『ギークス』第2話 お気楽なのに窮屈……もっと無意味な無駄話をくれよ
#ギークス
松岡茉優のナードな芝居がかわいくて楽しいので、とりあえずオッケーな感じの木曜劇場『ギークス~警察署の変人たち~』(フジテレビ系)も第2話。
基本的には「定時に帰りたい」を標榜する3人の女性による“お気楽なお仕事ドラマ”の雰囲気ながら、わりとミステリーとしても力を入れて作っている感じは第1話と同様でした。
振り返りましょう。
■意外に無駄がないのよね
警察で働く鑑識官の西条(松岡)と産業医の吉良(田中みな実)、交通課の基山(滝沢カレン)が居酒屋でダベりながらそれぞれの特殊能力を活かして事件を解決していく、というのが、第1話を終えてのこのドラマの見どころかと思ったわけですが、けっこうダベらないなという印象なんですよね。
今回、階段から何者かに突き落とされる傷害事件が起こり、まずはその事件を解決する回ですよという前提が示されます。
次に、落とし物のぬいぐるみを警察のホームページに載せたら、落とし主を名乗る人物が2人現れて、2人ともが「大切なものだが、どこでなくしたか覚えてない」という。
ここまで、実に手際よく事件の段取りが紹介されます。
この一見、関係のなさそうな2つの問題がリンクしながら解決を見るわけですが、今回は「居酒屋でダベりながら」では全然なかった。
ちゃんと西条が鑑識としての仕事をして、残業もして、事件を解決してる。
ミステリーとして完璧にスーパーおもろいというわけではないですが、2人の無関係な人間が「私が落とし主だ」と言って登場する幕開けは興味深いものでしたし、解決にも一定の説得力を持たせることには成功していると思います。これ以上、謎解き部分を詰めていくと、ホントに単なる優秀なミステリーになってしまいそう。
■田中みな実と滝沢カレンの存在感
第1話では自己紹介が必要なこともあってそこそこセリフ量のあった田中みな実と滝沢カレンですが、今回は存在感薄め。事件解決の役にもあんまり立っていませんし、現状では刑事・芹沢(中村蒼)と鑑識・西条がバディとして事件解決にあたっているという印象のほうが強くなっています。
加えて、西条の謎の隣人(白洲迅)が謎めきすぎていて、何か裏の目的がありそうな匂いもしますし、西条の性格や生活習慣に影響を与えそうな人物として登場している。
なんかちょっと、いろいろ意味がありすぎて窮屈になっている感じがするんです。田中みな実と滝沢カレンの存在が、ドラマから押し出されそうになってる。
総じて、もっと無駄があっていいと思ったんです。もっと無駄話をしてよ、と。
居酒屋が大好きな3人なわけですから、もっと意味のない、建設的じゃない話に花を咲かせてほしいんです。3人の個性はそれぞれ描かれていますし、「仕事より居酒屋優先」という共通の価値観で集まっている。だからこそ、この居酒屋タイムがこの人たちにとってもっとも大切な時間なんですよ、という演出がほしい。
タランティーノの『デス・プルーフ in グラインドハウス』(07)という映画で、女性たちに延々と無駄話をさせることで、そのあとのシーンとのギャップを生むということをやっていたんですが、あの感じね。マジでもう聞いてらんないわというくらいどうでもいい話をしている女性3人が、それぞれ“切れ者”であったが故に事件の真相にたどり着いてしまう。たどり着いてしまったから、解決できてしまう。
『ギークス』というドラマはそういう「日常」と「異能」のギャップを目指したものでしょうから、ミステリーと同じくらいの比重で意味のない居酒屋タイムをやってほしい。疎かにしてほしくないわけです。彼女たちに無駄話をもっと楽しんでほしいし、居酒屋ごはんももっと美味しそうに食べてほしい。たぶん、コンセプトはそっちだったと思うので。
意味のない無駄話を撮るって、勇気が要ることだし脚本も難しいでしょうけれども。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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