プロボクシング・那須川天心は大丈夫か……覚醒していく日本人バンタム級王者たち
#ボクシング #那須川天心 #井上尚弥
6日、東京ドームで行われた34年ぶりのプロボクシング興行に日本中が熱狂した。
メインイベントは井上尚弥の統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチ。対戦相手となったWBC同級1位のルイス・ネリ(メキシコ)は日本のボクシングファンにとって因縁の選手でもあり、会場は4万人の大観衆で埋まっていた。
試合は第1ラウンドに井上がプロキャリア初となるダウンを奪われるなど波乱の展開もあり、大盛り上がり。結局、その後3度のダウンを奪った井上が鮮烈なノックアウトでネリを退け、4団体の王座を見事に防衛してみせた。
この試合の前、セミファイナルの試合は“事件”ともいえる結果だった。WBOバンタム級王者のジェイソン・マロニー(オーストラリア)に元K-1世界王者の同級5位・武居由樹が12ラウンド判定勝ちで王座奪取。パワーあふれる変則的なボクシングでマロニーを圧倒し、ジャッジ3人がいずれも武居の勝利を支持する完勝だった。
戦前、武居の勝利を予想する者はほとんどいなかった。キックボクシングから転向して、わずか8戦。そのすべてをノックアウト勝ちしているが、踏み込みのスピードとパワーパンチに傾倒したスタイルは、誰に言わせても「世界には通用しない」と断じられるありさまだった。
そんな武居が、そのスタイルのまま世界のベルトを巻いた。マロニーは決して“穴”王者ではない。バンタム級時代の井上尚弥とも対戦経験があり、倒されこそしたものの序盤は互角に渡り合った高度な技術の持ち主である。
そのマロニーを破ったのだから、今回の武居の勝利は大殊勲といえる。
“事件”といったのは、これで主要4団体のバンタム級世界王者が4人とも日本人となったことだ。
WBOの武居に加え、4日には、こちらもキャリアわずか8戦だった西田凌佑が同級最強王者の呼び声が高かったエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)からダウンを奪い、判定勝ち。IBFのベルトを奪取している。西田も戦前の予想は圧倒的不利。まるで覚醒したかのような戦いぶりで大金星を挙げている。
WBCにはすでに世界的な評価も受けている中谷潤人、WBAにはこの日の東京ドームで2度目の防衛を果たした井上尚弥の弟・井上拓真。バンタム級の4団体で4人、スーパーバンタム級では井上尚弥が4本を独占、53.5kgと55.3kgに存在する8本の世界チャンピオンベルトがすべて日本にあるという、日本ボクシング史上でもかつてない黄金期を迎えているのだ。
心穏やかでないのが、この日もリングサイドを訪れていた元キックボクシング界のスーパースター・那須川天心だろう。
2021年にプロボクシングへの転向表明後、実際のデビューまでに2年を要し、その後もまだ3試合しか行っていない。今年1月には世界14位の選手を圧倒して見せたが、3カ月半がたった現在でも次戦を発表できないでいる。
ボクシングとしてはキャリアの駆け出しである那須川だが、25歳という年齢は決して若くはない。今は少しでも試合を重ねて経験を積みたい時期だが、有名選手ゆえに各方面の利害関係の調整がマッチメークを遅らせていることは想像に難くないところだ。
「次に東京ドームを埋めるのは俺だ」と息巻く那須川だが、その前にやらなければならないことは山ほどある。
今回、試合後に大橋ジムの大橋秀行会長が明かしたところによると、武居は直前に井上尚弥とスパーリングを行い、こてんぱんにやられたのだそうだ。試合を控えたトップ選手同士が直前にスパーリングを行うことは極めて珍しく、武居という選手がいかに恵まれた環境で育成されてきたかを垣間見るエピソードである。
一方の那須川は先日、YouTubeで高級外車の助手席に陣取り「蹴り一発使えたら井上尚弥に勝てるか」などという与太話に花を咲かせていた。
この差を埋めるのは、なかなか容易ではないだろう。
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