『ブルーモーメント』第6話 迫力を失ったスペクタクルと「命の重み」に関する差別
#ブルーモーメント
天才気象研究官・ハルカン(山下智久)と、その仲間たち「SDM」が気象学を用いて自然災害に立ち向かうドラマ『ブルーモーメント』(フジテレビ系)も第6話。
このドラマは、毎回さまざまなバリエーションの災害に「SDM」が立ち向かうスペクタクルを横軸に、主人公・ハルカンの婚約者で「SDM」構想を立ち上げた灯さん(本田翼)の死の謎を縦軸に展開されていますが、今回は主に縦軸の話。
振り返りましょう。
■スペクタクルは弱めでした
今回は地震によって分断され、孤立してしまった地域にドローンで救援物資を届けるお話。「SDM」もフル出動するわけではなく、ハルカンと助手の雲田(出口夏希)、それに本部長の上野さん(平岩紙)が実行にあたりました。
例によって気象を読みつつドローンを飛ばして食料や薬品を届ける一行でしたが、急病人が出たことで予定より1便多く飛ばさなければならなくなり、大ピンチ。予備のバッテリーはないし、ドローンの電波が途中で途絶えてしまうアクシデントなんかもありましたが、息子との約束をすっぽかした上野さんの活躍もあって一件落着となりました。
電波が途絶えたのはいいとして、バッテリーをギリの量しか持ってきてないという「SDM」らしからぬミスもあったりで、スペクタクルとしては過去最弱の出来。国家プロジェクトなんだからバッテリーは必要量の倍くらい持ってきとくべきだし、天才なんだからバッテリーの残量くらい余裕をもって計算しておけよと思いました。
で、スペクタクルが弱いと、このドラマはがぜんパワーを失うなと感じたのが今回。
縦軸である灯さんの死についてですが、5年前の豪雨災害のときに気象庁に勤めていた灯さんは、居合わせた現地で住民たちに対して公民館に避難しているように指示。自身は公民館を離れてどっかへ行ってしまいました。
結果、その公民館は水にのまれて9人が死亡。灯さんもどっか行った先で亡くなっています。
このことで灯さんは9人が死亡した水害の“加害者”として取りざたされ、その灯さんが発端となった「SDM」にも批判的な目が向けられているというお話です。
灯さんはあの日、公民館に住民たちを残してどこへ行ったのか、そして、なぜ死ななければならなかったのか。その思いがハルカンを突き動かしているわけです。
■なんだか、興味が持てないんです
その謎には「SDM」で気のいい運転手兼料理番として働いていた丸山さん(仁村紗和)も関係していたといいます。丸山さんは被災者たちの月命日を避けて、その前日に慰霊碑に花を手向けていました。
その姿をハルカンに見られてしまい、何か秘密を抱えたまま「SDM」を去ることを決めた丸山さん。聞けば、現在は仮運用中の「SDM」が正式運用に至るまで、灯さんの死に関する秘密を明かさないと決めていたそうです。
今回のラスト、その秘密を丸山さんと共有していた上野さんが、ハルカンに打ち明けるシーンがありました。
「晴原くん、私なのよ。私が奪った。あなたのかけがえのない人の命を、灯の命を──」
上野さんと灯さんは大学の先輩後輩という仲。「SDM」の関係者は、そろいもそろってこの5年前の水害に関わっているわけです。
要するに物語として、「SDM」の内部崩壊を起こさせる方向で準備を進める回だったんですね。災害による被害者の死によって、「SDM」内に葛藤や軋轢を生もうとしている。
その一方で、このドラマは自然災害で人が死ぬことを「単なる不運」と切り捨てているし、災害に遭った人を救えるか救えないかを「取捨選択すべき」というメッセージを、わりと強烈な形で繰り返し唱えています。
ここに、ドラマの中における「人の死の重み」の扱いに、物語の構造としての差別が生まれてしまっているように感じたんです。灯さんや公民館の9人の死は「単なる不運」ではないと言っている。
そりゃドラマですから主人公周りを手厚く描いて、モブが死んでいくことに意味を持たせないのは当たり前なんですが、見ている側としてそれを「単なる不運」と切り捨てることを是とするメッセージが刺さりすぎているもんで、ハルカンの抱える悲劇になんとなく気持ちを乗せきれない。「ご遺族はみんなハルカンくらい苦しんでると思うよ」という思いが先に立ってしまう。
もっともそれは「SDM」という組織そのものの描写がリアルで魅力あるものとして描けているという証左でもあるわけですが。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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