くりぃむしちゅー『ベタドラマ』18年ぶり復活へ “トレンディ”なき時代のベタとは
#くりぃむしちゅー
あの「ベタドラマ」企画が帰ってくる。
2005年~06年に放送されていた『くりぃむしちゅーのたりらリラ~ン』(日本テレビ系)内で放送されていた「クイズ ベタドラマ」が4月3日、特番『くりぃむしちゅーのベタドラマ』(同)として放送されることが発表された。
「クイズ ベタドラマ」は、番組内でテレビドラマの王道シーンばかりを集めた映像を作成し、スタジオで“ベタな展開”を予想するクイズ企画。ドラマあるあるが詰め込まれた映像が評判を呼び、後継番組を含めて20作以上の「ベタドラマ」が公開されている。
総合演出の上利竜太氏は「あれから18年…。当時番組を見ていただいていた方も、全くご存知ない方も、老若男女誰もが笑えて泣ける究極の共通言語“ベタの世界”をぜひお楽しみください!」「主人公はベタ男とベタ子。今回は『恋愛ドラマ編』です!彼らに待ち受けるベタすぎる結末とは」とコメントを寄せている。
この「ベタドラマ」企画は昨年TVerで独占配信された『神回だけ見せます!』でも2度にわたって取り上げられるなど、放送から18年がたった今でもたびたび話題に上がるほど業界内外を問わずファンが多く、今回の復活にはネット上でも歓迎の声が上がっている。
果たして今回の「ベタドラマ」は、どんな映像になるのだろうか。
当時の「ベタドラマ」は、基本的には「ちょっと懐かしいドラマ」のパロディとして制作されていた。第1作は『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)を元ネタにした『東京ベタストーリー』。そのほか、『GTO』(同)を元ネタにした『GTV』や、『ラブジェネレーション』(同)を元ネタにした『ベタジェネレーション』などが作られたが、いずれも『たりらリ』から10年程度さかのぼった90年代に放送されていた超人気ドラマを原典としている。
90年代といえば、まさにトレンディドラマ全盛期。視聴率30%を超える作品が乱立し、日本中のお茶の間がドラマのワンシーンやセリフを共有していた時代である。元ネタが広く知られているからこそ、「ベタドラマ」企画はパロディとしての輝きを放っていたともいえる。
ひるがえって、現在のドラマシーンを眺めてみれば、視聴率10%を取れば御の字という状況。かつては国民的ドラマが連発されたフジテレビの月曜21時「月9枠」も、ここ3クールは5%台に低迷し、令和に入って6年、視聴率が20%を超えたのはTBS日曜劇場の『半沢直樹』『テセウスの船』『VIVANT』の3作のみ。いわゆる“国民的ドラマ”が存在しなくなって久しい状況である。
今回の「ベタドラマ」は『恋愛ドラマ編』だというが、ここ最近でヒットした恋愛ドラマといえば20年に放送されて上白石萌音をブレークさせた『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)くらいのものだ。
さらに、ドラマを取り巻く状況も大きく変化している。例えば前出の『神回だけ見せます!』の中で紹介されているベタドラマ『ベタな片想い』の中で、ヒロインの遠藤久美子が「メガネを外したほうがかわいい」と言われる胸キュンなシーンがあるが、現在においてはルッキズムだ価値観の押し付けだとSNSが炎上しそうな演出も少なからず見られた。
ここ10年ほど、ドラマの世界で「ベタな恋愛」はほとんど描かれていない。そんな中で、「ベタドラマ」がどんな「ベタ」を抽出するのか。それは、今の社会がどんな情報を共有しているのかを図る試験紙になりえるのかもしれない。
(文=新越谷ノリヲ)
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