「ドッキリ」を更新していくYouTube「高野さんを怒らせたい。」の革新性
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2日に更新されたYouTube「高野さんを怒らせたい。」の最新作が、公開24時間で20万再生を超えるスマッシュヒットとなっている。
「高野さんを怒らせたい。」は、お笑いコンビ・きしたかのの高野正成にドッキリをかけるチャンネル。ブチ切れキャラで売り出し中の高野に「何をしても怒らない男」と定義付け、怒らせるために制作側が知恵を絞って新たなドッキリを開発していく企画である。
2020年6月に公開された「【ドッキリ】映画の字幕がずっと天気の話で怒らせたい。【きしたかの】」では、高野に名作映画『ローマの休日』の日本語字幕をすべて天気の話に差し替えた映像を見せて怒らせようとした回は業界内外で評判を呼び、今日までに206万回再生を記録している。
「きしたかののYouTubeが面白い」
そんな話がささやかれ始めたのも、この『ローマの休日』がきっかけだった。
「高野さんを怒らせたい。」で高野に仕掛けられるドッキリの特色といえば、なんといっても企画の革新性と周到な準備だ。特に、高野が現在の妻であるお笑いコンビ・ゆめまなこのまるゆかとの交際を明かしてからというもの、まるゆかを巻き込んだ企画で高野の自尊心を丸ごと粉砕するかのような企画を連発している。それでも、高野のキャラクターのおかげで、どんなひどいことをしてもコンプライアンスに触れていないような雰囲気があるのが同チャンネル強みである。
例えば、高野が30時間かけて1,000ピースのジグソーパズルを完成させたら、その絵柄が知らない男とまるゆかがイチャついている写真だったり、マジックミラー号の中に閉じ込められた高野の目の前で、車外のまるゆかが知らない男とイチャつきはじめたり、高野にカラオケを歌わせて、サビが来たところでカラオケ映像の中でまるゆかと高野の相方・岸大将とイチャつき始めたりといった具合である。
今回の動画は、そんな同チャンネルの企画力と周到な準備、そしてまるゆかの協力体制が見事にかみ合ったドッキリとなっている。
タイトルは「クイズを解けば解くほど不幸になって怒らせたい。」というもの。
ある一室に呼び出された高野は当然のように何も知らないままカメラ前のイスに座らされ、クイズを出題されることになる。回答者である高野が出題者に質問し、「はい」「いいえ」「関係ありません」という3つのワードで答えていく。その質問を繰り返しながら正解を導き出していく、いわゆる「水平思考クイズ」に4問正解したら、高野に3万円のAmazonギフト券が進呈されるというものだ。
当然「高野さんを怒らせたい。」であるからして、普通のクイズではなくドッキリである。だが、このドッキリが見たことのないスタイルのものだったのだ。
第1問は「ある男は健康のために不健康な生活を送った。一体なぜ?」というもの。この曖昧模糊とした出題に対し、高野が質問を繰り返していく。
「その男は運動をしましたか?」
「いいえ」
「薬を飲みましたか?」
「いいえ」
やがて質問を繰り返すうちに、高野の表情が変わり始める。これはドッキリであると同時にサスペンスでもあったのだ。
映画『セブン』(95)のラストシーンを思い出す。荒野に佇んだブラッド・ピットは、目の前にある箱の中身が“何”であるかを悟り、絶望のドン底に叩き落される。そして、自我を失ってしまう。高野が、あのときのブラッド・ピットに見えてくる。そんなドッキリである。
出題は4問。約40分の動画は、クライマックスでタイトルに帰結していく。
先月放送の『水曜日のダウンタウン』(TBS系)で発表された「2023年ドッキリにかけられた芸能人ランキング」で、高野はザ・マミィ酒井貴士に次ぐ2位に入っている。
きしたかの・高野をドッキリにかけると面白いなんてことは、誰も知らなかった。YouTubeでドッキリ企画を繰り返し公開し、高野をテレビの世界に売り込んだのは間違いなくこのYouTubeチャンネルである。コンビの戦略は、完璧な形で実を結ぼうとしている。
今回の「高野さんを怒らせたい。」は5カ月ぶりの更新である。多忙になったきしたかのに、もうかつてのように頻繁にドッキリをかけることはできない。だが、今回のような「すごいものを見た」という感覚はそう簡単に忘れられるものではない。そしてまた忘れかけたころに、「高野さんを怒らせたい。」は「すごいもの」を出してくるに違いない。
(文=新越谷ノリヲ)
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