『耳の穴』ウエラン・井口浩之の「コント師イジリ」と、かつてバナナマン・設楽が語った「売れ方」の話
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ウエストランド・井口浩之ととろサーモン・久保田かずのぶというお笑い界きっての毒舌芸人2人によるトーク番組『耳の穴かっぽじって聞け!』(テレビ朝日系)の第2回が9日深夜に放送された。
前回は元ゾフィーの上田航平が登場し「芸人の解散」というシビアなテーマを扱った『耳の穴』だったが、今回は若手芸人が2人に「ぶつけたい本音」を文章にして提出するという企画だった。
最初に登場したのは、芸歴10年のコントトリオ・青色1号のカミムラ。『ゴッドタン』(テレビ東京系)の「この若手知ってんのか!? 2020」企画で「とにかくヤバい芸人部門1位」にも選ばれたことのある、知る人ぞ知る“トガリ”芸人である。
カミムラは「コント師がテレビで活躍する未来が見えません」として、漫才師ばかりがバラエティで活躍している現状を危惧。「久保田さんや井口さんにコントをバカに馬鹿にされても言い返そう」としない先輩コント師たちを憂いながら、井口と久保田に「とにかくもうコントのことを悪く言わないでください!」と訴えた。
「言ってねえよ」「馬鹿にしたことないよ」「すげえ当たり屋やんか」と首をひねる久保田だったが、大いに心当たりのありそうな井口は「(コント師は)なんかスカしてるやつ多い」と持論を展開。さらに「僕が口酸っぱく言っちゃったんですよね」と白状した。ちなみにウエストランドと青色1号は東京のライブで頻繁に顔を合わせる関係だった。さらに井口とカミムラは、一緒にディズニーランドに遊びに行ってミッキーの耳をつけたりしていた過去もある。
「おまえかい、これ」とあきれ返る久保田を前に、井口は「コントなんかするな」とハッキリ言い放ったこともぶっちゃけていた。井口が本ネタにも採用しているほどの、いつもの「コント師イジリ漫談」である。
だが、ここからが『耳の穴』ならではの本音モードだった。
井口は「コントの人でも活躍している人はいる」としてバナナマン、チョコレートプラネット、シソンヌの名前を挙げ「結局は人が面白いかどうか」と結論付けた。
だが、カミムラの言ってることもまた現実である。
「コント師は、2度売れなければいけない」と言ったのは、当のバナナマン・設楽統だった。一度はネタで売れ、次に“ニン”で売れなければ、生き残ることはできない。
そんな設楽が、「バナナマンがなぜ売れたか」を明確に語っていたことがある。2008年4月14日のラジオ『バナナマンのバナナムーン』(TBSラジオ)の放送後のポッドキャスト配信だった。
ゲストにデビュー当時から親交のあるアンジャッシュ・児嶋一哉を迎えていたその日、設楽は相方の日村勇紀について話し始めた。
「プライドを捨てたと思うのよ。『俺はうんこです』って言えるようになった。15年近く見てて思うのは、そこがコジ(児嶋)と明らかに違うことだと思う」
「ここ(プライド)を削れって難しい話だけど。そこのジャンルにいる人っているじゃん。ダメでも笑えるダメと本当に嫌な感じのダメ。そのどっちに転ぶか、今コジは際に立ってると思う」
スマートなシティ派、ライブでは音楽と映像とフライヤーにこだわり、平場ではハシャがない。かつてのバナナマンは、今ならあっという間に井口の餌食になりそうなコンビだった。だが、『キングオブコント2008』(TBS系)で優勝できなかったことを機に、大きく路線を変更している。その後、バナナマンをブレークに導いたのは、恥も外聞もかなぐり捨てた日村の「あどで~」という貴乃花のモノマネだった。
そして児嶋も数年後、「児嶋だよ!」を武器にイジラレキャラとしてテレビの世界に飛び込んでいく。
チョコレートプラネットのブレークもまた、練り上げられた本ネタとはまるで毛色の違うIKKOと和泉元彌のモノマネがきっかけだった。シソンヌ・長谷川忍はショーパブ時代に培ったMC力とコミュニケーション能力で番組を獲得し始めている。一方のじろうは舞台で、井口の言う“作品”にこだわり続けている。その先には、「ライブだけで食っていく」という夢物語を実現した東京03がいる。
結局のところ「売れるためには」というテーマ自体が、もう古びてしまっているのだ。芸人が好きなことをやって金を稼ぐ手段は、すでにテレビで売れることだけではなくなっている。
そんな時代に、貪欲に「テレビで売れたい」と公言するカミムラの姿が、新鮮に映ったのもまた事実である。
(文=新越谷ノリヲ)
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