トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > エンタメ > お笑い  > 盲目芸人の街ブラ番組“テレビが変わる予感”

盲目芸人の街ブラ番組『濱田祐太郎のブラリモウドク』に感じた“テレビが変わる予感”

 先天性の視覚障害を持つ盲目のピン芸人・濱田祐太郎が大阪の街を“街ブラロケ”する新番組『濱田祐太郎のブラリモウドク』(ABCテレビ)の第1回が29日深夜に放送された。

 濱田自身がX(旧Twitter)で「盲目の芸人の俺が街ブラをすると言うめっちゃチャレンジな企画の番組で最高。」とポストしている通り、画期的な企画として放送前から注目を集めていた同番組だが、第1回の評判は上々のようだ。

 番組は、その触れ込みの通り濱田が街ブラを行うというもの。藤崎マーケットのトキがパートナーとなり、2人が大阪・堀江の街を散歩しながら案内していく。

 番組では、冒頭から濱田イジリの定番である「見えてるやろ」が発動。トキが「堀江」の看板を指差し「読んでください」と振ると、濱田は「いや、わからんて! 北堀江でしょ」と返し、トキが「見えとるやないか!」とツッコミ。

 その後も、濱田の背中に手を添えて歩き出したトキが、そのまま見えていない濱田を車止めのポールに激突させるなど、軽妙な展開が続く。

 濱田が盲目であることをお笑いにしていくのは、大阪の劇場では見慣れた風景だが、テレビでは実に新鮮に映る。

 その後、盲目ならではの街ブラエピソードを披露しながら堀江の街を歩く2人。「なんばは、独特の犬のおしっこみたいな匂いがしている」「(堀江は)点字ブロック1個もない、オシャレなだけの街です。それ以外なんにもない」などと街に毒づく濱田をたしなめながら、この日、堀江を案内する役として後輩芸人・エナマキシマのグレン世紀と合流する。

 生まれも育ちも堀江だというグレンは、アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれた“ハーフ芸人”のひとり。黒人をルーツに持つグレンは、初対面である濱田に対して「僕と濱田さんを合わせたらスティーヴィー・ワンダーです」とカマして見せ、濱田が爆笑する一幕もあった。

 グレンの案内でおすすめのハンバーガーショップに着くと、入り口の段差に軽くつまづいた濱田に、トキが「わざとらしいことしやがって、おまえは。見えてますからね、こいつは!」と恒例の「見えてるイジリ」。メニューの一覧を出されると、またトキが「見て、濱田」。「いや、わからんて!」と返す濱田のツッコミは、もう慣れたものだ。

「でも、チーズ美味しそうですね」

 見えない濱田が、見えないことをボケにして、また「見えとるやないか!」とツッコまれる。

 その後に訪れた古着屋でも、見えていない濱田に奇抜なシャツを着せることで笑いを生んでいた。

 * * *

 今月4日深夜に放送された『耳の穴かっぽじって聞け!』(テレビ朝日系)で、濱田が語っていたことがある。

「テレビでは多様性とかSDGsとか言ってるけど、ホンマやろうか」

「障害のある芸人やタレントは、ほぼ福祉番組に閉じ込められている気がする」

「その原因は、テレビ番組側が受け入れる取り組みをしていないこと」

『ブラリモウドク』は、その濱田の問いかけに対するアンサーを体現したような番組だった。

 盲目の芸人が盲目であることを、どう笑ったらいいか。濱田本人と関西若手の兄貴分であるトキが、丁寧にひとつずつ解説していく。盲目の芸人の取扱説明書を作っていく。

 確かに、変わる予感があった。テレビが変わる、ささやかな予感である。

 濱田はおそらく、盲目イジリに対する返しを100万個は用意しているはずだ。トキはこの番組で極めて重要な役割を果たしたが、まだまだ優しいのである。

 もっと刺せ。誰か、もっと刺してこい。

 濱田はきっと、そう思っているはずだ。

(文=新越谷ノリヲ)

新越谷ノリヲ(ライター)

東武伊勢崎線新越谷駅周辺をこよなく愛する中年ライター。お笑い、ドラマ、ボクシングなど。現在は23区内在住。

n.shinkoshigaya@gmail.com

最終更新:2024/07/02 13:43
ページ上部へ戻る

配給映画