独自の進化を遂げる漫才師・カミナリ 「巨匠」デビッド・ワイズをライブに招聘へ
#カミナリ
先月29日、お笑いコンビ・カミナリのYouTube「カミナリの記録映像」で「【来日】ゲストがデビッドワイズのカミナリの記録ライヴ開催決定!【ドンキーコング】」という動画が公開された。
この中でカミナリは、同チャンネル企画としては4回目となる「記録ライヴ」の開催を発表。キャパ1,500人の東京国際フォーラム ホールCを使用し、ゲストにはデビッド・ワイズが招聘されるという。
デビッド・ワイズといえば『ドンキーコング』などで知られるゲーム音楽界の巨匠中の巨匠だが、このライヴ出演に至る経緯は実にドラマチックなものだ。
一昨年の12月、カミナリは「まなぶの呪いを解く」という、よくわからない理由でスーパーファミコン版『スーパードンキーコング』のプレイ動画を公開。無事、呪いを解くことに成功した。
その直後、たくみは「久しぶりに『ドンキーコング』をやったらBGMがよかった」と言い出し、BGMだけを聞くという地味な企画に着手。ピンとこないまなぶに対し、「バチクソカッケェ曲がある」と言い、その曲がすべてデビッド・ワイズという作曲家の手によるものだったと明かす。
『スーパードンキーコング』では数曲の担当だったワイズは、続く『スーパードンキーコング2』では全BGMを担当。サントラ盤はプレミア化しており、この曲を聞くためにゲームをプレイする動画を公開した。
このあたりから、たくみのワイズ愛は加速していく。小学校のときに何気なく耳に入っていたゲームのBGMが、大人になって多くの音楽を吸収してきたことで、聞こえ方が変わっているのだ。
その後、何度もワイズ企画をこすり続けたカミナリは昨年3月には「デビッド・ワイズを聞くライヴ」を開催。ファンととも数々の名曲を堪能した。
さらに企画はエスカレートしていく。5月には、カミナリはワイズに会うために渡英。アポなしでノッティンガムの片田舎にあるワイズの自宅に押し掛けることになる。
ここで、カミナリは奇跡を起こした。
自宅には不在だったワイズを路地で偶然見つけ、そのまま近所のカフェでのインタビューを実現させてしまったのだ。
その後もカミナリはワイズとSNS上でやり取りを続け、今回のオファーに至ったのだという。
「俺が、カッケェと思った曲、全部デビッド・ワイズって人が作った曲だったの」
たくみがそれに気づいてから、まだ1年と少しである。渡英も、ワイズの招聘も、採算面で見ればおそらくは大赤字だろう。カミナリYouTubeの登録者は13.4万人。決して莫大な利益を生むような数字ではない。
16年の『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)をきっかけにテレビスターへの飛躍を果たしたカミナリ。翌年にはブレイクタレントランキング(ニホンモニター調べ)で1位を獲得し、生活に困ることはなくなった。
2年後には「第7世代ブーム」が起こり、若手芸人に脚光が当たることに。時代の風が後押しする状況になったが、カミナリは「第7世代」と名の付くオファーをすべて断っている。霜降り明星、ハナコ、コロコロチキチキペッパーズらと同期であるにもかかわらずだ。
結果的にこの判断は、カミナリに独自のブランディングを与えた。NHK関連や地元行政の仕事を次々に獲得し、その地位を確かなものにしていく。素朴さ、清潔感、知性、テレビタレントとしてのカミナリは、そのイメージを武器に売れ続けている。
そして、その稼ぎをYouTubeで「好きなこと」にすべてつぎ込む。マニアックなゲーム企画だけでなく、テレビでは毛頭できないド下ネタもカミナリYouTubeの魅力だ。
これはこれで、芸人とYouTubeの幸せな関係だと感じるニュースだった。
(文=新越谷ノリヲ)
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