粗品のロケ「服」企画に見た「ファッション×お笑い」の新しい関係
#霜降り明星 #粗品
霜降り明星・粗品のYouTube個人チャンネル「粗品のロケ」に、26日までに2本の動画がアップされた。
1本目は24日配信の「せっかくオシャレしたのにボコボコに悪口言われた」。2本目は26日配信の「攻めたファッションしたら後輩達にめちゃくちゃディスられた」。ともに、粗品が後輩芸人から悪口を言われる企画を想起させるタイトルである。
昨今、先輩芸人やタレント、YouTuberへの悪態ばかりが報じられている粗品だが、自ら運営しているYouTubeでは、あえて後輩芸人に自身を批判させる企画も数多く行っている。
先月20日に同じ「粗品のロケ」で配信された「最近の粗品が様子おかしいので後輩に説教された【ミキ亜生】」では、後輩である漫才コンビ・ミキの亜生に約30分にわたって自身の言動や粗品ファンの振る舞いを批判させ、大喜びしている姿もあった。その動画は260万回を超えるスマッシュヒットとなっている。
粗品は失礼な人間というより、「失礼」という状態そのものをおもしろいコンテンツとしてとらえている芸人である。
そんな粗品だけに、今回アップされた2本の動画もそうした「失礼シリーズ」かと思いきや、存外に新たな「ファッションとお笑いの関係」を模索した企画だった。
出演者は、MCに粗品。白いTシャツにジーパンというシンプルな衣装である。
ひな壇の位置には、サツマカワRPGとどんぐりたけし、四千頭身の都築拓紀と後藤拓実、グレープカンパニーの若手コンビ・フランスピアノ、それに現在粗品のYouTubeスタッフとして働いている元アックスボンバーの矢野レノンと中村元気という4組。
どんぐりたけし、四千頭身・都築、フランスピアノの2人、中村元気は、いずれもファッションセンスに自信を持っているメンバーだ。その4人が1本目の動画では帽子、2本目の動画ではトップスを持ち寄って、それを粗品が着用する。その粗品を見て、ほかの4人が大喜利を行うという企画だった。
象徴的なのは、都築だろう。奇抜なファッションで知られ、アパレルブランドも立ち上げている都築だが、テレビのバラエティでの扱いは微妙なものばかりだった。
その奇抜さは「わけがわからない」「理解不能」として笑いものにされるか、「センスがある」として持ち上げられるかのどちらかしかなかった。
端的に言って、都築のファッションは「オシャレだし、おもしろい」ものである。だが、誰もその評価を表現することができないでいた。
それを今回の「粗品のロケ」は、理想的な形で表現したと感じたのだ。
基本的にメンバーの大喜利は、各々が用意した帽子やトップスを“下げる”ものになる。だが、そこで下げられているのは衣装そのものではなく、あくまでそれを着用した粗品の姿だ。
今回、粗品はメンバーに「攻めた衣装」を要求した。4組が用意した帽子とトップスは、その要求に応えるものだった。粗品は、その衣装を下げさせるのではなく、それを着用した自分に矛先を向けさせることで、衣装そのものへの攻撃を中和し、「オシャレだし、おもしろい」を表現する形を作り上げていた。
都築のトガり切ったファッションセンスが、それを理解しない者に棄損されないまま笑いに変わっている形を初めて見た。粗品の企画力の賜物である。
「このままでは仕事がなくなる」「テレビのレギュラーが減っている」そんな報道が世間を賑わす裏で、粗品は淡々と自分の仕事をしている。
(文=新越谷ノリヲ)
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