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大阪万博は即刻中止すべき! 『木造リング』に潜む深すぎる闇とは

「『大阪万博』危機の深層 世界的建築家『山本理顕』が問う『ずさんな実態』」

 さて今週の第1位は、新潮の万博を中止せよという記事に捧げたい。

 これまで、大阪万博を中止、または延期せよという批判は多数出され、論点はほぼ出尽くしたかに思っていた。

 その論点は、開催までに建設が間に合わない。建設費の高騰で国民の負担が増える。参加国の少なさと、日本人の関心の低さ。会場となる夢洲は地盤が軟弱などである。

 東京五輪と同じ利権の臭いがする、万博よりも日本維新の会は跡地をカジノにする方が最優先というものもある。しかし、なんだかモヤモヤしたものが私の中に残っていた。

 だが、今週の建築家・山本理顕のインタビューを読んで得心がいった。

 そうなんだ! これは大阪万博を即刻中止、または延期しなければならない決定的な「見解」として広く読まれるべきである。

 山本の意見に耳を傾けてもらいたい。

「会場をぐるりと囲む木造の大屋根、通称『木造リング』と呼ばれる『大阪・関西万博』のシンボルは、大阪へ万博を招致する最初の段階で作成された計画案には、明記されていませんでした。
いったい誰がいつ、つくると言い出して、建設することに決まったのか。その経緯も含めて責任者が不明で、信頼できる情報が発信されているとは言い難い。数々の疑問に対して、責任者がしっかりと答えてくれればいいだけなのに、それができていません」

 3月5日、建築会のノーベル賞と称される「プリツカー賞」を受賞した建築家の山本理顕(79)が受賞後のインタビューで、来年4月から開催される「大阪・関西万博」について問われた際、「あれほどひどい計画は、建築家から見たらあり得ない」などと舌鋒鋭く批判したそうだ。

「今回の万博における問題点は『責任者が誰なのか分からない』ということに尽きます。
(中略)国や大阪府・市などの行政のみならず、経団連など民間からもお金を投入し『国家事業』として進めているのですから、責任の所在は隅々まで明確でなければなりません。
私が建築家の立場から憂慮する『木造リング』についても、実際は誰が考案して設計したのか。会場の設営を進める万博協会が、いつ誰に依頼して承認したのか。常識的に納得できるような公的説明が皆無です。
旧ツイッターのXなどでは、万博の会場デザインプロデューサーである建築家の藤本壮介さんが、“自分が考案した”と言っているようですが、実際のところ“考案”とは具体的に何を指すのか。(中略)
実のところ『木造リング』の設計自体は他社に委託されています。2021年7月、『リング基本設計技術提案』がコンペ(プロポーザル)の形で公募され、万博協会は『東畑・梓設計共同企業体』を設計者として選定しているのです」

 藤本は自分が考え付いたが、他人が設計したほうがいいと考えたのはなぜかと疑義を呈する。

 しかも、万博のシンボルを設計するのは大いなる栄誉なのに、なぜそれをしないのか?

「1970年、大阪万博の丹下健三――。万博のシンボルを設計した者は、その栄誉とともに記憶されています。(中略)
翻って、今回の万博で藤本さんは会場のプロデューサーであると同時に、シンボルとなる建築の設計者の役割も担っている。自分ではそう言っているようですが、それならなぜ最も重要な『木造リング』の設計を他社に任せたのか。全く納得がいきません。
その上、肝心の設計コンペにおける審査が、驚くほど杜撰なものであることが分かってきました。万博協会が公にした審査講評は、極めて簡易なものでしかありません。
これまで数多くのコンペを経験してきた私から見ても、公平な審査とはとても言えない。根拠不明の点数のみで、その内容は分からない。藤本さんによる選定理由の文章だけで、建築家たちは納得するだろうか。これが総工費350億円の公共建築の設計者選定の審査結果なのです」

 このような審査に対して、コンペ参加者から3月に、以下のような怒りのメールが届いたという。そこには、

「審査委員には、木造の専門家も、構造の専門家も、リユースや資源循環の専門家もいません。さらに、具体的にどのような提案がヒアリングに残ったのか、どのような議論が行われ最終案が選定されたかは、上記の簡単な記述だけでメディアに対して全くオープンにされていません。全く公開性のない審査で決められています。プロポーザル参加者としては(中略)納得のいかない審査結果を押し付けられた感が強いです」

 というものだという。

「あまりにも杜撰としか言いようがない。このコンペ要項を作ったのは藤本さんです。プロデューサーとしての責任感が欠如していると思います。
おまけに、『木造リング』の設計料は2億円弱で、総工費は350億円。これほどの金額がかかる公共事業の設計者を、この程度の杜撰な審査で選んだのなら、コンペの参加者だけではなく、本来なら万博協会こそが怒らなくてはならないはずです。
自らの責任をできるだけ回避したいのでしょう。藤本さんは自身のXで大要、〈藤本壮介建築設計事務所が設計業務として請け負うことは、自分で巨大建築を構想して自分の事務所でそれを受けるということになり、自らに利益を流していると受け取られる可能性がある。それは本意ではないので、設計者を別で設定した〉
『木造リング』のアイディアが藤本さん自身だと言うからには、なおさら設計から監理まですべてに関わり、完璧を目指さなくてはなりません。
万博協会は、藤本さんという建築家を全面的に信頼しているからこそプロデューサーに選んだのです。“金銭の横流しを疑われるから、設計は他者に委ねた”などという言い訳は通じません。そんなことを心配しなくてはならないことが、逆に今回の万博プロジェクトに内在する問題をよく表しています」

 なるほど、東京五輪とよく似た構図ではないか。

 さらに「木造リング」の構造計算や積算業務は極めて難しいという。

「今回の『木造リング』には『貫構造』といわれる日本の伝統的な工法を模したものが採用されているからです。
『貫構造』とは、釘やボルトや金物を一切使わず、柱と梁の接合部を楔によって固めるだけで、木造構築物を支える工法です。今ではほとんど使われていません。その耐震性に必ずしも信頼がおけないからです」

 結局、実施設計と工事を請け負ったゼネコン3社は、「貫工法」で作ることを諦め、金物で補強する手段を選んだという。さらに続けて、

「こうした専門知識のないままに、大阪府知事や大阪市長は『貫構造』でつくるかのような解説をしていましたが、本来はプロデューサーである藤本さん自身が正確な説明をしなくてはならない。
それなのに、彼には説明責任者としての自覚が全くない。そもそも自分がなぜプロデューサーに指名されたか分からないというのです。それは藤本さんから直接聞きました。
藤本さん自身、自分がなぜプロデューサーに選ばれたのか、誰によって選ばれたのか。その理由も根拠も知らされず就任を引き受けたと知って、あまりにも無謀だと感じました」

 さらに批判は、建築界のドンといわれる人間に向く。

「19年12月に、建築家の安藤忠雄さんをはじめとする13人のシニア・アドバイザーが選ばれています。(中略)
安藤さんは同年10月に万博のロゴ選定委員会の座長になっており、翌年1月には『万博の桜2025』実行委員長に就任。次々にインパクトのある提案を打ち出しました。
中でも最も大きなインパクトがあったのが、プロデューサーに指名された藤本さんによる『木造リング』だった。それはあまりにも唐突な提案でした。すべての混乱はここから始まったといっていいと思います。(中略)
アドバイザーである安藤さんの責任は、万博のために働いてる建築やデザイナー、様々な専門家たちが、その技量を十分に発揮できる環境を整えることではないでしょうか。それが今や、逆に彼等や万博協会の信用を貶めるようなことになっています。安藤さん自らの説明がないからです。安藤さんはその責任を感じるべきだと思いますが、今は全く公の場に現れません。安藤さんに言いたいことは、その責任から逃げてはいけないということです。
また安藤さんは、このような国家的プロジェクトに関わったのですから、万博そのものだけではなく、それを巡る現在の状況にも厳しく目配りすべきです。能登では大きな災害が起きました。まだ復興の見通しが全く立っていません。万博協会としても、何らかの支援を打ち出すべきです。そうした提言をすべきです。安藤さんこそが中心になるべきです。
 藤本さんと直接会った際、大阪に住む人々の生活に無関心だなという印象を持ち、不安に感じました。
 万博の会場は、大阪市民が生活する街から遠く離れた場所、大阪湾のゴミ処分場の跡地です。そこに会場をつくると決めた政策自体に問題があります。
 大阪の都市計画、未来へのビジョンがないまま、短期的な金銭的利益のために万博を利用するのは間違っている。万博用地の後利用として、IRを計画した方が合理的だと考える人もいるかも知れませんが、そこで生まれた利益は、本当に大阪市民へ還元されるのでしょうか。ほとんど海外のカジノ業者の利益になるだけではないでしょうか。(中略)
万博は現在のみならず未来の住人に対して夢を与えるために開催されます。『夢洲/万博/IR』が、地元自治体トップである大阪府の吉村洋文知事の夢だとしたら、それは大阪の人たちに共有されているのでしょうか。未来の住人であるはずの子どもたちに、きちんと伝えられる夢なのだろうか。甚だ疑問です」

 何一つ付け加えることはない。これぞ万博を即刻中止すべき最大の根拠を示す完璧な論拠となる文書である。吉村知事、悪いことはいわない、すぐに万博を延期して、もっと簡素で、大阪人からも、国民からも、世界中からも称賛されるものに作り変えるべきではないか。(文中一部敬称略)

【巻末付録】

 まずは現代から。

「小池里奈 帰ってきた伝説」「堀みなみ ベビーフェイスにだまされて」

 ポストは……。

「人気女子アナ『ピカピカの一年生』」「女医が教える世界一受けたいSEXの授業」
袋とじ「大阪大学院卒 バレリーナ、全裸Y字大開脚 藤かんな」。袋とじ「宮崎千尋 清純革命」「田野憂 Lカップ、温泉にいく」「熊田曜子がポールダンサーになっちゃった!?」

 もはやどっちが勝った? なんていうまでもなくポストの勝ちだが、現代はなぜ、こんなグラビアをいつまで続けるつもりなのだろう。部数増にはつながらないグラビアをダラダラ続けていることが不思議でならない。

 フォト・ドキュメンタリーのようなものに切り替えていく気はないのだろうか。

元木昌彦(編集者)

「週刊現代」「FRIDAY」の編集長を歴任した"伝説の編集者"。

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もときまさひこ

最終更新:2024/05/14 13:00
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