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山口組分裂から9回目の夏…終結のカギを握るキーマンの動向に注目が集まる

分裂問題の渦中にいる絆會の織田絆誠会長。

 山口組分裂の背景には、六代目山口組司忍組長の出身母体である弘道会(本部は名古屋)に対する優遇や「名古屋方式」と表現された組織運営体制、そして高額な会費などへの反発があったと言われていた。しかし、今や当時の状況に対する不満を表立って口にする者はいないのではないだろうか。それどころか、そうした状況を是正するために発足したはずの神戸山口組の存在自体が間違いであったという意見の方が多いはずだ。

 指定暴力団の中でも全国最大規模の六代目山口組が割れたのは、2015年8月27日のこと。五代目山口組体制時には最大勢力だった山健組を中心に、直参13団体が離脱し、神戸山口組が結成された。

 その後、連日メディアが山口組の分裂問題を報じ続け、世論の判官贔屓にも後押しされ、山口組の改革を打ち出した神戸山口組の船出は好調に見えた。そしてSNS上には、神戸山口組を応援する声が多数寄せられていた。

 しかし、それも束の間だった。六代目山口組は反旗を翻した勢力に対して容赦なく暴力を行使し続け、時が経つにつれて両者の力の差は歴然となっていった。そして神戸山口組は大きく揺らいでいく。

 任俠団体山口組(現・絆會)を皮切りに、内部からは離脱が相次ぎ、さらに、発足時に神戸山口組を支えた元六代目山口組直系組長らの引退が相次いだ。現在では六代目山口組に圧倒的な力の差を見せつけられ、結成当初の勢いはなく、神戸山口組は衰退し続けている。当然、神戸山口組から離脱した絆會、池田組、二代目宅見組なども、六代目山口組に張り合える組織力はない。

 「絆會は、若頭の金澤成樹容疑者が起こした3件の銃撃事件の動向次第でどうなるかわからない状態だ【参考記事:「絆會幹部の不敵な表情は何を物語る?」】。一部ではトップの逮捕の可能性さえ囁かれている。仮に過去に関与が疑われた事件などにも捜査のメスが入れば、絆會だけでなく神戸山口組も危機を迎えることになるのではないか。金澤容疑者はある意味において、分裂問題を終結させるキーマンになっているという見方もできる」(業界関係者)

 「キーマンになる」とはどういうことなのか。それは、金澤容疑者が山健組時代に起きた迷宮入り事件のことを指している。この事件にも金澤容疑者が関与しているのではないかと業界関係者内で噂されていた。

 「真相はわからないが、その当時も金澤容疑者が仕えていたのは絆會の織田絆誠会長だ。当時、その織田会長が仕えていたのが神戸山口組の井上邦雄組長だ。もしもその未解決事件に金澤容疑者が関与していたとして、万が一にもそれを金澤容疑者が自供し、織田会長や井上組長に司直の手が入るようなことになれば、山口組分裂問題は一気に解決するのではないか。『仮に関与していたならば』の話だが、そういう見方をしている関係者もいるのは確かだ」(前同)

 その絆會の織田会長が一躍、時の人としてクローズアップされたのは、神戸山口組が結成され、同団体の若頭代行となってからだ。しかし、ヤクザ事情に精通するジャーナリストは「全国区になったという意味ではそうだが」としながらも、織田会長をこう評する。

 「関西では、織田会長の名前は、2000年以降の健竜会(山健組の中枢組織)時代から響きわたり、特に若い組員からも人気がありました。その影には金澤容疑者の存在もありました。金澤容疑者もまた、山健組時代から関西では名を馳せた人物です。同容疑者の織田会長に対する忠誠心はその頃から随一で、筋金入りだと言っても過言ではない。しかし、いくら組織のためとはいえ、身体を賭けて逃走中の人間に、2件の射殺を実行させるなんていう組織は聞いたことがありません。個人的な恨みからの犯行なら別ですが、絆會に指示され逃走中に事件を起こしたとしたならば、金澤容疑者には計り知れない虚無感があったとしてもおかしくないのではないでしょうか」

 そんな、気持ちがいつ裏返しになっても不思議ではない状況を受け、仮にこれまで関与した事件の真相、特に組織的な関与について金澤容疑者が供述すれば、長きに渡り続いた山口組の分裂問題に終止符が打たれる可能性があるというのだろうか。

 それにしても、もはや勝ち目のない戦いの中、ここまで追い込まれているのに、なぜ井上組長は神戸山口組を解散させ、引退という選択肢を選ばないのか。ある捜査関係者はこのように語る。

 「引退すれば命の保証は確約してもらえるかもしれないが、財産などが守られる保証はどこにもない。引退した時点で組員たちが警護してくれることもなくなる。だったらこのまま行けるところまで行く。そう決めたからこそ、力の差は歴然としながらも、9年間、こうした状態が続いているのではないか」

 ここまで長期化するとは、9年前の夏には誰も想像できなかったはずだ。このままの状態が今後も続いていくのだろうか。結成時に神戸山口組が掲げた趣旨の中には「将来の山口組のため」「若い組員のため」といったものがあった。だが月日が経過し、分裂問題にかかわる多くの組織の事務所は使用を禁じられ、組員たちはその活動までも制限されている。

(文=山口組問題特別取材班)

ヤクザ業界をフィールドとする作家、ライターおよび編集者による取材チーム。2015年の山口組分裂騒動以降、同問題の長期的に取材してきた。共著に『相剋 山口組分裂・激動の365日』(サイゾー)がある。

やまぐちぐみもんだいとくべつしゅざいはん

最終更新:2024/07/09 14:25
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