『ブルーモーメント』第4話 ド正面から芝居の力でぶちかます出口夏希の破壊力
#ブルーモーメント
天才気象研究家・ハルカン(山下智久)がリーダーを務める特別災害対策本部「SDM」の活躍を描くドラマ『ブルーモーメント』(フジテレビ系)も第4話。「ブルーモーメント」というのは、日の出の直前と日没の直後に空に深い青色が現れる時間帯のことだそうです。
当たり前にそういう時間を迎えられるのって奇跡だよね、自然災害によって死んじゃったり大ケガして悩んでる人もいるもんね。そういう話なわけですが、今回は当たり前にブルーモーメントを迎えられる側、災害に遭ってない側の人たちのお話でした。
当たり前じゃないからな。振り返りましょう。
■いつになくコミカルな始まり
災害を描くドラマですから、当然、被害者や犠牲者と呼ばれる人物が登場することは避けられません。自然とドラマそのものの空気感も重苦しくなりがちなものですが、今回の『ブルーモーメント』はいつになくコミカルな雰囲気でスタートしました。
今回、SDMは子どもたちを集めて防災教室を開くことに。ハルカンも、テレビ用の顔で明るく楽しく防災について教えています。
SDMの地理解析担当を演じている岡部大はもちろんですが、こういう軽い雰囲気になったときの夏帆は強いですね。言ってることは別に面白くないのに「なんか面白い」芝居ができちゃう。仕事が途切れないのもよくわかる。
防災教室の場所は、千葉県内の某市。この場所に数日後に台風が迫っていて、SDMでハルカンの助手を務めている雲田彩(出口夏希)の地元でもあります。
雲田は3年前、この町でつむじ風に遭遇していました。目の前で突風を受けたクレーンが倒れ、雲田の姉(石井杏奈)を圧し潰しました。
脊椎をやられた(たぶん)お姉ちゃんは、それ以来車イス暮らしを強いられるようになり、やたらと「がんばれ」とか言ってくる妹・雲田に対しても心を閉ざしています。
「なんで彩じゃなくて私なの!」なんて荒れまくるお姉ちゃんが言ってるのを聞いちゃったこともある雲田。お姉ちゃんがクレーンの下敷きになったのは、雲田が呼び止めたからだったこともあって、罪悪感からいまだに事故当時の風景がフラッシュバックしてしまうという傷を抱えています。
もうひとり、今回、防災教室に集まった子どもたちの中に、心に傷を負った女の子がいました。大好きだったおじいちゃんを台風で亡くし、その遺体が運ばれていくのを目の前で見てしまった少女。彼女が大切にしていたぬいぐるみは、首元のリボンと耳が取れかけていた。雲田はそれをきれいに縫い直してあげますが、このことによって女の子もまた、当時のことを思い出して過呼吸を起こしてしまいます。
平穏な日常の中で、健康で、笑うことだってできる普通の人たちの中にも、こうして心に傷を負って苦しんでいる誰彼がいる。そういうことを際立たせるための、あえてのコミカル演出をやってくる。『ブルーモーメント』は、そういうことがわかっている信頼の作品です。
■際立つ雲田彩、際立つ出口夏希
そうやって際立たされた雲田彩という人物が、今回の主役です。
防災教室を開いていた近所で竜巻が起こる。天才ハルカンが天才能力を発揮してその予報を弾き出しました。急いで避難を呼びかけるために地元のテレビ局が協力してくれることになりましたが、テレビ慣れしているハルカンはちょっと手が離せない。
竜巻の怖さを伝えられるのは、実際に経験している私しかいない。そう心を奮い立たせた雲田は、自らカメラの前に立つことを志願します。
お姉ちゃんを圧し潰したあの災害が、どんなものだったのか。雲田は涙ぐみながらカメラをまっすぐに見つめて語り始めます。スタジオでは、車イスのお姉ちゃんも見ています。
テレビから、防災無線から、雲田の呼びかけの声が響く中、市民たちが避難していきます。
「繰り返します。屋外にいる場合は、直ちに建物内に避難してください。屋内では雨戸や窓を閉め、建物の中心に移動してください」
少し舌足らずで、切迫していて、冷静で。
その姿を見ていたお姉ちゃんに、SDM医療統括責任者の汐見医師(夏帆)が語り掛けます。
「サバイバーズ・ギルトって、ご存じですか? 生存者の罪悪感。災害から生存した方も、罪悪感によって苦しみます」
お芝居のピークに、お話のキーワードをポンと置いてくる。『ブルーモーメント』は、そういうことがわかっている信頼の作品です。
なんて、ちょっとスカして書いてますけど、今回のラストは泣いちゃったからね。「泣けるわー」というドラマは数あれど、本当に泣いちゃったのはけっこう久しぶりな気がします。当たり前におもしろいドラマが見られる奇跡に感謝しつつ、次回を待ちましょう。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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