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映画『アディクトを待ちながら』公開記念インタビュー(2)

ギャンブル依存320万人、ゲーム依存400万人!リカバリー文化を描く高知東生主演映画が公開

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高知東生&田中紀子プロデューサー

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 ギャンブル依存症として、大きな注目を集めた水原一平元通訳。米国のカジノや違法賭博にハマったとされているが、パチンコ店や競馬・競艇などの公営賭博の多い日本にもギャンブル依存症者は多く、320万人にものぼると推測されている。さらにアルコール依存症、ゲーム依存症、買い物依存症、薬物依存症なども含めると、依存症者の数は膨大なものになる。

 依存症に苦しむのは本人だけでなく、家族や周囲の人たちも悩ませることになる。ストレスの多い現代社会において、依存症問題は避けては通れないテーマだろう。依存症に罹患した人は回復を果たしても社会での居場所を失い、その孤独感から逃れようと再び依存症に陥ってしまうケースが多いことも知られている。

 高知東生が主演した映画『アディクトを待ちながら』(6月29日公開)は、そんな依存症の実情をリアルに描いた社会派ドラマだ。2016年に覚せい剤と大麻所持で逮捕された高知にとっては9年ぶりとなる映画出演。高知演じる元人気歌手が、薬物依存症から立ち直り、「自助グループ」の仲間たちとゴスペルグループを組んで、復活ライブを目指すというストーリーとなっている。

 高知のほか、過去にギャンブル依存症だったことをカミングアウトしている青木さやか、ギャンブル依存症で自己破産しながらも現在は武蔵野市議を務める下田大樹、違法ドラッグの所持でNHKを辞めた塚本堅一といった「依存症」当事者たちが多数出演していることでも話題となっている。

 本作を企画・制作したのは、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」の代表でもある田中紀子プロデューサー。彼女自身もギャンブル依存症の夫を持ち、苦しんだ当事者のひとりだ。主演の高知とは、YouTube番組「たかりこチャンネル」でもタッグを組んでいる。そんな2人が映画制作の舞台裏と日本における依存症の現状を明るく語り倒した。

依存症問題をエンタメ化した劇場映画

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高知東生にとって9年ぶりの映画出演作となる『アディクトを待ちながら』

――高知さん、久々に映画出演することが決まった際のお気持ちは?

高知 ああいうことをしでかした自分が、まさかスクリーンの内側に出させていただくとは思ってもいませんでした。もう無理だろうなと思っていました。こうして取り上げてもらうこともありがたいです。感無量というしかありません。

田中 高知さんには、ギャンブル依存症を題材にしたTwitterドラマ『ミセス・ロスト インタベンショニスト・アヤメ』などに出演してもらっています。『ミセス・ロスト』を撮ったナカムラサヤカ監督のワークショップ用の短編映画が「依存症」を扱った内容で、評判がよかったんです。じゃあ、追加撮影して長編映画にして、劇場公開しちゃおうということになったんです。

――制作費を集めるのは大変だったのでは?

田中 いや~、大変ではなかったですね(笑)。「ギャンブル依存症問題を考える会」を応援してくださっている方たちや、ギャンブル依存症などから回復された方たちが寄付してくださり、追加撮影用の制作費はすぐに集まりました。

高知 田中紀子さんのこの強引な愛があるからこそ、僕も自助グループの仲間たちと知り合い、薬物依存症からの回復を今も続けることができているんです。りこさんみたいなパワーのある人が、一本釣りしてくれないと依存症の当事者たちは変われません。りこさんに付いていくというよりは、彼女と一緒に過ごし、いろんなことを話し合うことで、多くのことに気づくことができているんです。

田中 私は別に強引なつもりはないんだけどなぁ。私がアイデアを出すと、みんな「面白い」「やろう、やろう」と参加してくれているだけだと思ってるんだけど。今回も依存症問題をエンタメ化して広めようという考えに、みんなが面白がって賛同してくれたんです。

高知東生を「和製ロバート・ダウニーJr.」に

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買い物依存症など、さまざまな依存症当事者たちのドラマが交差していく

――高知さんが過去に出演した大手映画会社の作品に比べると、予算規模はかなり限定されたものだと思います。

高知 過去の作品と比べる以前に、自分を必要としてくれる人がいてくれたことがうれしかった。映画の規模はまったく関係ありません。僕にできる最善を尽くそうとしか考えませんでした。

田中 私は大手の映画に出演していた高知さんに対して、申し訳ないなぁとは思いましたよ。でも、まぁ、高知さんはああいう事件をやらかしたわけだから、仕方ないよねと(笑)。高知さんには日本のロバート・ダウニーJr.みたいな存在になってほしいと思っているんです。ダウニーJr.みたいに6回も薬物で逮捕されたら困りますけど(笑)。私が長編映画を制作したのは今回が初めて。でも、これからも撮り続けて、ヒットさせて、お金を集めて、もっと大きな作品をつくってやるぞ、と考えているんです。

高知 りこさんはいつでもポジティブ(笑)。

田中 今に見てろよと思いつつも、実は今がいちばん楽しいのかもしれません。依存症者たちの世界って、世間からは暗い、マイノリティー的な世界と思われていますけど、10年もすると理解が広まり、ずいぶん違ってくると思うんです。「あのころは世間を相手に闘っていたけど、楽しかったよねぇ」なんて思うようになっているんじゃないかなという気がするんです。

――ハリウッドで最も稼ぐスター、ロバート・ダウニーJr.の話題が出ましたが、米国に比べて日本は一度つまずいた人に対して、ひどく冷たい社会じゃないですか?

田中 不思議ですよね。ボクシング映画『ロッキー』(1976年)みたいなどん底から這い上がる主人公の物語は、日本人も好きなはずなんですけどね。でも、日本人はハリウッド映画は楽しむけど、同胞に対しては妬みや嫉みもあるのか、シビアですよね。おそらく、今の日本はみんな余裕のない厳しい状況に置かれているからだと思うんですけど。私たち「ギャンブル依存症問題を考える会」では、日本にいるギャンブル依存症者はだいたい320万人いると推測しています。アルコール依存症者は現在100万人いると言われています。ゲーム依存症に至っては、中高生だけで90万人、全体で400万人いるとされています。そこに巻き込まれている家族は1人につき3人はいるでしょうから、日本人の依存症当事者の人口はすごい数になるんです。マイノリティーじゃないんです。エンタメ界はそこに気づいていないだけ。「依存症は恥じゃないよ、ただの病気だよ」ともっと広めていきたい。自分だけの責任じゃないし、日本の産業構造の問題だし、消費者問題でもあり、日本政府の政策ミスでもあるわけだから、みんなもっと声を挙げていきましょうと言っているんです。例えばうつ病は、コミックエッセイ『ツレがうつになりまして。』(幻冬舎)がベストセラーになり、TVドラマ化や映画化もされ、イメージが大きく変わりましたよね。うつ病は怠け者の病気だとは言われなくなりましたし、著名人がどんどん告白本を出すようになった。エンタメの力って強いと思うんです。『ツレうつ』くらいのヒット作にしたいですね(笑)。

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