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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『GO HOME』“不遜な行為”をコメディで

『GO HOME』第1話 死人のプライバシーを暴くという“不遜な行為”をコメディタッチで描く

大島優子(GettyImagesより)

 前クールの『花咲舞が黙ってない』から新設された日本テレビ系の「土ドラ9」枠。今期は身元不明の遺体を「家に帰す」ことを目的とした警視庁身元不明人相談室を描いた『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』が始まりました。

 主演は小芝風花と大島優子。脚本にはTBSの日曜劇場『半沢直樹』『下町ロケット』『陸王』といった池井戸潤シリーズで福澤克雄監督にバチバチにしばかれてきた(であろう)八津弘幸さん。来年には大河だってね。

 それにしても前期は“女・半沢”こと『花咲』だし、今期は八津脚本だし、「土ドラ9」の日曜劇場との親和性は偶然なんでしょうか。何か都合があるのかな。知らんけど。

 振り返りましょう。

■行旅死亡人がおもろいという話

 今の時代にはいろんな情報がインターネットに掲載されておりまして、以前からたまに「行旅死亡人データベース」というサイトが話題に上がってたんですね。最近では、令和3年に京都の蔵で見つかった遺体の情報がバズったりしてました。約19cm四方の座布団の上に、大正10年5月15日発行の新聞紙に包まれた頭蓋骨が見つかったとか。ほかにも、データベースを眺めていると、いろいろ想像をかき立てる実例がたくさん掲載されています。めちゃくちゃ不謹慎な言い方をしてしまえば、行旅死亡人にまつわる話って、確かにおもろいんですよね。

『GO HOME』は、そんな遺体の身元を調べて遺族の元に帰すことを仕事としている方々を描いた原作ナシのオリジナルドラマ。基本的には「この遺体は誰なのか」を軸としたミステリーとして進んでいくようです。

 主人公は「身元不明人相談室」で働く2人の女性。小芝風花が演じるサクラはどうやら学生時代に歩道橋から飛び降りて死のうとした過去があって、大島優子が演じるマコトは現在進行形で彼氏だか夫だか、身内に行方不明者がいる。そういうバックグラウンドがある2人が、事件解決(身元判明)のために奔走することになります。

 すんごい重たいテーマを扱うわけですが、ミステリーとしての楽しさも埋め込んでいくようで、第1話では学校の理科室で見つかった骨格標本が実は1年前に死んだ人間のもので、標本マニアの理科教師が山で拾って持ち帰ってきたという「変態やんけ」という楽しい謎の提示からのスタートでした。

 理科教師は、たまたま動物の死体を探しに入った山で男性が崖の上から飛び降りるのを目撃し、死んだのをいいことに標本にするチャンスだと思って持ち帰っていた。その男性はケガで選手寿命が絶たれたばかりのバスケ選手で、どうやら将来を悲観して自殺したらしい。

 サクラとマコトは未亡人の家を訪ねて遺体の写真を見せますが、夫が死んだと思いたくない未亡人は「あの人じゃない」と否定します。それを2人が、男性が自殺ではなく事故死だったことを証明した上で、「死んだのはおまえの旦那だ」と納得させます。

「これで(あの未亡人も)前に進めるわ」
「でも、これでよかったのかしら」
「それはわからないわ」

 とか言って、次回へ。HPのイントロダクションに書いてあった「ミステリー×ヒューマンドラマ」という触れ込み通りのドラマになっていたと思います。

■なんか、嫌だったなぁ、すごく

 未亡人は納得して涙を流して大団円だったんですが、なんだかずっと嫌な感じだったんですよね。

 男性が自殺だったという結論で捜査が終了し、そこからサクラとマコトは仕事をサボって独自に男性の身元を突き止めようとするわけですが、そのシーンがずっとコメディタッチで描かれるんです。

 上司からは、いろんな事情があるんだからもう遺族には立ち入るな、と命令されている。その状況で、どうしても真相を解明したいという気持ちで勝手に捜査する。そこまではいいんですが、その捜査に向かう前に2人にキックボクシングジムで運動させて、汗だくで「やるぞ!」みたいなシーンがあるんですね。仕事としてのモチベーションでもなく、真相を明らかにすべきという衝動にかられるわけでもなく、すごく自己満足を求めて捜査をしている感じがする。そうかと思えば、サクラは自分の自殺未遂の経験を根拠に、未亡人に対して「自殺する人はこうこうこうだから、彼は自殺じゃない」って断言したりもする。

 上で「行旅死亡人っておもろい」とか書いておいて言うことじゃないけど、この2人がやっていることは基本的に不遜だと思うんです。サクラは「死んだ人にも心がある気がする」とか言うけど、相手が死んでるのをいいことにプライバシーにずんずん踏み込んでいく。バスケチームの同僚に聞き込みに言ったり、何度も未亡人の家を訪れたり、死んだ人と遺族に対して「真相の究明」を盾にすごく失礼なことをしているように見える。そう見えるのは行動の内容ではなく、コメディタッチを選択していることも影響していると思うんですが、「自殺じゃない」という結論ありきじゃなきゃ成り立たない行動ばかりを見せられた感じがするんです。

 最後に「これでよかったのかしら」ってエクスキューズを入れてるけど、やってる途中はまったく「これ、やってていいのかしら」って逡巡がない。

 2人の主人公が不遜に見えるということは、作り手が不遜な態度で作っているように見えるということです。

 八津さんはHPのコメントで「現実世界で苦しんでいる人は確かにいて、自分でもどうすることもできない衝動に駆られて、最後の一歩を踏み出してしまう。できることならその一歩を踏みとどまらせるような、案外この世界はバカバカしくて素敵なんだと思ってもらえるような、そんな作品にできたら」と書いています。要するに、「このドラマを見て自殺を思いとどまれ」というメッセージです。個人的には、うるせえほっとけ関係ねえだろすっこんでろ人にはいろいろ事情があんだよ少なくともおまえが言うことじゃないよ身内に任せとけ、と言いたい気分にもなるというものです。この八津さんの思い自体が不遜であるという自覚があるかどうか、それが今後、明らかになるドラマになりそうです。

 あと、山に入るときは登山届を出しましょうね。それをやらないから、こんな面倒なことになる。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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最終更新:2024/07/17 11:26
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