日刊サイゾー トップ > カルチャー > 映画  > リカバリー文化を描く映画『アディクトを待ちながら』
映画『アディクトを待ちながら』公開記念インタビュー(2)

ギャンブル依存320万人、ゲーム依存400万人!リカバリー文化を描く高知東生主演映画が公開

対等な人間関係を築くことの大切さ

[入稿済み・画像9・ディスクリプション]ギャンブル依存320万人、ゲーム依存400万人!リカバリー文化を描く高知東生主演映画が公開の画像4
Twitterドラマなどで高知と共演した中村優一らが企画に賛同して出演

――映画では「芸能人は逮捕されても復帰できていいわね」とか「依存症の人間同士が集まって何ができるんだ」といった厳しい台詞も出てきます。

高知 他の人に分かってもらうのは難しいですよね。でも、以前の僕は歪んだ認知のせいもあって、他人の目線を意識しすぎて、自分自身を苦しめ続けてきました。でも、今は「そう思う人がいれば、どうぞ」と思えるようになりました。

田中 私たちは笑い飛ばすようにしています。「何も知らない人は、勝手なことを言うよねぇ」と。

高知 新しい自分をつくっていくには日々行動して、アップデートしていくしかないわけです。今も古い自分がどこかにまだ残っているんですが、そのことに気づけるようになっただけでも大きな進歩なんです。

田中 高知さんは自分がさも成長したように語っていますが、それは自分で気づいて自分で改善できているわけじゃないですからね。自助グループの仲間たちがいて、仲間たちが指摘してくれることで気づけていることをお忘れなく。

高知 本当にそう思う。ひとりでは絶対に無理。

田中 そう言う高知さんだけど、外面がいいのは今も変わらないよね。これはアディクト特有のものなんです。外の人に気を遣って、そのストレスが身内に向かってしまうんです。高知さんはお金のない団体の啓発ドラマなんかに出演すると、多少のギャラが出ても「いいです。それは寄付に回してください」とかっこつけて言うんです。でも、高知さんが出演した作品の映像をチェックしたり、編集して直したりするのは私なんですよ。私は他の仕事もしていて忙しいのに、無報酬で働かせられている(苦笑)。

高知 決して、りこさんのことを下に見たりしてるわけじゃないから。りこさんについ「任せる」と言って甘えてしまうのは、それも認知の歪みなんでしょうね。

田中 高知さんは、いまだに昭和のヤクザ映画みたいな世界にいるんだよ。高知さんから「お前に任せる」と言われて、喜ぶような女性とばかり付き合ってきたんじゃないの。でも、私ははっきりと「ふざけんなよ。任せる、じゃなくてお前も一緒に考えるんだよ」と伝えますから。

高知 仕方ないじゃない、俺はそういう環境で育ったんだから(苦笑)。

田中 お父さんはヤクザの親分で、お母さんは家をいつもきれいにして、お父さんが来るのを待っていたんだよね。高知さんは上下の人間関係しか見てこなかった。対等の人間関係であることが、高知さんには難しいんだよね。

高知 子どものころにそんな大人たちの関係性を見て育ったから、今でもそんな旧型のままの部分が残っているんだと、いま言われて気づくことができた。身内の愛情を知らずに育ったから、ずっと外の人の顔色をうかがいながら生きるようになっていた。俺の外面がいいのは、そのせいなんだなぁ。りこさんの指摘はまさにドンピシャで、笑うしかないよ。

田中 自助グループは親から虐待を受けたとか、上下の人間関係しか知らない人が多いんです。対等の人間関係を築くことに慣れていなくて、それで依存に走ってしまうんです。

――映画について改めておうかがいします。高知さん演じる元人気歌手・大和の登場するシーンは台詞はなく、すべてアドリブで演じたそうですね。どんな気持ちで演じたのでしょうか?

高知 Twitterドラマを一緒にやっていたナカムラサヤカ監督から渡された台本は、僕のシーンだけは白紙のままでした。りこさんと共に、僕が回復に向かって自分自身に向き合っていることを理解している監督でした。その監督から白紙の台本を渡されたんです。それは「演じる」というよりも、今のありのままの自分を表現することだったんです。俺のことを信頼してくれているんだと思うと、うれしかったですよ。もちろん、どんな台詞を言えばいいか悩みましたが、前日になってやっぱり「ありのままの自分でいこう」「そこに自分がいたら、どうするだろう?」と思って、現場で自分が感じた感情に委ねてみようと決めたんです。なので、自分がどんな台詞を口にしたのか、まったく覚えていません。本当に無の心境でした。自分の心をそのまま言語化できたんじゃないかと思っています。

田中 私も撮影現場にいたけど、あのときの現場の雰囲気をうまく言語化できた台詞になったと思うよ。

高知 僕もアドリブだったけど、他のキャストのみんなも僕の言動に合わせて即興で演じてくれたわけですよね。クライマックスシーンは、みんな素のままでリアクションしている。それが、あの映画の肝になっている。ナカムラ監督、やるなぁと思いました。僕やキャストのみんなに、この作品の成否を預けてくれた。本当にうれしかったですよ。

映画『アディクトを待ちながら』
監督・脚本/ナカムラサヤカ プロデューサー/田中紀子
出演/高知東生、橋爪遼、宍戸開、升毅、青木さやか、中村優一、中山夢歩、下田大気、塚本堅一、武藤令子
製作/ギャンブル依存症問題を考える会
配給/マグネタイズ 6月29日(土)~7月5日(金)、新宿K’s cinemaにて公開
※初日舞台あいさつほか、連日イベントを予定
https://www.addict-movie.com/

●田中紀子(たなか・のりこ)プロデューサー
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表。競艇やカジノにハマったギャンブル依存症当事者であり、祖父・父・夫がギャンブル依存症という三代にわたる当事者家族の立場も経験。高知東生と共演したYouTube番組「たかりこチャンネル」を毎週配信するなど、依存症という病気についての啓蒙活動や依存症当事者やその家族への支援活動を行なっている。『ギャンブル依存症』(角川新書)や『祖父・父・夫がギャンブル依存症! 三代目ギャン妻の物語』(高文研)などの著書もある。

最終更新:2024/06/29 21:45
12
ページ上部へ戻る

配給映画

トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed