『海のはじまり』第2話 「呪い」と「尊い」を両立させるスリルと血縁の正当化
#海のはじまり
余談ですが、先日駅で見かけた伊右衛門の広告に、古川琴音が載ってたんですね。お茶の伊右衛門ね。流し目で、ニヤリと笑って、その横に大きな文字で「夏の、」と書かれているんです。コピーは「濃さこそ、旨さ。」と続くわけですが、このドラマの第1話を見たばかりのときだったもので、「夏の、」の後に「……子どもなのよ?」という水季(古川)の声が聞こえてきたような気がして、思わず「ヒィッ」ってなったよね。すごい怖かったんだ、第1話。
というわけで『海のはじまり』(フジテレビ系)第2話です。振り返りましょう。
■パパが始まる
前回、知らない間に産まれて小学生になっていた元カノ・水季の娘である海ちゃんに「夏くんのパパはいつ始まるの?」と詰められて途方に暮れていた夏くん(目黒蓮)。とりあえずおばあちゃん(大竹しのぶ)に迎えに来てもらいつつ、今カノ・弥生さん(有村架純)に事情説明することになりました。
なんでも大まかに話すことでお馴染みの夏くんですので、ざっくり「死んだ元カノに娘がいて、それが自分の子だった」ことは伝えたものの、中絶同意書にサインしたことは言いそびれたようで、弥生さんも「それなら仕方ないね」といった感じ。
その後、おばあちゃんに呼び出されて「海が会いたがってる」と伝えられると、夏くんは「なんで?」とボンヤリを継続中。押し寄せてくる新情報を処理できていない様子が描かれます。結局その日は海ちゃんに会わずに帰ってしまいます。これにより、海ちゃんは夏くんに嫌われたと自己嫌悪。夏くんの家でお絵描きしたときに、自分と水季ママだけを描いたのがよくなかった。夏くんと3人の絵を描けばよかったと、健気な誤解をしてしまいます。
一方そのころ、ボンヤリしつつもケジメ意識だけはある夏くん、改めて今カノ・弥生さんに、水季の妊娠を知った上で、水季の意思を尊重して堕胎の決断をしたことを告白。弥生さんがそれでも会っていいと言ってくれたので、海ちゃんに会いに行くことにしました。
学校から帰ってきた海ちゃんは、夏くんの姿を見ると一直線にダイビングハグ。「学校でいろんなことがあったの、聞いて!」と“夏くんのパパ”を強制スタートさせるのでした。
ところで、弥生さんは弥生さんで、夏くんに言ってない過去がありました。元カレとの間に子どもができたことがあり、中絶をしたことがあったのでした。水季は産んでいたけれど、こっちは実際に堕ろしてた。そのことについては心の整理もついていましたが、夏くんが海ちゃんのことを「生きててくれてホッとした。自分が殺したと思ってた」なんて言うものだから、ひとり隠れて涙するしかありません。
水子に手を合わせに行く弥生さん。その帰路、努めて明るい声で夏くんに「夏くんがパパになるなら、私がママをやる」と告げるのでした。
いやー厳しい。そんなお話。
■呼び覚まされた呪いに支配されていく
夏くんが弥生さんに言った「殺したと思ってた」という言葉は、そのまま弥生さんには「おまえは殺したけどな」と聞こえたはずです。
このドラマの恐ろしいところは、子どもという存在を徹底的に「快楽の代償」として描いているところです。いや、「快楽」は言い過ぎだけど、「恋人との幸せな時間の代償」として、「存在しなかったほうが都合のいいもの」として描いている。
その一方でめちゃくちゃ魅力的な子役にめちゃくちゃ魅力的なセリフを与え、めちゃくちゃ魅力的な芝居をさせることで、「尊くて美しいもの」としても描いている。
海ちゃんの存在は、夏くんにとっては平穏な日々をひっくり返す呪いであったし、弥生さんにとっても過去に子どもを「殺した」という後悔を呼び覚ましてしまう呪いでした。
「存在しなかったほうが都合がいい」のに「尊い」という2つのベクトルを内包してしまった海ちゃんという存在を目の前にして、夏くんも弥生さんも「そうしたい」と「そうするしかないじゃん」という2つの思いを抱えたまま海ちゃんと接していくことになる。
自ら選んだ行動であると同時に、呪いに支配されて強制された行動でもある。突き動かされていく自分たちを「愛だし血縁だし尊いし」と正当化して呪いをねじ伏せるのか、やはり加速度的に激変していく日常に引き裂かれるのか。
わたしは結婚もしてないし子どももいないし堕ろさせたこともないので「ウヒョー、怖えぇー」なんてスリリングなホラーとして楽しんでますが、経験者の方々にはどう見えてるんでしょうね。もっと深刻なんだろうな、きっといろいろ。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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