令和ロマンが『ABCお笑いグランプリ』を制圧! 『M-1』連覇に向けて視界良好【前編】
#令和ロマン
「害悪、令和ロマン。『M-1グランプリ2023』を制し、大人しくテレビに出ていればいいものを、賞レースに出たいとかいうわけのかわらない理由で劇場に出、新ネタなどを試し、またやってきてしまった害悪」
7日に行われた『第45回ABCお笑いグランプリ』(ABCテレビ)の前日に、YouTubeにアップされた考察動画の一幕である。冒頭の話をしていたのは、ほかでもない令和ロマンの高比良くるま。「どういうモチベーションで出てるんだよ」という相方・松井ケムリの至極まっとうなツッコミもどこ吹く風。賞レース前夜には恒例となった分析芸を披露して見せた。
『ABCお笑いグランプリ』は、芸歴10年以下のお笑いコンテスト。漫才、コント、ピン芸、落語などジャンルにとらわれないオープントーナメントであり、過去に『M-1』で優勝したコンビが『ABC』に出場した例はない。
今年、『M-1』連覇を宣言している令和ロマンにとってはまさに、絶対に負けられない前哨戦という位置づけである。
そして、令和ロマンは勝ち切って見せた。『M-1』のときとは比べ物にならないほど、くるまは喜んでいる。飛び上がって、万歳をしている。こんなくるまの姿は、あまり見たことがない。
まちがいなく史上最高レベルだった今年の『ABCお笑いグランプリ』、振り返ってみたい。
■ファーストステージ
Aグループ
トップバッターはぐろう。大阪・よしもと漫才劇場で頭角を現し、今年の『ytv漫才新人賞』で準優勝を果たしている実力派の6年目。『ABC』は初の決勝となった。
「相方に自転車を貸した側が、被害届を出している」という意外な対立構図を早々に提示し、悪いほうが開き直って関係が逆転していくという、かまいたちの名作漫才「UFJ」のような空気感の漫才で、早くも今年の『ABC』のレベルの高さを感じさせる出来を見せた。
2番手は天才ピアニスト。『THE W』(日本テレビ系)をはじめとして、賞レース6冠を制している女王である。漫才・コントどちらもこなす両刀だが、今回はコント。タクシードライバーのますみの芸達者ぶりをコントのストーリーに落とし込みつつ、おばちゃんあるあるを含んだ芝居の良さでまとめた。
3番手のダウ90000は、これまででもっとも「8人で4分」という条件にフィックスしてきたという印象だった。蓮見以外は名前を知られていない(と、おそらくは自己分析している)舞台で「中島」という人名を出しながら情報不足にならない脚本が見事のひとこと。「もう2人いるはず」からの忽那の使い方も絶妙。
Aブロックのラストは金魚番長。勢い、若さ、バカバカしさと、古市の妙にこなれた雰囲気のアンバランスがこのコンビ独特の味わいになっている。冒頭は大喜利のバリエーションで勝負しつつ、「この顔なのにハープ」という小ネタを伏線にしてハープを乱暴に扱うという展開も秀逸。おもしろかった。
印象としては、個人的な順位はダウ→金魚→ぐろう→天ピと思いつつ金魚が抜けるかと思ったが、ダウが3年連続3回目の出場で初の最終決戦進出を決めた。
Bブロック
エバース、プレッシャーがかかっていたのか2人ともミスが多かったが、町田が乗り始めると手が付けられない。『M-1』のケンタウロスにしろ、今回の車にしろ、佐々木の変な発想を「受け入れそう」と思わせる町田の存在感は、やはりエバースの大きな武器だ。
4年目で初エントリー初決勝のピン芸人・やました。友近、横澤夏子、柳原可奈子の系譜にありながら、切なさをまとっているのが目新しく感じたところ。芝居はめちゃくちゃ達者で、ワードもあり、展開としても「健気でかわいそうな女性」から最後には「黙れよ」と思わせるところまで持っていったのは見事。「なんで3年も付き合ったん?」というセリフには痺れた。
3番手のフランスピアノは、何をやってるかわからない時間帯からバラシまで長い時間を使った勇気あるネタ。「重いカバンを軽く見せるパントマイム」という一発のアイディアの強さはあったが、そのアイディアを具現化したときのフィジカルの部分で、実際になかがわが「軽いカバンを重く見せるパントマイム」を完璧にやらなければいけないというハードルが発生してしまっていたのがアンラッキーだった。
青色1号はラストイヤーでエースネタを1本目に持ってきた。これでダメならしょうがないという覚悟が見えたし、積み重ねてきた結果がこの「テンポとお祭り感」だったというのが、トリオとしての幸せに見えてうれしかった。そうめんってなんだ。
予想はエバースか青色だったが、青色の勝ち抜けを祝福したい気分だった。
(文=新越谷ノリヲ/後編につづく)
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