『くるり』第2話 「ポップに見せてマジにやろうぜ」という強い意志を垣間見る
#くるり
“めるる”こと生見愛瑠主演の『くるり~誰が私と恋をした?~』(TBS系)、16日放送の第2話。相変わらず、元同僚のイケメンに「付き合って!」と言ってスポッチャ的なところでデートしたり、元カレイケメンに不意に抱きしめられたり、ITイケメンにバカみたいに大きなバラの花束を贈られたりとキラキラシーンを連発しながら、記憶を失った緒方まこと(めるる)というひとりの人間の「本当の自分を探す旅」が実直に描かれました。
ここに至り、明らかにこのドラマが「ポップに見せてマジにやろうぜ」という意思を持って生まれてきたことを確信します。
振り返りましょう。
■テーマとキュンを切り分けつつ織り交ぜる
このドラマは記憶喪失モノでありながら、過去の記憶を取り戻すことを目的としていません。むしろその過去が幸せだったのかという疑義が出発点になっています。
心療内科の先生とまこととの間で、「意味記憶」と「手続き記憶」についての会話が交わされるシーンがありました。
「自転車は乗り物である」というのが意味記憶。「自転車に乗れること」が手続き記憶だそうです。記憶を失ったまことは、「自転車は乗り物である」という知識を持ち合わせているのと同様に「本当の自分を偽って就職するのはよくない」という概念も持っていることが示されています。
会社では波風を立てないことだけを考えてヘラヘラしていたらしい。まことは、そんな自分が「嫌だ」という確信だけは持っているのです。なので勢いで会社を辞めてしまい、就活の必要に迫られても面接で取り繕うような応答をすることはありません。過去のESを手に入れても、そこに書かれている自己PR文を確認することもしない。ネットで面接対策を調べたりもしない。今の自分で面接に臨むことだけは固く決意している。でも、今の自分がなんなのか、よくわからない。
指輪がシンデレラフィットする男性の候補として現れた3人のイケメンも、今のまことが考えるべきテーマを与えてきます。
元同僚の朝日(神尾楓珠)は「仕事選びは好きか好きじゃないかではなく、向いてるか向いてないかで決めた」と言い、花屋の元カレの公太郎(瀬戸康史)は「好きなことを仕事にしたら」と言う。謎のITイケメン律(宮世琉弥)は「自分の人生を幸せにするために、どう働くかで仕事を決めたらいい」と言う。
このドラマが巧妙なのは、そうしたテーマをキュンに織り交ぜて提示してくることです。例えば元カレが不意にまことを抱きしめるシーンがありますが、ここでまことが「このぬくもり……覚えてる……(キュン)」みたいな描写をしないんですね。テーマ部分と装飾部分をちゃんと切り分けている。このキャスティングでこの雰囲気なら「恋愛に心を支配される」という方向に進んでも別に不思議じゃないところですが、あくまで「意味」で展開を作ろうとしている。「ポップに見せてマジにやる」というのはそういうことです。
それでいて、まことの仕事選びの結論としては「人を好きだった気持ち」に根拠を求め、キュン要素の象徴である指輪につなげていくあたり、ホントに巧妙にやってるなと感じます。ここでいう巧妙には否定的なニュアンスは全然なくて、ちゃんと考えて知的なことをやってて素敵ですよという意味です。
■さらにミステリーとしても
ITイケメン律との出会いは偶然ではなく、律が仕組んだものだということも明かされました。過去に律とまことには関係があって、まことは律に「バラが好き」「子どもが好き」と適当なウソをついていたことがある。
花屋の公太郎は、まことに二股をかけられていた。そして、まことが第1話で転げ落ちた階段に、何かがある。元同僚の朝日も、その場所には関係がありそうだ。
今回、そうしたミステリーとしての仕掛けも始まっています。まだ予感だけど、『くるり』はミステリーとしてもマジにやる気なのではないかという気がしています。
大テーマとしての自己の再発見、装飾としてのポップなラブコメテイスト、さらにミステリーとしての仕掛け、この3つが、わりかしレベルの高いところで融合して成立しそうな気がしてるんです。
もしかしたら、すごい作品になるかもしれない。まだ予感ですけど。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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