トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 『光る君へ』まひろと見習い医師・周明の今後
歴史エッセイスト・堀江宏樹の「大河ドラマ」勝手に放送講義22

『光る君へ』まひろ・吉高由里子と見習い医師・周明の今後、そして異国人同士の恋愛

平安時代々に異国の人と恋愛をした日本人

『光る君へ』まひろ・吉高由里子と見習い医師・周明の今後、そして異国人同士の恋愛の画像2
まひろを演じる吉高由里子

 さて、前回のドラマでは道長と別れ、都を離れたまひろが、松下洸平さん演じる見習い医師・周明(ヂョウミン)と出会い、早くも「いい感じ」になっていたので驚いた読者も多いでしょう。周明はドラマのオリジナルキャラクターでモデルなどはいないようですが、当初は日本語はわからないという身振りだったのに、いざとなると流暢な日本語が口から飛び出てくるという設定で、まひろならずとも「エッ……」となりました。周明とまひろにはロマンスの気配も濃厚ですけれど、平安時代に外国人と恋愛をした日本人はいるものなのでしょうか。

 史実の紫式部自身にはそういう噂が存在しないのは残念ですが、思い出すだけでもチラホラと有名人にも「該当者」はいるようです。

 背丈が「五尺八寸(約176センチ)」、胸板もきわめて厚く、体重は多い時で201斤(約120キロ)もあったという記録のある平安時代前期の武将・坂上田村麻呂などは、「目は蒼鷹の眸」「髭(髪という説も)は黄金の縷を繋ぐ」ような外見だったそうです(嵯峨天皇が著したとされる『田邑麻呂伝記』)。深いブルーの瞳、髭もしくは頭髪はブロンドという、あまりに東アジア系離れした容貌の坂上田村麻呂は、系図にも母親の記録がなく、日本人の父親と外国人女性の恋愛の末に生まれた子だったのではないか……という想像が止まりません。

 坂上田村麻呂には(主にアメリカなどで)由来不明の黒人説もあるのですが、ペルシャ系か、ヨーロッパ系の血を引いていたのではないかと思われます。そういう坂上田村麻呂の血統を引いた清和天皇の子孫が、後に清和源氏の一派を形成し、その血統から多くの武人が生まれていったのは興味深い話ではあります。

 また坂上田村麻呂が青年だった宝亀9年(778年)11月には、日本から遣唐使として派遣された藤原清河という人物と、中国人女性(氏名不詳)との間に生まれた、その名も喜娘(一説に「きじょう」)という女性が、海難事故を乗り越え、来日したという記録もあります。残念ながら、その後の喜娘の人生については不明なのですが、中国に帰ったという話はないため、おそらく日本のどこかでひっそりと生涯を終えたのでしょう。

 中国の役人が外国を訪れ、現地の女性との間に子をもうけることも多かったようです。しかし、妻子を連れて中国に戻ってはいけない、つまり現地に妻子は置いて単身で帰りなさいという厳しい掟がありましたが、それはあくまで「公人」である役人の話で、ドラマのように商人とか医師見習いといった「私人」と外国人との関係はまた別枠だったかもしれません。ちょっとマニアックな話になってしまいましたが、今回はこの辺で……。

<過去記事はコチラ>

堀江宏樹(作家/歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。原案監修をつとめるマンガ『La maquilleuse(ラ・マキユーズ)~ヴェルサイユの化粧師~』が無料公開中(KADOKAWA)。ほかの著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『本当は怖い江戸徳川史』(三笠書房)など。最新刊は『日本史 不適切にもほどがある話』(三笠書房)。

Twitter:@horiehiroki

ほりえひろき

最終更新:2024/06/09 12:00
12
ページ上部へ戻る

配給映画