『アンチヒーロー』最終話、ついに伊達原堕ちる! 続編フラグは“謎多きパラリーガル”
#アンチヒーロー
アンチヒーローとは司法の正義と秩序を守るための“汚れ役”――。
「無実の人間を死刑囚にした」という大きな罪を背負う弁護士・明墨(長谷川博己)の覚悟が伝わる放送だった。日曜劇場『アンチヒーロー』(TBS系)の最終話が6月16日放送された。くしくも父の日に迎えた最終話は、12年にもわたり切り離されてしまった父と娘が涙の抱擁を交わす、視聴者も涙無くして見れない大団円となった。
殺人犯であっても「依頼人を無罪にする弁護士」というショッキングな設定が話題を呼んだ本作品は、弁護士の明墨が関わるさまざまな裁判が結びつき、すべてが12年前に起きた糸井一家殺人事件の真相につながっていく展開が多くの視聴者をひきつけてきた。明墨は自身の取り調べが決定打となり、糸井一家殺人事件の犯人として死刑判決が下された志水(緒形直人)の無実を証明するため、5年もの間、検察と警察の不正を探し求め、殺害に使用された毒物が検事正・伊達原(野村萬斎)の指示により虚偽報告された可能性にたどり着く。
「あとは、伊達原が不正に関わっていた証拠があれば、志水を無罪にできる……」。希望が見えた矢先、明墨は伊達原の横やりを受け、緋山(岩田剛典)が起こした殺人事件の証拠隠匿罪で逮捕されてしまう。明墨が証拠を隠匿したのは事実であり、有罪になるのは間違いない。明墨は巨大権力を操る悪に屈し、糸井一家殺人事件の真相は闇に葬られてしまうのか……。
最終話はメインが裁判シーンという緊迫した内容だった。伊達原は自身の立場を揺るがし続けてきた憎き明墨を断罪するため、検事正でありながら自ら法廷に立つ。証拠隠匿罪を認め、その背景に糸井一家殺人事件の真相究明があるという明墨に対し、伊達原は尋問を建前にした自己弁護を行う。決してエリートではない立場から検事正にまで上り詰めた伊達原の「何が何でもこの座を守る」という意地が伝わるシーンだった。
伊達原の確固たる自信は、志水の無実を示す証拠を潰してきたことに由来する。明墨が怪しい動きをすれば、先回りして抹消し、素知らぬ顔で日常に戻る。伊達原の戦術はこれまで明墨の妨害に効力を発揮してきたが、最終話でその手口を逆手にとられてしまう。明墨法律事務所のメンバー、そして伊達原の部下である検察官・緑川(木村佳乃)が結託して、伊達原が偽造された鑑定書を警察内部の保管庫から持ち出し、処分するよう仕向ける。伊達原がニセの鑑定書を抜き取る一部始終は、緑川が仕掛けた隠しカメラに収められ、伊達原はまさかの部下の裏切りに反論できずに終わった。緑川が明墨と同じ桃瀬(吹石一恵)の遺志を引き継ぐ同期であり、明墨顔負けの執念で伊達原のスキを探っていたとは……。「法が罪なき人の人生を奪うことはあってはならない」という本作品のメッセージを体現した緑川が、感動的かつ爽快なエンディングをもたらした“MVP”であることに異論はないだろう。
続編も期待される『アンチヒーロー』だが、「伊達原が不正を認め、志水の再審が始まる」という不完全な結末から続編は大いにあり得るだろう。本作品には糸井一家殺人事件の真犯人を筆頭に、明墨法律事務所のパラリーガルである青山(林泰文)と白木(大島優子)の過去は明かされなかった。特に白木は、明墨から伊達原を罠にかける重要な役割を担い、明墨から全幅の信頼を寄せられていた。明墨と白木がそこまでの関係になる出来事があるはずで、続編では白木の過去を清算する展開になればおもしろい。
最終話で検事正が罰せられる流れになったものの、巨大権力・検察が正されたというのは時期尚早ではないか。緑川に伊達原の証拠改ざんの真偽解明を許した“検事総長”も、トカゲのしっぽ切りで伊達原を始末した可能性がある。そうなれば明墨ひとりでは司法を律することは困難であり、ラストシーンで“新たなアンチヒーロー・赤峰(北村匠海)”が生まれたのも合点がいく。
「数年後、刑期をまっとうして明墨法律事務所に復帰した明墨が、糸井一家殺人事件の真犯人捜しや白木の過去の清算に挑み、真相究明のキーマンとして伊達原を無罪にして仲間に加える……」。続編の妄想ストーリーがここまで膨らむドラマ作品は近年まれではないか。それほどの良作だったと筆者は思う。
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日曜劇場『アンチヒーロー』
TBS系毎週日曜21時~
出演:長谷川博己、北村匠海、堀田真由、大島優子、木村佳乃、野村萬斎 ほか
プロデューサー:飯田和孝、大形美佑葵
演出:田中健太、宮崎陽平、嶋田広野
脚本:山本奈奈、李正美、宮本勇人、福田哲平
音楽:梶浦由記、寺田志保
主題歌:milet「hanataba」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
法律監修:國松崇
警察監修:大澤良州
製作著作:TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/antihero_tbs/
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