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『くるり』第1話 意外にマジメな「自己の再発見」コメディとして成功の予感

第1話 記憶喪失と恋の四角関係!? | TVer

「あのギャルの子、異常に芝居うまくない?」でおなじみの“めるる”こと生見愛瑠がゴールデン初主演となる『くるり~誰が私と恋をした?~』(TBS系)も9日にスタート。TBSと大映テレビの共同制作だそうで、いやはや大映ドラマもずいぶんポップになったものです。

 ルックとしてはキラキラモデルのめるるとキラキライケメン3人が並んでおりますが、お話は記憶喪失による自己の再発見という、わりかしマジメに作られた作品に見えました。

 冒頭、桜が咲き乱れお花見真っ盛りな公園を全力疾走で駆けていく緒方まこと(めるる)。はっきりとは描かれませんが、どうやらピンクの着ぐるみから逃げているようです。階段から足を踏み外したまことは真っ逆さまに転落し、病院に運ばれてしまいます。

 白い病室で目を覚ましたまことは、記憶を失っていることに気づきます。手荷物を届けに来た警官や担当の医師と話しているうち、くわえタバコや不倫がよくないということはわかるけど、自分が誰だかわからない。こんなのって映画やドラマみたいだなということはわかるけど、人間関係は全部忘れているという状況を認識し、とりあえず荷物を確認することに。

 スマホは壊れてLINEは見られない。財布からは割引券やエステの会員証が出てくる。そしてカバンの奥には、小さな箱に入った男性サイズの指輪……。どうやら自分にはこの指輪をプレゼントする予定だった男がいる。たぶん、それは彼氏だろう。

 その指輪がシンデレラフィットする相手を探そうと思ったら、現れるイケメン3人みんながピッタリで、いったい「誰が私と恋をした?」そんなお話です。

 2011年に公開された『指輪をはめたい』という山田孝之主演の映画がありました。頭を打って記憶を失った主人公が手元に指輪を見つけ、その指輪を贈るはずだった女性を探すことに。すると主人公の目の前にタイプの違う3人の女性が現れるという、要するに今回の『くるり』はこれの男女が逆になったパターンなわけですが、あんまり売れなかったので覚えてる人は少ないでしょうね。ヒロインは小西真奈美、真木よう子、池脇千鶴という超豪華メンバーだったのですが。

 ともあれ、『くるり』を振り返りましょう。

■ここはどこ、私は誰で、どんなキャラ?

 記憶喪失を扱う場合、その主人公がどんな記憶を失ったかが示された次に、「何を思い出したいか」が提示されることになります。『くるり』ではそれを「自分のキャラ」というものに求めるわけですが、まことはこの「自分のキャラ」をひとつずつ発見していくたびに、ゲンナリしていくことになります。

 家に帰ったら、部屋はめちゃくちゃに殺風景で物がない。クローゼットの中は地味で無難な服と、クソダサの寝巻きしかない。やっとログインできたインスタに並ぶのはどこにでもあるカフェごはんの写真ばかり。

 会社に行ってみたら、同僚との人間関係もペラペラで、誰も「自分のキャラ」をちゃんと認識してくれていなかった。なんだ、私ってつまんない女だったのね。そこでまことは、記憶を失って初めて涙ぐむことになります。

 記憶喪失というと大仰な悲劇を思い浮かべてしまいますが、『くるり』ではそれを「ふと気づいたら」くらいの感覚で描いています。ふと気づいたら、私って地味な服しか持ってなくない? ふと気づいたら、私ってホントの友達いたっけ? ふと気づいたら、何が楽しくて生きてたんだっけ? そんなことにふと気づくと何もかも全部リセットしたくなる願望って誰にでも起こりえるものだと思うけど、そのリセットが強制的にかかった状況としての記憶喪失なんです。このドラマにおける記憶喪失は、まことにとって、むしろ生まれ変わるチャンスにも見える。

 そう見えるのは、おぼろげにわかってきた過去の自分に対して、まことがちゃんと腹を立てているからです。人間関係を適当に流してきたこと、好きな服を着ないで目立たないようにしていたこと、つまりは「しょうもない女」だった自分が許せなくなっている。

 まことは別に忘れてしまった記憶を取り戻したいとは思っていない。結果として「しょうもない女」としての自分を作り上げてしまった過去を、うっすら恨んでもいそうだ。

 だから、このドラマは記憶喪失という重いテーマを扱いながら、悲劇や奇跡の匂いが一切しない。ポジティブに見える。自己の再発見をマジメに描こうとしているというのは、そういうところです。

■男たちも、恋愛対象というよりは

 指輪がぴったり合う男を探し出すという一見ロマンチックな設定で目くらましをしていますが、過去に関係性があった男たちも、あくまでまことの「自己の再発見」を補足する人物として登場します。

 同期の営業マン・朝日(神尾楓珠)はイイヤツですが、かわいい服を着て出社し、自分の考えをはっきり口にするまことに対して「らしくない」と言い放ちます。「過去のまことがかわいそうだ」と。

 元カレの花屋さん・公太郎(瀬戸康史)は、勢いで会社を辞めちゃったまことに「らしいじゃん」と言ってくれました。それは記憶を失ったまことにとって、何より救われる言葉でした。

 会社の同僚の男と元カレとでは、当然、見せてきた顔も違うはずです。大人として生きていくということは、仕事での顔、プライベートでの密な人間関係を構築していくための顔、それぞれの顔を獲得していくことにほかなりません。

 それをイチから考えてやり直せるって、やっぱりチャンスだし、ちょっと羨ましい状況だよなぁと思えたので、とりあえずコメディとしては好スタートかと思われます。

 あと、みなさんおっしゃる通り、めるる芝居すごいうまいと思いました。顔芝居、期待です。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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最終更新:2024/04/10 14:00
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