『不適切にもほどがある!』第5話 全然真摯じゃないメッセージとドラマのギャップ
#不適切にもほどがある!
23日放送のTBS金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』は第5話でした。
前回までは、説教パートが雑だし言ってることは全然アプデされてないし、クドカンはタイムスリップやりたいだけで“昭和の価値観で令和を撃つ”みたいなことは全然やりたくないのでは? と書いてきましたが、今回は一転、概ねやりたいことだけやってる感じでした。ただ単に、おもしろいだけの話。
このドラマに社会派なホニャララを求めている諸兄には明らかな中だるみ回でしょうけれど、こっちのほうが見てられるなぁと思います。やっぱり、すごく窮屈な感じだったんですよね、テーマ性とか社会的なメッセージみたいなものが。振り返りましょう。
■それでも是非は問う
今回、ドラマが是非を問うたのはテレビ局側が演者の動向をGPSで追うことでした。こんなご時世なので、タレントのプライベートも管理したい。そんなの通る話じゃないのは当然ですが、ドラマは「マネジャーと本人の許可も取ってる」と言います。「許可も取ってる」と言っちゃえば、視聴者は飲み込むしかない。そういう雑な段取りで、雑な問いかけが行われました。
プロデューサーになった渚さん(仲里依紗)は、八嶋智人(本人)が不倫していて、変態プレイをしていると決めつけています。これも、えらい唐突な話でした。土曜午後の生放送のあと、八嶋は自宅と逆方向にタクシーを走らせている。これをGPSで追うと、どうやらスカイツリーの周辺でジョギングをしているようだ。エナジードリンクを飲んで、スクワットもしている。
現場にディレクターを飛ばして八嶋を隠し撮りしたところ、ラブホテルの前でたたずんでいる写真が撮れた。
だが、実際には八嶋はホテルに出入りしていたのではなく、その隣のけん玉カフェでけん玉の特訓をしていた。
何それ。ラブホの前にいる八嶋は確認したのに、けん玉カフェに入るところは見てないの?
もうほんとにこの場面は、「令和に何か言え」という制作側のオーダーをこなすだけの処理の時間です。GPSで演者を追わせることの是非なんてまったく考えるつもりもない、視聴者に考えさせるつもりもない、手抜きの時間です。
ただただ、脚本家と制作側が一枚岩じゃない感じがめちゃくちゃ伝わってきて気持ち悪いんだよな、こういうの。確かに時代のギャップを描くことで大きな話題になっているドラマではあるけれど、前回のインティマシーコーディネーターのエピソードなんかで全然その姿勢が真摯じゃないこともバレ始めてるし、そもそものコンセプトがドラマのノイズになり始めている。
■ギャップは阿部サダヲの中にあればいい
一方で、タイムスリップドラマとしては盛り上がってきたと思います。渚さんがオガワ(阿部サダヲ)の孫だったことが判明したり、古田新太がかつては錦戸亮だったことが判明したり、楽しい要素がたくさんありました。
そしてオガワと娘の純子(河合優実)が阪神・淡路大震災で亡くなっていることが明らかになり、令和のオガワには「すでに死んでいる人」という厚みが加わることになった。
自分がすでに死んでいることを悟ったサダヲの芝居。キャラクターとしての振り幅。おちゃらけとマジのギャップ。こういうことを、クドカンはやりたいんだと思うんです。お話に乗せて、役者の感情を振り回す。それによって、役者の中に人間が宿る。サダヲの中にオガワという人間が宿っていく。結局のところお芝居を見る楽しさというのはそういうところだし、物語は役者に人間を宿すためにあるという、今回の『不適切』はそんな風に見えました。
だからこそ、やっぱりコンセプトと脚本の間にあるギャップが、いかにも居心地が悪い。どうにかなんないかな。無理かな。テレビだもんな。そんな感じです。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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