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『オッペンハイマー』を圧倒した『変な家』 同調圧力の強い社会で生じるリアルな“呪い”

スケープゴートを求める閉鎖的社会

 それでも、若い世代は映画化された『変な家』が気になり、友達を誘って映画館に足を運んでしまうわけですよ。何が気になるのかと言えば、やっぱり一家にかけられた“呪い”の正体じゃないですか?

 柚希の母親・喜江(斉藤由貴)は、一族に伝わる「左手供養」という奇妙な儀式にずっと苦しんできたことが物語中盤で明かされます。今どき、法律を犯すような奇妙な風習が残っているのかと不思議に思うかもしれませんが、絶対にないとも言い切れません。

 日本のような同調圧力の強い社会は、非科学的な根拠による災い=“呪い”がすぐに発動することを、若い世代はよく知っているんだと思います。東日本大震災の後には、福島というだけで風評被害に遭い、コロナ禍では自粛警察によるバッシングが横行したことは記憶に新しいところでしょう。“呪い”が発動した後には、スケープゴートが必要とされる社会だということも、若い世代はリアルに感じているんじゃないですか。

 その点、被差別部落問題を描いた『破戒』(22年)に主演した間宮祥太朗と、『歴史探偵』(NHK総合)に出演中の佐藤二朗という主演コンビは、シリアスすぎず、おちゃらけすぎずにいいバランスの顔合わせだったと思います。唯一、この映画で評価できるポイントでしょう。

“呪い”を題材にした実話系の映画たち

 3時間にわたって天才科学者の苦悩を没入体験させる『オッペンハイマー』よりも、一見すると明るい平和そうな家族に隠された“呪い”のほうが、日本の若者たちにはより身近で気掛かりな問題なんだと思いますよ。

 4月5日から公開が始まった実話系映画『アイアン・クロー』と『毒娘』も、家族というドメスティックな環境に閉じ込められた人たちの悲惨なドラマです。『アイアン・クロー』は実在した「呪われたプロレスラー一家」を題材に、『毒娘』はネット掲示板に書かれた育児放棄された少女の逸話をモチーフに、家族という名の“呪い”を描いた作品になっています。

 まぁ、『オッペンハイマー』も、オッペンハイマー博士が「プロメテウスの呪い」に悩み続ける物語だと言えるし、どこのメディアも「数字を稼がなくちゃいけない」という強迫観念に囚われている状態でしょう。いろんな“呪い”が交錯しているのが、現代社会なのかもしれません。

映画ゾンビ・バブ

映画ゾンビ・バブ(映画ウォッチャー)。映画館やレンタルビデオ店の処分DVDコーナーを徘徊する映画依存症のアンデッド。

えいがぞんび・ばぶ

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最終更新:2024/04/11 16:30
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