『キングダム 運命の炎』が地上波初放映! 「実写化は山崎賢人ばかり問題」を考える
#金曜ロードショー
芸能界の「写し鏡」でもある『キングダム』の世界
ここから本題です。主演の山崎賢人は、『キングダム』の佐藤信介監督と組んだNetflixドラマ『今際の国のアリス』(20年~)に加え、24年1月に公開された劇場映画『ゴールデンカムイ』にも主演しています。元祖「壁ドン」映画『L・DK』(14年)や『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(17年)なども加えると、山崎賢人が主演した人気漫画の実写化作品は相当な数になります。
今の日本のメジャー映画は、どれも似たようなキャストばかりです。今さらですが、これは「製作委員会」方式の弊害でしょう。配給会社、出版社、テレビ局、広告代理店といった大企業が結託してブロックバスタームービーを生み出す、近年の日本映画を象徴した顔のないシステムですよ。製作委員会は、作品(コンテンツ)から一円でも多くの収益を上げるために機能する仕組みです。そのためにはヒットが確実視される人気キャスト、そしてヒット作を手掛けた実績のあるベテランスタッフが起用されます。
主人公が大人へと成長していく『キングダム』は山崎賢人にうまくハマりましたが、『ゴールデンカムイ』の主人公「不死身の杉元」を演じるには、やはり「不死身感」が足りません。『キングダム』が当たったからといって、なんでもかんでも実写化大作を山崎賢人にやらせるのは、どうなんだと誰もが感じているはずです。
漫画の実写化作品への出演が、俳優にとってプラスにならないとは思いませんが、大作映画の主人公役ばかりやらせるより、いろんな役を20代のうちに経験させたほうがいいんじゃないのと余計なお世話ながら思うわけです。松岡茉優と共演した『劇場』(20年)はコロナ禍の影響で話題にならなかったものの、山崎賢人のクズ男っぷりがすごく印象に残った作品です。それだけに、漫画の実写化ばかりに連投させられるのはもったいないなぁと思う次第です。
信が仲間たちに支えられ、大将軍の道を突き進む『キングダム』の世界ですが、これって芸能界&映画界の「写し鏡」のようにも感じられます。ひとりの人気スターを生み出すために、多くのキャスト、スタントマン、スタッフたちが累々としかばねとなっていくわけです。その一方、製作委員会に名前を連ねている大企業は、どんどん潤っていきます。
しかし、100億円、200億円の大ヒット作が生まれても、映画界の現場は旧態依然のまま。インティマシーコーディネーターの導入は理解されず、性被害を訴えた俳優やタレントは逆にSNS上でバッシングされるという状況です。チケット代の1%を映画業界の改善のための基金に回そうという是枝裕和監督らの構想は、既得権益者たちに阻まれています。ジャニーズ帝国滅亡後の芸能界で大手事務所が群雄割拠する様子は、古代中国を舞台にした『キングダム』まんまの世界でしょう。
もしかすると、山崎賢人のような人気スターさえも、システムによって搾取されている側なのかもしれません。ヒット作が続く限り、彼には実写化作品のオファーが今後も続くことになるはずです。そんなシステムがぐるぐると回り続けている光景を見ていると、ある古い歌が思い出されます。コメディ俳優の左とん平が歌った「とん平のヘイ・ユウ・ブルース」です。「ヘイ・ユウ・ブルース」は、こんな歌詞です。
いつのまにか俺はすりこぎだ
俺はすりこぎにされちまったんだよ
くたびれて ひとりぼっちのすりこぎなんだ
俺をすりこぎにしちまったやつ
そいつはだれだ だれなんだ
HEY YOU
HEY YOU WHAT’S YOUR NAME?
HEY YOU
HEY YOU WHAT’S YOUR NAME?
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