『君が心をくれたから』第6話 虐待サバイバーと加害者をサプライズで会わせる暴挙
#君が心をくれたから
12日に放送された月9ドラマ『君が心をくれたから』(フジテレビ系)の第6話。永野芽郁さんは今回も麗しかったけど、まあよく泣くね。そんなに泣かないでよ。
ともあれ、雨ちゃん(永野)が「五感を失うことになった」と太陽くん(山田裕貴)に告げたことで、ようやく2人はお付き合いすることになったようです。ちなみに雨ちゃんが五感を失うのは太陽くんの命と引き換えだったわけですが、それはまだ太陽くんは知りません。のん気に雨ちゃんの家で寝泊まりし、朝食を作って「美味くないけど」とか無神経なことを言っちゃいます。味覚ないんやで、あなたの目の前にいる人。
しかし、雨ちゃんは味覚がなくなったことなんてへっちゃらの様子。しょっぱすぎる味噌汁をすすって「私、味覚ないから平気だよ」とニッコリ。鋼の心です。
でも、味覚なくても塩分過多とか体によくないので、そこらへんは太陽くんにケアしてほしいところ。雨ちゃんは将来的には触覚もなくなって痛みを感じなくなったりするので、骨折したまま歩き続けたりしますからね。五感を失う人と暮らすためには、そういう愛情だけでは思い及ばないところまで学習する必要があるわけで、ちゃんと本とか読んでほしいと思いました。
さらに朝食を食べ始めてすぐ、太陽くんの携帯のアラームが鳴って、そのまま仕事へ出かけてしまいます。ドラマでは描かれませんが、雨ちゃんはこのあと一人で、味のしない朝食を食べることになります。生命維持のための単なる作業と化した食事を終えてから、太陽くんの食べ残しをゴミに捨てて、2人分の食器を洗うことになる。これ、今回のドラマでもっとも泣ける場面だと思うんですけど、そういうところは描かれないんですよね。つくづく、ツボが違うわーと感じるシーンです。
というか、味噌汁の味見しなかったり食器をそのままで仕事に出かけちゃったり、ケアどうこうより他人と暮らすの向いてないと思うよ、太陽くん。
■感想が抱きにくい
今回は、おばあちゃん(余貴美子)が、がんで死ぬ話でした。雨ちゃんは子どものころ、おばあちゃんが福引きで当ててきたボイスレコーダーを使って、おばあちゃんと声の交換日記をしていました。ところがある雨の日、「雨を好きになって」というおばあちゃんのメッセージに逆上した雨ちゃんは、そのレコーダーを庭の水たまりに投げ捨ててしまいます。
仕事から帰ってきたおばあちゃんがそれを拾って持ち帰るわけですが、驚くべきことに、この数時間にわたって浸水したボイスレコーダーが壊れてないんですね。IPX8準拠かな。20年前の製品なのに。
と、それはさすがに重箱の隅すぎるイチャモンなのですが、今回の話は感想が抱きにくいんですよね。何しろ、人が死んでるので。
まったく、いい話ではないです。自身の死期を悟ったおばあちゃんは、虐待サバイバーである雨ちゃんと、おばあちゃんの娘であり雨ちゃんのママである虐待加害者を引き合わせます。ママは精神科に入院中ですが、雨ちゃんに内緒で一時退院させています。
虐待被害者である雨ちゃんの同意を取らず、サプライズでママに引き合わせるというのは、いわゆる「セカンド虐待」以外の何物でもないわけですが、おばあちゃんは「自分がもうすぐ死ぬ」という事実がエクスキューズになると思っているようです。あのね、そんなこと関係ねえからな。おまえの都合で勝手に決めていいことではないからな。
そして、実際にママを精神科から連れ出したのは彼氏になったばかりの太陽くんでした。この人、自分の彼女が身体障害者かつ虐待被害者だということにどれだけ理解があるんだろう。ホント、本とか読みなね。
そんな無茶苦茶な状況で、おばあちゃん、ママ、雨ちゃん、太陽くんの4人で家族旅行に出かけることに。もうホントに無茶苦茶なんです。
で、太陽くんの運転でどこかへ向かっていると、雨ちゃんが「海に寄って」と言い出しました。「あ、殺すのかな」と思ったら「ゲームがしたい」と。どうやら私が考えるよりも残酷な方法で殺害する予感がしてきます。
殺しはしなかったけど、残酷な光景でした。雨ちゃんはママを海辺に立たせ、過去を糾弾するのでした。
「恨んでるよ、あんなひどいことされたんだもん! 怒鳴って、殴って、必要ないって言うくらいならどうして私のこと生んだりしたの?」
「だから泣くなって言ってるでしょ! 私のほうがつらいのに、ずっとずっとつらかったのに、泣いて許されようとしないでよ」
「大っ嫌い! 自分勝手で、いい加減で、無責任で、ホント大っ嫌い。最低だよ」
いや、あのね。だからママは入院してんのよ。そういう病気だったから入院してんの。で、20年の加療があって、もうすぐ退院ってところまで来てたの。それをそこの婆さんが勝手に連れ出しただけだし、被害者である雨ちゃんの同意を取らないからこういうことになる。
結果、仲直りしたからいいだろって話じゃないんです。このやり方を美談にすることは社会に対して明らかに有害なんです。被虐待児を同意なしに加害者に会わせちゃダメ。入院加療中の精神科患者に追い込むようなことを言ってはダメ。そういう状況を作っちゃダメなんです。
でもまぁ、婆さんにも自由はあるし、死に際の人間に何かを禁止するのも忍びないですからね。もう死ぬってなったら、できるだけ好きなことをさせてあげたい。それで生き残る人間がどうなろうと、もう死ぬから関係ないしな。
で、結果満足して死んでったみたいなんで、感想が抱きにくいなぁと感じた第6話でした。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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