泥沼化する「セクシー田中さん」騒動と漫画家がキレる「編集者の方が稼ぎが多い」問題
#セクシー田中さん
ドラマ『セクシー田中さん』(日本テレビ系)の原作者・芦原妃名子さんが急逝した問題が、一向に収まる気配がない。当初は沈黙を貫いた発行元の小学館は2月8日、「芦原妃名子先生のご逝去に際して」という声明を発表。その内容は、検証作業や再発防止に努めるというものだったが、複数の人気漫画家からの小学館批判は止まず、不買運動も発生している。
「批判の急先鋒になっているのは、『快感フレーズ』『覇王愛人』(ともに小学館)などのヒット作で知られる新條まゆ氏です。新條氏は過去に小学館とトラブルがあったことを明かし、小学館を舌鋒鋭く批判。他の漫画家からも小学館を告発する発言が次々と飛び出し、芦原さん逝去から半月以上が経過しても、ネット上では大きな議論になっています」(ネットニュース編集者)
小学館は、講談社、集英社、KADOKAWAとともに4大出版社と呼ばれる業界最大手グループの一角。『ドラえもん』や『名探偵コナン』シリーズを代表とするコミック、図鑑、辞典など、子供に親和性が高い出版物が多いが、数々の漫画家が声を上げるほど業界内で“悪名”が轟いているのか。
出版界に長く携わるフリー記者は言う。
「今回の件では、小学館の社風や体質を問題視する発言が次々と飛び出していますが、出版業界全体で見れば小学館は全然マトモな方です。もともと学習雑誌からスタートした歴史があるため、社員は概して、学生時代から優秀でマジメだったようなタイプばかり。尖った企画を持ち込んでも、『それはウチではできません』と言われるのがオチです。
出版業界では、優秀な人材は漏れなく大手に集まっています。大手の方が人気作家と仕事が出来る可能性は高いですし、そもそも中小と大手では給与差が激しすぎるので、優秀な人間が中小で頑張る意味がありません。大手の人間はプライドも高いので、それが気に食わない人間はいくらでもいるでしょう」
“優秀でマジメでプライドが高い”と聞けば印象はあまり良くないが、ビジネスを進める上では、優秀なことは何より大切だ。大手企業の人間のプライドの高さが時に鼻につくのは、あらゆる業界に共通する話。
ただ、漫画家がここまで怒りの声を上げる背景には、出版業界特有の事情があるとビジネス誌記者はいう。
「漫画家からは、今回の件に関して“搾取”という強い言葉も出てきています。一般的に印税は10%で、これは大物も新人も一律。この数字は音楽業界も同じで、低いと感じるかどうかは見解が分かれると思いますが、問題は社員の取り分です。
小学館をはじめとする大手出版社は超高給で知られており、30代前半で年収は1000万円を突破。サラリーマンの生涯年収は2億円超と言われますが、小学館で定年まで勤めれば、生涯年収は4億円を下らないでしょう。
こうなると、かなりの売れっ子にならなければ、書き手よりも出版社の社員の方が稼いでいることになります。スポーツ界でもエンタメ界でも、裏方の支えが大切なのは言うまでもありませんが、プレイヤーより裏方の方が稼いでいる業界はない。これでは漫画家が不信感を抱くのも無理はありません」
今も毎日のように漫画家が声を上げる状況は続いているが、これによって業界の構造に何らかの変化が生まれることはあるのか。
「出版業界は横の繋がりが薄いものの、出版社に楯突いた漫画家の名前はきっちり覚えているもの。漫画家側は『文句を言った相手は小学館だけ』と思っていても、あらゆる出版社の人間は『面倒な人』『次は我々に牙が向く』と考えますから、確実に仕事は減るでしょう。書きたい人間はいくらでもいますし、現状では常にボールを持っているのは出版社です。
また、一部で不買運動も起きているようですが、それも大して意味はありません。出版業界は近年激しい活字離れですが、小学館や講談社はたっぷり不動産を持っていて、そこで収益が生まれている。一時期、TBSが『テレビもやる不動産屋』などと陰口を叩かれましたが、小学館も同じ構図です」(前出・フリー記者)
もはや泥仕合の様相を呈する漫画家vs出版社のバトル。本来なら出版社は作家の絶対的な味方であるべきだが、この怒りの連鎖はどう収束するのか。
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