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『アンチヒーロー』明墨万事休す、桃瀬の保護犬活動が窮地を救うカギか

『アンチヒーロー』明墨万事休す、桃瀬の保護犬活動が窮地を救うカギかの画像1
長谷川博己(写真/Getty Imagesより)

 最後に勝つのは明墨かそれとも――。

 結末に向かってストーリーが急速に加速し始めた日曜劇場『アンチヒーロー』(TBS系)の第8話が6月2日に放送された。明墨(長谷川博己)が検事から弁護士に転身したきっかけとなった12年前の糸井一家殺人事件。第8話では冤罪事件の全容がついに明かされ、真実を暴こうとする者、国家権力のメンツを守るために闇に葬ろうとする者との対立が激しく描かれている。

 本作品は題名が示すとおり、善良な弁護士とは程遠い倫理観をもつ弁護士・明墨を主人公とするリーガルドラマ。「依頼人を無罪にする」を信条とする明墨は、殺人事件や暴行事件、個人情報流出事件など幅広い裁判で手腕を発揮し、傍聴席をどよめかせ、世間の注目を集めてきた。一見すると無関係に見えるそれらの裁判は、12年前の糸井一家殺人事件の真相究明への布石になっていたことが判明。無実でありながら死刑判決を受けた志水(緒形直人)を救うため、明墨は再審請求に向けて動き出す。しかし、糸井一家殺人事件に関わっていた検事正・伊達原(野村萬斎)が明墨の悲願を打ち砕くために動き出す。明墨は12年前の検察・警察の悪事を暴き、志水を救うことができるのか……。

 第8話は冒頭で明墨、紫ノ宮(堀田真由)、赤峰(北村匠海)の立場から、そして明墨が志水の娘・紗椰(近藤華)に告白するかたちで糸井一家殺人事件の志水逮捕から死刑確定までの経緯が紹介された。志水はかつての同僚・糸井と共謀して会社のカネを横領していた。その頃、糸井一家全員の命を奪う毒殺事件が発生。志水は糸井との金を巡るトラブルから犯行に至ったとして逮捕された。ただ、志水には犯行時刻に別の場所にいたというアリバイがあった。それにもかかわらず殺人犯となった裏には、作中一のクズキャラといっていい“検事”明墨の存在があった。

 検事時代の明墨は、被疑者を自白させるためなら手段を選ばない人間だった。志水の事情聴取ではアリバイ主張に耳を貸さず、罵倒、蔑み、憐れみ、人格否定で志水の精神を崩壊させて自白を強要したのだ。そのクズっぷりは、伊達原が「検事時代の明墨と私は似ている」と評するのもうなずける。

 志水の冤罪を証明するアリバイだが、そのカギを握るのが緋山(岩田剛典)だ。緋山は糸井一家殺人事件の犯行時刻に闇アルバイトで女性を盗撮しており、その動画に志水が映り込んでいた。日時も記録されているこの盗撮動画こそ志水に犯行が不可能だったことを示す証拠だったが、動画の所有者・江越(迫田孝也)は伊達原に懐柔され、動画データは破棄されてしまった。

 明墨としては万事休すだが、証拠データを手にする方法は残されていると推測する。ひとつは、これまで明墨や事件との関係性が不明だった桃瀬(吹石一恵)が隠している可能性だ。何かと注目度が高い人気女優・吹石が演じることから話題となっていた桃瀬は、明墨の検事時代の同僚だった。桃瀬は志水の死刑確定後も糸井一家殺人事件の真実を追っていたが、6年前に病に倒れ亡くなってしまった。明墨は桃瀬の調査ファイルを受け継いでいるが、まだ証拠を隠しているのではないか。わかりやすい場所では伊達原や警察に見つかるため、明墨も想像できない方法で……。桃瀬は検事を辞め保護犬施設で働いていたことから、明墨の愛犬のミル、保護犬施設にいるミルの兄弟・マメの嗅覚で見つけられるよう隠した、という線はややぶっ飛びすぎか。

 もうひとつは、白木(大島優子)のスキルにより削除された盗撮動画を修復する可能性だ。白木は明墨法律事務所のメンバーで唯一、入所の経緯が明かされていない。明墨から志水の冤罪を証明するために勧誘されてことは間違いないだけに、スペシャルなスキルや経歴があるはずだ。もしも明墨が“敵”に先手を打たれ盗撮動画が破棄されてしまう最悪の事態を想定していたとしたら、あらかじめ修復役を用意するのは当然だ。伊達原の常軌を逸した醜態を目の当たりにして、部下の緑川(木村佳乃)もただ事ではないと悟っただろう。第9話では緑川が伊達原に踏みつぶされたHDDを手に、明墨法律事務所を訪れるという逆転シナリオにも期待したくなる。

 これまで明墨に苦汁をなめさせられてきた伊達原が逆襲に転じた展開は、最後に視聴者をスカッさせる下準備だと信じたい。そうでなければ幸せな家庭と12年という時間を奪われた志水と紗耶があまりにも浮かばれない。最終話まであとわずか。第9話が「窮地の明墨が反撃の狼煙をあげた!』とポジティブな気持ちになれる内容になることを切に願う。

■番組情報

日曜劇場『アンチヒーロー』

TBS系毎週日曜21時~
出演:長谷川博己、北村匠海、堀田真由、大島優子、木村佳乃、野村萬斎 ほか
プロデューサー:飯田和孝、大形美佑葵
演出:田中健太、宮崎陽平、嶋田広野
脚本:山本奈奈、李正美、宮本勇人、福田哲平
音楽:梶浦由記、寺田志保
主題歌:milet「hanataba」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
法律監修:國松崇
警察監修:大澤良州
製作著作:TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/antihero_tbs/

東海林かな(ドラマライター)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

しょうじかな

最終更新:2024/06/09 09:00
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