『不適切にもほどがある!』第8話 この期に及んで小泉今日子というガッカリ感
#不適切にもほどがある!
15日放送のTBS金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』は第8話。
始まったころは、話題性優先でキャッチーな令和の社会問題を取り扱ったり、そのわりにさまざまな問題に対する理解の浅さ、不真面目な取り組み方にイライラされられた同作ですが、ここ数話は本来、脚本家がやりたかったであろう「クドカンなりのタイムスリップドラマへの再解釈」に比重が置かれつつあって、けっこう期待していたのでした。
期待していたのですけど、今回は逆戻りしてしまいましたねえ。振り返りましょう。
■リアルな愚痴をドラマ化なんだって
ちょっと前のテレビ朝日の『妄想ハナコ』という深夜バラエティで、ハナコの秋山寛貴が「バイトしたい」みたいなことを言ってたんです。昔はいろいろなバイトをして、そこでの出来事をネタに落とし込んでいたけれど、テレビに出るようになって、世界が狭くなった。気が付いたらテレビの裏方さんが出てくるコントばかり書いている。一般のお客さんと自分たちのコントが関係なくなっていくことに対する、それは秋山にとっての恐怖でしょう。
一方で、14日に配信されたスポニチの「既読スルーに働き方改革…『ふてほど』令和への問題提起、どう生まれた?磯山P語る『私のリアルな愚痴』」という記事で、この作品のプロデューサーである磯山晶氏がこんな話をしていました。
「宮藤さんとの打ち合わせの合間や前後に話す、ちょっとした雑談や、モヤモヤしたことなどを言い合っている中によく出てきたことを、順番に取り上げている」
「私はリアルな愚痴を言っているだけなのですが、宮藤さんの汲み取り方が深い」
ああ、と思ったんです。ああ、この期に及んでまだそっちの話なんだ。プロデューサーとしてこの記事が出るタイミングはコントロールしているはずで、物語が佳境に入って、切なくも過酷な親子の運命をめぐるタイムスリップ譚が盛り上がってきたところで、まだそんな“話題性”の話をしているんだ。
しかもこの人、「汲み取り方が深い」と思ってんだ。このドラマに登場したインティマシーコーディネーターのエピソードにしても、過去にヒット作を飛ばしながら沖縄に隠居していた人気シナリオライターにしても、一般の視聴者には関係のない世界の住人です。そういう世間と関係のない対象に対する自分の愚痴を、旧知の人気脚本家にドラマにしてもらって悦に入ってるんだ。
これまで、令和の社会に問題提起するわりに認識が古い、理解が浅いという論調のレビューを書いてきましたが、クドカンの認識の問題じゃなかったんですね。この程度の甘ったるい刃で世情を斬っとくのが、磯山さんの認識に対してちょうどよかったんだということです。ダッセェ話です。
■そんなわけで、不倫とキャンセルカルチャー
今回は人気男性アナウンサーが不倫一発でテレビに出られなくなっちゃって、オガワ(阿部サダヲ)がアナウンサーをいつまでたっても許さない世間や、それを不必要に拡散するこたつ記事メディア、慎重になりすぎる局の上層部あたりに「許してやれよ、寛容になれよ」という話です。
「最近は、不倫一発でアウトだもんねえ」とか、打ち合わせで愚痴ってたんでしょうか。「まったくネットニュースってクソくだらないよね」「バズればなんでもいいのよ、あいつらは」とか。
そんで、その通りの脚本をクドカンに書かせて、満足してるわけだ。大切な連ドラの終盤の1回を使って、そんなことをしてる。実にもったいない。
描かれた不倫についての景色も、不適切な行為をするのはいつも男性で、それを許す女性と許さない女性が登場するというステレオタイプの構図でした。ベッキーや矢口真里が「たった一度の過ち」でメディアにどんな目に遭わされたか、忘れてるのでしょうか。
しかも、不倫アナをテレビに出す出さないなんて局側の判断でしかないのに、まるで自分たちを心ない世間の批判にさらされる被害者みたいな立場において、メディアや視聴者を揶揄しています。
この作品に通底した、こうした社会批判における視点のアンバランス。ずっと気持ち悪いなぁと感じていたのですが、なるほど特権階級にあぐらをかいたババアの愚痴の具現化だったのかと思ったら、腑に落ちた思いです。
(一部、不適切な表現がありましたことを謹んでお詫び申し上げます)
で、八嶋智人の妻が話題になったから引っ張り出しちゃおう、キョンキョンがツモれたから出しちゃおうという、明らかにネットニュース狙いの臆面のなさ。
せっかくおもしろくなってきたのにさ。
「バズればなんでもいいのよ、あいつらは」
って、思っちゃうよ、こっちは。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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