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「グルメ」に命運を託すテレビ界、日テレのゴールデンは“食べ物だらけ”の異常事態

「グルメ」に命運を託すテレビ界、日テレのゴールデンは食べ物だらけの異常事態の画像1
日本テレビ

 ひな壇トーク、日本礼賛、街ブラなど、テレビ界には常に流行があるが、ここ最近、際立って多いのがグルメ番組である。

2021年にスタートした『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(日本テレビ系)は、今や視聴率ランキングの上位常連だが、この4月からもキー局で『世界頂グルメ』(日本テレビ系)、『街グルメをマジ探索!かまいまち』(フジテレビ系)と、新たに2つのグルメ番組がスタートした。

「ハライチと佐藤栞里が司会の『世界頂グルメ』は、日本ではお目にかかれない珍しい料理を紹介する番組。特番で3回放送された上でのレギュラー昇格ですが、3回目の放送時に『未開グルメ』というタイトルが“不適切だ”とプチ炎上し、『頂グルメ』というタイトルに変更してレギュラー番組になりました。一方『街グルメをマジ探索』は、芸能人が1つの街を歩き回り、最高の店や最高の一品を紹介する番組。こちらも3回の特番を経た上でのレギュラー昇格です。この他、テレビ東京では昨年10月まで放送されていた『デカ盛りハンター』が4月から復活。『頂グルメ』はもともとドラマ枠、『街グルメ』はお笑い番組、『デカ盛りハンター』は単発の特番枠だったので、グルメ番組が増えた印象は強いでしょう」(テレビ情報誌記者)

 他ジャンルの番組をどんどんつぶし、着実に勢力図を拡大しているグルメ番組。とりわけ日本テレビは、その傾向が強い。

「日テレはこれまで、火曜に『オモウマい店』、木曜に『ぐるナイ』、土曜に『満天☆青空レストラン』と、ゴールデンは食べ物だらけでしたが、水曜に『頂グルメ』が加わり、“全曜日コンプリート”は間近。この他、『有吉ゼミ』、『秘密のケンミンSHOW極』や『沸騰ワード10』も半分ぐらいはグルメですし、『ザ!鉄腕!DASH!!』も料理企画は多いですから、これは偶然でなく“確信犯”でしょう」(同上)

 もっとも、グルメ番組に頼るのは日本テレビだけではない。テレビ欄を眺めれば、『バナナマンのせっかくグルメ!!』『ベスコングルメ』(TBS系)、『朝めしまで。』(テレビ朝日系)、『タクシー運転手さん一番うまい店に連れてって!』(テレビ東京系)など、グルメ番組はめじろ押し。『坂上&指原のつぶれない店』『マツコの知らない世界』(TBS系)、『帰れマンデー見っけ隊!!』(テレビ朝日系)なども、グルメを扱ったり、食事をするシーンは多い。

背景にはテレビ業界が抱える切実な事情がある。

「使い古された表現ですが、昨今はテレビ離れが激しく、若者は本当にテレビを見ない。あらゆる番組が散々な視聴率で討ち死するなかで、グルメ番組は“まだマシ”なので、いきおいグルメものに流れる結果になります。グルメであれば視聴者は老若男女を問いませんし、画面が映えるのでチャンネルを変える手も止まりやすい。YouTubeやTikTokに慣れた若者は長時間動画に耐えられませんが、グルメならじっとテレビを見続ける必要もありませんしね。他にも理由はあります。VTRを中心に進行すれば、スタジオは簡単なセットで良く、タレントも少なくて済むので、制作費は安く収まります。飲食店にアポを取って、タレントを使わずにスタッフがロケをして、ナレーションやテロップなどで進めれば、驚くほど低予算で番組が作れます。また、グルメなら炎上リスクも少ないことも、グルメ番組が重宝される一因でしょう」(民放バラエティ番組制作関係者)

 お金を掛けずに数字が稼げるなら、これをやらない手はない。4月第1週の視聴率ランキングを見ても、『ぐるナイ』と『オモウマい店』はしっかり上位にランクイン。しかし、グルメ番組には厳しい現実もある。

「広告業界では美人(beauty)、赤ちゃん(baby)、動物(beast)を使うと広告効果が高く、『3Bの法則』と呼ばれますが、これをやる人間は業界内であまり評価されません。“安直なやり方に頼った”と見られるということです。テレビ業界におけるグルメ番組も同じ。食べ物は本当に煮詰まった時に手っ取り早く数字を稼ぐ方法で、いわば最後の手段です。それが溢れかえっているということは、“テレビ業界もいよいよ……”という証拠でしょう。グルメがいかにテレビで強いかを知るには、長時間の特番や情報番組を見ると分かります。テレビ業界では、チャンネルを変えるタイミングとなる◯時55分から◯時5分ぐらいまでの時間を『またぎ』と呼び、ここに一番強い映像を持ってきますが、グルメは動物や衝撃映像と並ぶエース格。またぎを注意して見ると、テレビ局がどうやって数字を稼ごうとしているかが分かると思います」(広告関係者)

 食欲を刺激するような映像は魅力的だが、あまりに多いと“お腹いっぱい”になるのは実際の食事と同じ。新たに始まった2つのグルメ番組の成否は、今後のテレビ業界を占う指針となりそうだ。

木村之男(芸能記者、TVウォッチャー)

1972年生まれ、東京都出身。大学時代にライターとして活動し始め、出版社~編集プロダクションを経てフリーに。芸能・カルチャー・テレビ・広告業界などに精通する。趣味はテレビに映った場所を探し出して、そこに行くこと。

きむら

最終更新:2024/04/29 12:00
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