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日刊サイゾー トップ > エンタメ > お笑い  > 『M-1』2019はなぜ史上最高?【前編】

ミルクボーイが『M-1』王者中の王者に! 「2019年大会」はなぜ“史上最高”と呼ばれるのか【前編】

「最も好きなM-1王者」ベスト10を発表!王者ミルクボーイ、昨年ラストイヤーだったななまがりが余談を語る! | TVer

 14日に放送された『これ余談なんですけど・・・』(ABCテレビ)にミルクボーイとななまがりがゲスト出演。MCのかまいたちとともに、『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)の話題で花を咲かせた。

 ミルクボーイといえば、『M-1』2019年のチャンピオン。「この年、初めてテレビで漫才をした」というほどの無名ながら『M-1』史上最高の681点を叩き出してファーストステージを突破。その勢いのまま優勝を果たしている。また、昨年ラストイヤーを準決勝敗退で終えたななまがりは、ミルクボーイと同じ大阪芸術大学「落語研究寄席の会」の出身という縁がある。

 番組では、『M-1』への注目度が高い関西に絞って300人に街頭インタビューとネットアンケートを実施。「いちばん好きなM-1王者」のランキングを発表した。

 その結果、3位のNON STYLE(08年王者)、2位の中川家(01年王者)を抑えて1位に輝いたのは、この日のスタジオゲストであるミルクボーイ。19年に2位のかまいたちを抑えての優勝だった。

「いちばん近くで見てたからな俺らが。これは無理やと思った」(かまいたち・濱家隆一)

 最終決戦でミルクボーイと優勝を争ったかまいたち・濱家もそう語るほどの圧勝だった。

「盛り上がりましたもんね、あの年ね」(ミルクボーイ・内海崇)

「2019年がいちばんよかった。M-1の完成形が2019」(かまいたち・山内健司)

 出場者自身が、自分が出た大会がいちばんよかったと語るのは『M-1』の“あるある”のひとつだが、確かにファンの間でも2019年大会を「史上最高のM-1」に推す声は多い。

 そんな『M-1』2019がどんな大会だったのか、振り返ってみたい。

■ニューヨークが生み出した緊張と緩和

 笑御籤で1番手を引いたのはニューヨーク。大会としては、決して好調なスタートというわけではなかった。ニューヨークらしい毒っ気を含んだ歌ネタだったが点数は伸び悩み、審査員の松本人志はひときわ低い82点をつけている。さらに、ツッコミの屋敷裕政に対して「笑いながらツッコむのが好きじゃない」と具体的なダメ出しをするなど厳しい評価を与えた。

 これに対し屋敷が「最悪や!」と頭を抱えて拗ねるという絶妙な返しで、この日最初の爆発を起こす。

 この松本のダメ出しを聞いた2番手以降の漫才師の心中は察するに余りあるが、一気に高まった緊張感を力ずくで破裂させた屋敷のリアクションは「影のMVP」との呼び声も少なくない。

 この屋敷のムーブによって、『M-1』はネタだけでなく平場にも何かあるという意識が視聴者に刷り込まれたことも大きいだろう。

■かまいたちの最高傑作

 2番手はかまいたち。5位に沈んだ前年の最終決戦で披露する予定だった名作漫才「USJ」。山内はこの年の『M-1』出場を悩んでいたが、濱家の強い意向もあっての挑戦だった。ネタは見事にハマり660点の高得点。松本人志はニューヨークより13点も高い95点を入れている。

 優勝候補の一角だったかまいたちが期待通りの大ウケを取ったことで、スタジオのボルテージが一気に上がる。

■和牛が敗者復活

 この年、かまいたちを凌ぐ優勝候補筆頭に挙げられながら準決勝で敗退していた和牛が順当に敗者復活から勝ち上がって3番手。前年まで4大会連続ファイナル、3年連続準優勝という結果で当時の『M-1』の顔役だった和牛が、かまいたちが爆発した直後に登場するという神がかった出番順だった。抜群の安定感で652点という高得点を獲得して暫定2位に座る。

 やはり和牛かまいたち、実力者2組が上位で挑戦者を待ち受けるという構図が早くも完成する。

■すゑひろがりずのイレギュラー

 完成度の高い王道漫才を2本見せられた直後、今度は見たこともない和装の2人組がファットボーイスリムの出囃子に鼓の音色をシンクロさせて登場してくる。

 物語でいえば「起承転結」の「承」が明らかに始まったという大会の転換点だった。先ほどまでのガチ感から一転、スタジオは一気にお祭りムードに染まる。「面白い」と「楽しい」が立て続けに押し寄せてくる理想的な展開である。

■どうしたえみちゃん

 5番手のからし蓮根のネタ終わり、なぜかいきなり審査員の上沼恵美子が厳しい表情で和牛に苦言を呈し始める。「なんか横柄な感じが『和牛』に対しては感じました」「緊張感もなんにもない、そういうぞんざいなものを感じました」。どうしても『M-1』を勝ち切れず、大会仕様にマイナーチェンジを繰り返してきた和牛にとっては手痛い指摘だったはずだが、いずれにしろ再びスタジオは緊張感に包まれることになる。

 とにかくこの大会は、空気がコロコロと変わるのだ。まるで誰もが停滞を嫌うように、次々に展開が生み出されていく。

(文=新越谷ノリヲ/後編につづく

 

新越谷ノリヲ(ライター)

東武伊勢崎線新越谷駅周辺をこよなく愛する中年ライター。お笑い、ドラマ、ボクシングなど。現在は23区内在住。

n.shinkoshigaya@gmail.com

最終更新:2024/02/15 17:00
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