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日刊サイゾー トップ > エンタメ > お笑い  > 『R-1グランプリ』全ネタレビュー【前編】

『R-1グランプリ』王者に街裏ぴんく! 全ネタレビューで振り返る【前編】

R-1グランプリ(TVer)より

 9日に行われたピン芸人日本一決定戦『R-1グランプリ2024』(フジテレビ系)は、漫談一筋20年の街裏ぴんくが優勝。賞金500万円を手にした。

 1人で4分、笑わせた人が勝ち。それ以外になんのルールも存在しないストイックな大会だが、終わってみれば、なんだかあっという間だった。いろんなネタが見られて楽しかった。そういう感じである。

 全ネタ振り返りましょう。

■真輝志「学園ドラマ」

 コントでも漫談でも、何をやってもいい『R-1』だけに、番組全体に及ぼすトップバッターの役割は『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)や『キングオブコント』(TBS系)より大きいのが『R-1』である。始まるまでは、なんとなく「『R-1』って、どんな感じだっけ」と毎年思っているし、トップの印象が後を引きやすい大会でもある。

 その意味で、真輝志のトップのネタはわかりやすさ、風景の見えやすさの面で大会に貢献したと思う。仕掛けとしては、学園ドラマの冴えない主人公が定番のナレーションボケにツッコんでいくという、陣内智則のナレ版といった構造だが、爽やかなルックスと大阪弁ツッコミのギャップを見せたツカミは成功していたし、ナカモリさんで展開を作ってオチまできれいにまとめたところも好感が持てるネタだった。

 あとは、何をやろうとしているか理解させた後のメインディッシュである「軟式ラグビー」というモチーフ選びがそのままネタの爆発力になるわけだが、その「軟式ラグビー」という単語が、設定の見えやすさのわりに見えずらいものだったように感じた。「軟式ラグビー」がワードとしておもしろいのか、そのスポーツを想像したうえで風景がおもしろいのか、どちらかに振り切れていればもっと爆発したと思うけど、その中間だったような感じ。

 あと、細かいことを言えば最初の野球のボールを拾うシーンのマイム、この時点では「自らの才能に気づいていない天才野球少年」なわけなので、もうちょい丁寧でもよかったような。もうちょい大きいよね、野球のボール。

 ともあれ、真輝志のトップはよかったと思う。お抹茶だったら大変ですよ。

■ルシファー吉岡「お見合いパーティー」

「1分くらいで女性が交替する」というシステムを最初に明かしたのがすごい。これは1分くらいで次の展開に行きますよという宣言なので、少なくとも「飽きなそう」という期待が持てる構成になっている。

 しかも、1人目で説明される情報がものすごく多い。まず婚活パーティーにルシファーが来たら「モテないよね」はルックスだけで説明されているとして、この人が毎回自分の「戦原(そよぎはら)」という名前をツカミに使っていること、段取りを知り尽くしているくらいパーティー常連であること、相手に合わせてパーティーの進行を教えてあげるくらい生真面目であることが説明されてしまう。当然、その状況にストレスを感じていることもだ。

 2人目で同じことになりつつ、ちょっとイラだちを見せつつ「225です、ボウリングのベストスコア」と挟み込むことで、この人が以前のパーティーでは進行の説明に終始して何もできなかったことを後悔しており、今回こそは欲張っちゃおうと決意してきたことも情報として追加される。

 その後も感情のエスカレートによるがあって、「戦原」の名前とハゲをイジってくる伏線の回収をしつつ機嫌がよくなる緩和がある。緩和の中に、たとえそれがハゲイジリであっても、普通に楽しく会話してくれる女性が現れただけで満足してしまうという悲哀もある。

 4分の1人コントとして、完成形を見せられた感じ。強い。

(文=新越谷ノリヲ/中編に続く

 

 

新越谷ノリヲ(ライター)

東武伊勢崎線新越谷駅周辺をこよなく愛する中年ライター。お笑い、ドラマ、ボクシングなど。現在は23区内在住。

n.shinkoshigaya@gmail.com

最終更新:2024/03/11 09:59
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