざるを得なくなっている。事件をおもしろくすればするほど捜査の時間が長くなって、3人のキャラが薄くなる。3人のキャラを活かそうとすれば、事件をもっと簡単にしなくちゃいけない。そういうバランスの中でせめぎ合ってることは伝わってきますし、3話まででは今回がもっともそのバランスが取れていたと思います。滝沢カレンの酔っ払い芝居もよかったし、あの場面の、みんなが人の話を聞かないで勝手にしゃべってる感じは、このドラマの目指しているであろう空気感、グルーブ感が出ていたと思います。
バランスの話でいえば、事件解決に関わる要素の分配も難しいんですよね。前回、前々回は鑑識の西条(松岡)がほとんど全部解決してしまって産業医・吉良(田中)と交通課・基山(滝沢)があんまり役に立っていませんでしたが、今回は比較的、均等に振り分けられていました。
総じて、やるべきことが複雑なのに、あんまり複雑に見せていない。仕事ができる人が作ってるドラマだなと感じます。
■俳優としての滝沢カレン
松岡茉優が上手いことはもう当たり前なんですが、滝沢カレンって俳優としておもしろい存在だと思ったんですよね。
バラエティでは素っ頓狂なのに空間把握能力が高いという唯一無二の存在になりつつありますが、セリフをしゃべらせると意外にちゃんと芝居できるし、発声発音もとてもきれい。
今回、闇雲に幽霊を信じている人物という役回りでしたが、もともとのイメージが飛び抜けた不思議ちゃんなので、これくらいの言動がまったく不自然に見えない。変なことを言ってる感じがしない。顔面もスタイルもスーパースペシャルに美しいのに、嫌味なく庶民的な存在感がある。
『ボクらの時代』で田中みな実が滝沢カレンのことを「笑顔がベースにある」と分析していましたが、そういうイメージの俳優は少しシリアスをやらせるだけでギャップを生めるということですからね。シリアスなシーンで、イメージ通りに笑っててもシーンとのギャップが表現できるし、シリアスな芝居をしたらイメージとのギャップが出る。
『ギークス』でも滝沢カレンには複雑な家庭環境が設定されていますので、そこらへんも楽しみに追いたいと思います。今回はそんな感じで。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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