『南くんが恋人!?』第1話 「コンプレックス彼女」は「無力化されたカンペキ彼氏」に何を思うか
#南くんが恋人!?
“平成最後のアイドル”高橋由美子が衝撃の全国デビューを果たした1994年のドラマ『南くんの恋人』(テレビ朝日系)から30年。ちっちゃくなっちゃった高橋由美子を武田真治が制服の胸ポケットに入れて持ち歩く姿は今でも印象に残っていますが、今度は南くんのほうがちっちゃくなっちゃいました。
過去、高橋由美子バージョンも含めて4度もドラマ化されている内田春菊の人気コミック『南くんの恋人』ですが、16日に始まった『南くんが恋人!?』(同)は脚本が同じ 岡田惠和大先生ですし、高橋由美子の相手役だった武田真治も出てますし、正統な後継という位置づけになるかと思います。
振り返りましょう。
■南くんはハイスぺ男子
さて、ちっちゃくなっちゃう南くん(八木勇征)ですが、とんでもないハイスペックで登場しました。地元・湘南が誇る大学バスケのスター選手で、将来はNBAも狙えるんだそうです。
そんな南くんの恋人・ちよみ(飯沼愛)は高校3年生。バスケ部の引退試合を終えたばかりで、南くんとは幼なじみ。家族ぐるみの付き合いをしていて、本人たちも周囲もみんな、南くんとちよみは将来結婚すると思っています。要するにまあ、絵に描いたような爽やかカップルだ。
そんな2人が爽やかにお城(ラブホ)で初エッチをしようと約束していた日、待ち合わせ場所に南くんが現れません。南くんはトラックにはねられそうになった拍子に、ちっちゃくなってしまっていたのでした。
いつまでたっても現れない南くんにしびれを切らして一度は帰宅したちよみでしたが、やっぱりいてもたってもいられず、夜の街に飛び出して再び待ち合わせ場所に。そこに、ちっちゃくなった南くんが現れます。
江の島を見下ろす高台、ちよみと、ちよみの手のひらに乗った15cmの南くんは見つめ合うのでした。という第1話。
■コンプレックスと庇護欲とプライドの話
ちよみは、何もかもがカンペキなカンペキ人間である南くんに対して、コンプレックスを隠そうとしません。私みたいな普通の女の子が、南くんと付き合ってていいのかしら。そういう思いを、素直に南くんにぶつけたりします。
しかし、南くんはカンペキ人間なので「ちよみは自分がどんなにきれいで、どんなにかわいくて、どんなにいいやつかを知らないんだよ」などとカンペキな回答を寄越してきます。
そんな南くんがちっちゃくなってしまい、2人の不思議な同棲生活が始まるわけです。
ちっちゃくなった南くんは、その現実を受け入れるとすぐに、ちよみとの待ち合わせ場所に向かいます。野良猫の背中や、側溝を流れるカップ麺の容器や、誰かが走らせる電動キックボードにしがみついて高台を目指す南くんをドラマはヒロイックに描きますが、ちっちゃくなるということは、無力化するということであることも同時に描かれます。
もう南くんはちよみに何かあっても助けてあげることはできないし、ちよみに守られなければ生きていくこともできない。約束していた初エッチもお預けだし、あんなに得意だったバスケもできません。そして、もう女性ファンに声を掛けられることもない。ちっちゃくなることは、1人の人間の社会的な死を意味します。
逆に、ちよみは「自分にはもったいない」と思っていたカンペキ人間の南くんの人生を丸ごと独占することになる。
爽やかかつコミカルに始まった『南くんが恋人!?』ですが、そこには女のコンプレックスと庇護欲、それに男のプライドが複雑に絡まり合う予感が漂います。
基本的には悲しい話なんですよね。恋人がちっちゃくなっちゃうって、基本的には悲しい話を楽しく語れる設定なんだと思います。だからこそ『南くんの恋人』は何度もドラマになっているわけですが、今作は、当時は駆け出しだった岡田惠和が30年のプロキャリアの末にどんな話を作るのかというところに注目して追いかけたいと思います。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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