過熱する週刊誌の「皇室バッシング」報道は単なる“品位を貶める嫌がらせ”か
#週刊誌スクープ大賞
「皇室内幕『美智子さま(89)口出し報道』皇后雅子さま(60)静かなる怒り」
さてここからは今週ナンバー1の読み物といきたいが、そうではない。
このところの皇室、特に秋篠宮家についての報道が、あまり根拠がないのに厳しく、偏っている報じ方への苦言を呈してみたいという。
読者には恐縮だが、一緒に考えてもらいたいと思っている。
女性セブンは5月26日に岡山市で行われた全国植樹祭の式典に出席された雅子皇后が、主催者挨拶で額賀福志郎衆院議長が登壇した際、「雅子さまは、ひときわ強い視線を声の主に注がれた――」と報じている。
その理由は、新潮(5月30日号)がこう報じていたからだった。
政府の有識者会議は2022年1月、皇位継承策として「女性皇族が婚姻後も皇室に残る」「旧宮家の男系男子を養子縁組で迎える」の2案を国会に提出していた。
だが、報告書を受け取った当時の細田博之衆院議長は、保守派への配慮もあってこの議論を避け続けた。
2年もの間放置されてきたが、昨年10月に額賀が議長に就任すると、「立法府としてどうすべきか整理していきたい」と、当初から意欲を見せていたという。
額賀議長が“前のめり”になったのは、「上皇后さまからの『重いお言葉』があったからだというのだ」(新潮)。
新潮でさる宮内庁関係者が明かす。
「額賀議長は就任後、上皇ご夫妻に謁見する機会があり、その際に上皇后さまから『(皇位継承に関する議論を)よろしく進めてくださいね』というご趣旨のお声がけを賜っているのです」
それを確かめようと額賀議長に新潮が、「上皇后さまのご意向があったと聞きましたが」と尋ねると、
「それまでの饒舌がうそのように突然沈黙。しばし静寂ののち、一方的に電話は切れてしまったのだった」(新潮)
これを読んだ読者は、美智子上皇后が額賀議長に声がけした事実はあったと思うのではないか。
当然、上皇后が政治に口出しすることは憲法で禁止されている。それにもかかわらず、上皇后が口を出したとすれば、皇室を揺るがす事態になりかねない。
先のセブンは、こう書いている。
「宮内庁の反応は早かった。23日、宮内庁長官が定例会見で報道を真っ向から否定したのだ。(中略)
『宮内庁担当記者らの質問に返答する形ではなく、自ら週刊誌報道について切り出して否定した対応は、異例といえます』
美智子さまに関する事柄について長官の一存で言及できるはずがありませんから、会見内容は、美智子さまのお気持ちを汲まれたうえでのことでしょう」(宮内庁関係者)
では、上皇后の発言報道は事実ではないのか? こう宮内庁関係者は続けている。
「それほどに、美智子さまのご心痛が差し迫っていたのではないでしょうか」
つまり、美智子発言はあったという前提なのだ。
そのために、
「ようやく議論が進もうとしていた矢先の、まるで美智子さまが口出しをされているかのような報道には、雅子さまも静かな怒りを燃やされているそうです」(同)
雅子皇后が静かな怒りを滾らせている相手は、新潮報道と書いてはいるが、実は美智子上皇后ということになるのではないか。
私も長年週刊誌屋をやってきたから、こういうのは週刊誌の常套手段である。どこかの週刊誌が報じたことをそのまま取り上げ、「それが事実だとしたら由々しきことである」と繋げていくのだ。
しかし、今回の美智子上皇后の発言は、長年、上皇と築いてきた「国民と共に歩む」という路線からは考えにくいし、もし事実なら、「掲載前に同誌から事実関係の確認があり、宮内庁は否定する回答を送っていたという。西村(泰彦宮内庁長官=筆者注)氏は『我々の回答に一切触れていないというのはちょっとアンフェア』とも述べた」(朝日新聞Digital 5月23日 15時49分)というだけで済む話ではあるまい。
新潮報道が全くのデタラメだというのではない。だが、皇室制度を根幹から揺るがす報道の「真偽」は、このまま放置しておいていい訳はない。
こうした時に、新聞がその役割を担うべきだが、皇室報道に関して新聞はその役割をとっくに放棄しているように思う。
話を進めよう。新潮だけではないが、このところ秋篠宮家の次女・佳子さんの結婚に関する記事が多くみられる。
佳子さんも今年の誕生日で30歳になる。まさに結婚適齢期真っただ中である。
このところお相手候補として挙げられているのが、旧華族の中でも名門といわれる島津家にいる、佳子さんより1歳年上でメガバンクに勤めている男性である。
4月13日に開催された旧華族の親睦団体「霞会館」で、島津家の私的会合「錦江会」が開かれ、上皇夫妻、秋篠宮夫妻が参加したが、そこに佳子さんもいたというのである。
「あれこれ思いを巡らせるお姿を案じられた上皇后さまが、御自ら『有力な選択肢』を示されたというのだ」(新潮)
ここでも上皇后が登場してくる。
まあ、秋篠宮眞子さんは上皇・上皇后にとって初孫だったため、小室圭との結婚騒動の際は、上皇后は大変心を痛めていたという報道があったが、佳子さんや天皇の長女・愛子さんのことを気にかけているというのは頷ける。
だが、これが報じられると、早速、そのお相手候補を多くの週刊誌が追い回し、突撃取材を始めたのである。
私が知るだけでも現代、新潮、女性週刊誌もやっていたのではないか。名家とはいえ、普通の銀行マンである。さぞかし煩いことであろうが、この男性は穏やかな口調で丁寧に答えているのである。現代(6/1日号)を見てみよう。
ゆったりとした紺のスーツにノーネクタイ。旧型のプリウスに乗り込もうとした時、記者に気付き、彼の方から近付いてきて、丁寧に対応してくれたというのである。
――佳子様のお相手として名前が出ていることについて、どう思われますか。
「よくわからないので」
――ご自身の知らないところで、名前が出てしまっている?
「まあそうですね。自分のことなんですけど、ちょっとよくわかりません」
――周囲からは何か聞かれたりしますか。
「記事が出れば聞かれることもありますが、それだけですね」
新潮もほぼ同じである。
だが、確たる情報もなしに多くの週刊誌が一般人を追い回すのは、ほめられたものではない。これがもし、結婚確実情報でも出たら、会社や彼の住んでいる近隣の住民から多くの苦情が出ることは間違いない。
次に疑問を感じるのは、「秋篠宮家の危機」を連載でやっている文春である。今週は3回目で、秋篠宮家の長男・悠仁さんの東大進学について疑義を呈している。
東大の推薦入学を目指しているといわれる悠仁さんの「学力」に問題があるというのだが、この記事作りにはやや、否、相当の飛躍があると、私には思えるのだ。
最初に、筑波大附属高校に通い、悠仁さんと同級生で、彼のことを「ひーくん」と呼ぶ男子生徒A君というのが登場してくる。
A君はこういう。
「ひーくんが東大の学校推薦に選ばれたとしても、別に驚きません」
さらにA君は、「筑波スタディ」という本格的な学術研究の手法を学び、自分で研究論文を書く授業というのがあるそうだが、こう話している。
「この『筑スタ』でひーくんは確か、発表された論文とは別のトンボの研究に取り組んでいました。学内でも成果をプレゼンし合う発表会がありますが、誰の研究のレベルが高いかというのは聞いていたら分かる。彼の発表のレベルが高いのは皆分かったと思います」
手放しとはいわないが、相当高い評価を「ひーくん」に与えていることが分かる。
だが、文春は、そう素直には受け取らないのだ。
ます、トンボの記録を継続するということを6歳で思い立つとは思えない。両親にいわれて、秋篠宮家の職員たちが手を貸した「上げ底」ではないかというのである。
しかも、これまでも秋篠宮家という威光を使って、東大への進学率の高い筑波附属高校へも入学させてきたではないか。
だが、東大への推薦入学には「合否判定には一般の生徒と同じように共通テストを受ける必要があり、八割は必要といわれています」(教育情報メディア『大学通信』の担当者)と“難癖”をつける。
さらに、「一般入試に合格するほどの学力とも伝わってきていません」(秋篠宮家関係者)と付け加えるのだ。
ここまでは両親が手を尽くして助けてくれたけど、東大入試はそうはいかないと小姑のようなことをいっているとしか思えない。
これでもし悠仁さんが東大に受かろうものなら、「親がごり押しした」と騒ぎ立てるのだろう。
ここまでくると、報道というより、皇室の品位を貶めるための嫌がらせではないかと思ってしまうのは、私だけだろうか。
我々が皇室についての情報を知る術は、週刊誌からが一番多いと思う。新聞は通り一遍の情報しか流さないし、テレビは公務や被災地へ慰問に行った時、そこでの映像や音声を流すだけである。
批判的な情報は週刊誌の一手販売である。秋篠宮の眞子さんと小室圭の結婚問題で、小室家側の金銭問題を取り上げ続け、国民の反発を招き、2人が逃げるようにニューヨークへ逃げ出したのも、その空気を作り出したのは週刊誌報道であった。
それが週刊誌の役割だと、私も思っている。宮内庁という閉鎖的で国民との接触を遮断し、閉ざされた皇室にして顧みることのない「戦前の遺物」のような役所を批判してきたのは週刊誌である。
だが、ここ数年の、秋篠宮眞子さんと小室圭についてのプライバシー侵害とも思える一連の報道や、その後も、秋篠宮家のプライバシーを暴きたてるがごとき集中砲火報道、佳子さん報道のようなパパラッチ的報道など、私のような元身内から見ても少しどうにかならないのかと思える行き過ぎが、このところ多いように思える。
最近、秋篠宮紀子さんの容態不安が報じられているが、もし、彼女が毎回週刊誌の秋篠宮家バッシング報道を読んでいたとしたら、よほど神経の太い人でも参ってしまうのではないか。
事は報道する側の問題だけではない。宮内庁側も、ただ天皇家や秋篠宮家のおざなりの動画をインスタグラムに流せばいいというものではない。
開かれた皇室にするにはどうしたらいいのか。週刊誌側の意見も聞いてみたらどうか。敵対し合っていては始まらない。主要週刊誌のインタビューに宮内庁長官が出て、皇室のちょっといい話を語ったらどうか。
その一歩一歩が、皇室と国民との距離を近付け、親愛の情を抱かせるのではないか。私はそう思うのだが。
日本の皇室とメディア、特に週刊誌との不幸な関係について考えてみたが、いかがだろうか。(文中一部敬称略)
【巻末付録】
今週は現代だけ。寂しい、実に寂しい。
「オスカー・ワイルド『サロメ』×風吹ケイ」「水崎綾女 危ない香り」。水崎っていいね。今週の収穫だが、今一つ物足りないがね。
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