日曜劇場4月期『アンチヒーロー』“VIVANT方式”の宣伝と“ネタドラマ化”への懸念
#日曜劇場 #VIVANT #アンチヒーロー
4月期のTBS系日曜劇場(日曜夜9時)において、長谷川博己主演の『アンチヒーロー』が放送されることが発表された。長谷川が演じるのは、犯罪者でさえも無罪にするという“アンチヒーロー”な弁護士。発表当初、物語のあらすじ、登場人物、キャストなどは非公表。放送開始までに最小限の情報を少しずつ発信していくスタイルの宣伝方式を採用するという。
「2023年の地上波ドラマのなかで最大の話題作となった『VIVANT』と同様の手法で宣伝していく形です。『VIVANT』では、公表されている情報が少なかったがゆえに、謎が謎を呼び、SNSでは考察が盛り上がりました。今回の『アンチヒーロー』も同じような盛り上がりを期待しているのでしょうね」(テレビ誌ライター)
宣伝方法が『VIVANT』と同じであれば、当然ながら『VIVANT』と比較される可能性も高くなる。その点については、懸念材料もあるという。あるテレビ局関係者はこう話す。
「すでにロケ地に関する情報が漏れ聞こえていますが、町工場、病院、オフィス街など、身近なシチュエーションで撮影されるようですね。長谷川さん演じる弁護士が、いろいろな職業の人物を弁護するという展開もありそうです。いずれにしろ日本の司法組織が舞台となる作品なので、『VIVANT』のように大規模な海外ロケが行われることはなさそう。スケール感という意味では、『VIVANT』に比べてかなりこぢんまりするでしょう。宣伝手法だけで『VIVANT』のような作品を期待されると、“大したことない”と思われてしまう危険性はありますね」
NetflixやAmazonプライムビデオの予算をかけた配信ドラマに押され気味の地上波ドラマののなかで、1話1億円とも言われる異例の予算で制作されたのが『VIVANT』である。広大な砂漠のシーンや派手なカーアクションなども話題となった。
「アクションやミステリーの要素を含む地上波ドラマ、あるいは“スパイモノ”というジャンルの地上波ドラマのなかで、もっとも“配信ドラマに肉薄した”作品が『VIVANT』なのは間違いない。しかし、アクションシーンのクオリティーや、脚本の作り込みにおいては、予算も制作時間も潤沢な配信ドラマには到底及ばなかったというのが、実際の評価です。『VIVANT』ですら“地上波ドラマとしてはスケールが大きかった”というくらいの現実があるなかで、そこを意識した宣伝をするのはリスクが大きい。ただただハードルが高くなってしまうだけになりかねないわけです」(同)
配信ドラマのクオリティーを意識して制作された地上波ドラマは、往々にして“ネタ化”しやすいという傾向もある。
たとえば、日本テレビとHuluが共同制作した、竹内涼真主演のゾンビアクションドラマ『君と世界が終わる日に』。シーズン1が日本テレビで放送され、シーズン2からシーズン4がHuluで配信、さらに『劇場版 君と世界が終わる日に FINAL』が今年1月に劇場公開された同作品だが、各所で酷評されている。
「『君と世界が終わる日に』は、単純にゾンビ描写が甘すぎて見るに堪えないという厳しい声も多い。日本の地上波ドラマのクオリティーの低さを露呈し、ただただツッコミどころを探すような作品になってしまいました。これが地上波の深夜帯のドラマであれば、許されたかもしれませんが、“配信ドラマ”としては落第です」(同)
また、日本テレビ系の櫻井翔主演ドラマ『大病院占拠』(2023年1月放送)とその続編である現在放送中の『新空港占拠』もまた、“ネタドラマ”となっている。
「『占拠』シリーズは、まさにパニックアクションであって、ハリウッド映画や海外の配信ドラマにおける人気ジャンル。そこを大いに意識していることは間違いないのですが、ご都合主義な脚本とあまりお金のかかっていない特殊効果がイジられるばかり。チャレンジしていることは存分に伝わりますが、クオリティーが全然追いついていないんですよね」(同)
TBSにとってもっとも避けるべきは、『アンチヒーロー』が“ネタドラマ”となることである。
「現在の地上波ドラマ枠のなかで、もっともクオリティーが高い作品を輩出しているのが日曜劇場です。TBSとしては、この枠を絶対に守らなければならない。しかも、近年最も成功した『VIVANT』の宣伝手法を踏襲するなら、なおさら『アンチヒーロー』が酷評されるような状況を作ってはいけない。話題性という意味で『VIVANT』を意識するのはいいのですが、内容やクオリティーの面では別だという点をしっかりアピールしていかないと、本当に酷いことになるかもしれないですね。とにかくハードルの上げすぎには注意ですよ」(同)
予算が潤沢ではなくても面白い地上波ドラマは少なくない。『アンチヒーロー』も、そのようなドラマとして世に出されることを期待したい。
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