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春の甲子園センバツ開幕も観客席はガラガラ…高校野球で広がる甲子園の“春夏格差”

春の甲子園センバツ開幕も観客席はガラガラ…高校野球で広がる甲子園の春夏格差の画像1
(写真/Getty Imagesより)

 現在、開催中の選抜高校野球大会、通称「センバツ」で、ちょっとした異変が起きている。全国から集まった32校が頂点を目指す戦いの様子はNHKで完全中継されているが、グラウンド上の熱気とは対照的に、前半戦は空席が非常に目立った。ネットでも、

「明らかに例年よりお客さんが少ない」
「センバツみたら、席がガラガラすぎてびびった」
「甲子園まじでガラガラやな」

といった声が登場しているが、コロナ禍を経て、世間は高校野球に興味を失ってしまったのか?

「まず、今年はとにかく気温が低いですね。今大会は18日に開幕しましたが、“春のセンバツ”という呼び名とは対照的に、気温はほぼ冬並み。冷え込みが厳しく、大会4日目には雪がチラつく場面もありました。目玉となるスター選手が見当たらないのも、不入りの一因でしょう。松坂大輔、田中将大、斎藤佑樹、清宮幸太郎など、甲子園には定期的にスターが現れますが、今大会は正直に言って投打ともに小粒。昨年夏の大会を制した慶應高校も出場を逃し、話題性に乏しいのは否めません。追い打ちをかけているのが、入場券の販売方法の変更です。数年前から入場券は全席指定で、基本的に前売りとなり、すべて1日通し券ですが、再入場はできず、途中で帰っても再販売は行われないので、第1試合や第4試合は空席が目立ちます。また、チケット代は2019年以降に2度値上げし、一部の席は以前の2倍以上になりました。外野席は無料でしたが、現在は700円(一般、税込)。これも観客減の大きな理由となっています」(週刊誌スポーツ担当記者)

 大会前半はまだ春休みに入っておらず、平日だったことも大きいが、満員御礼を連発する夏の大会との差は明らか。天候や時期に加え、センバツには構造的な問題もある。

「センバツが盛り上がらない大きな理由が、出場校選出の不明瞭さです。基本的には秋の地方大会の上位チームが選ばれる仕組みですが、時に不可解な選考があるのが大きな問題点。2022年には地方大会で準優勝したチームが落選してベスト4のチームが選ばれたため、大騒動になりました。また、センバツ特有の“21世紀枠”も、常に議論の対象になっています。これは、一定の成績を残したチームに対し、地域性、マナー、文武両道などを考慮して選出するものですが、スポーツの大会で、スポーツ以外の点を評価するのはどうなのかといった批判は絶えません。21世紀枠で選ばれた学校が不祥事で出場を辞退したこともありました。地域ごとの枠の数も、モメるネタになっています。東北と東海は長らく枠が2つしかなく、地元からはずっと不満の声が上がっていましたが、今大会から共に『3』に。その代わり、これまで『5』だった中国・四国が『4』になり、その地区の球児は泣くことになりました」(同上)

 夏の甲子園はトーナメント方式の一発勝負。そちらの方が盛り上がるのは、時期の問題だけでなく、システムにあるようにも思われる。さらに、こんな指摘もある。

「主催社の体力の問題もあるでしょう。高校野球の主催は春が毎日新聞で、夏が朝日新聞。新聞各社はどこも猛烈なペースで部数が落ちていて、それは毎日も朝日も同じですが、とりわけ毎日は経営が厳しく、単独での生き残りは無理という声さえある。そんななか、朝日は高校野球を生き残りのための大事な販促ツールと捉え、高校野球関連の記事を1年中、熱心に取り上げています。イベントが盛り上がるかどうかは、やはり事前の煽りがとても大事。夏の甲子園と春のセンバツでは、宣伝や告知に大きな差があり、それが盛り上がりにダイレクトに影響しているのは紛れもない事実でしょう」(マネー誌記者)

“憧れの舞台に立ってみたら、意外と客席がガラガラで……”という球児のため息が聞こえてきそうだが、見守る大人たちはその状況を変えられるだろうか。

石井洋男(スポーツライター)

1974年生まれ、東京都出身。10年近いサラリーマン生活を経て、ライターに転身。野球、サッカー、ラグビー、相撲、陸上、水泳、ボクシング、自転車ロードレース、競馬・競輪・ボートレースなど、幅広くスポーツを愛する。趣味は登山、将棋、麻雀。

いしいひろお

最終更新:2024/03/30 14:00
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