NON STYLE・石田明と海原ともこ『いたって真剣です』に垣間見た「漫才分析」の功罪
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「漫才の裏側をしゃべりすぎちゃう? と思うねん」
昨年、『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)で初の審査員を務めた海原ともこは、そう言った。
8日放送の『やすとものいたって真剣です』(ABCテレビ)。芸人が話したい芸人を誘ってランチに行く「劇場合間メシ」にカベポスター・永見大吾が登場。誘った相手はNON STYLE・石田明だった。
石田といえば、2008年の『M-1』チャンピオンであり、自他ともに認める理論派の漫才師。毎年、ラジオ『ナインティナインのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)で語られるその年の『M-1』分析は恒例になっているし、現在では吉本興業の養成所であるNSCで講師を務め、後進の指導にもあたっている。
そんな石田だけあって、この日はいわゆる「漫才の裏側」を大いにしゃべっていた。
NON STYLEの漫才について、石田は自身を「100点のボケを量産できるタイプじゃない」と分析する。
「60点、70点のボケをどうやって100点に錯覚させるか。そのための手数やったりするから」
石田によれば、NON STYLEの漫才は「騙しまくって、面白く錯覚させる」ものなのだという。
「観客に考える間をあげないことで、ツッコミのフレーズも単純でよくなる」
近年、霜降り明星や真空ジェシカなど、ボケで観客に謎を残してツッコミのワードで回答を示すスタイルの漫才も少なくない。昨年の『M-1』で最強のパンチラインだった令和ロマンの「吉本には、こういう人がいます」もまさにそうだ。
石田は、相方の井上裕介にはそうしたツッコミは「ハマらへん」と言う。
「声が通る人があれをやると、ウソになるねん。あれは声が通りにくい人が(考えて)、苦肉の策で生まれたやつやねん」
南海キャンディース・山里亮太とフットボールアワー・後藤輝基を例にとって石田はそう語り「井上は声が通るから、それをやらす意味がまったくない」と分析した。
そのほか、石田が漫才中に太ももを叩くようになった経緯や、『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系)の影響、カベポスターとNON STYLEの漫才の違いをツッコミ側の感情の遷移という側面から分析するなど、自らの漫才師としての手の内を包み隠さず披露していた。
また、石田は将来の夢として「漫才を安く観れる世界にしたい」と語る。
「漫才が崇高なものになってて、嫌やねんな。もっと身近なもののような気がすんねん」
そう語った石田のVTR終わりのスタジオで、ともこは冒頭のセリフをつぶやいたのだった。
石田の語る夢に大いに賛同し、「漫才は庶民的なもの」と語るともこだったが、その漫才が「かっこよすぎる」ものになった理由として「裏側をしゃべりすぎちゃう?」と言うのだ。
海原やすよ ともこは、今やNGK(なんばグランド花月)の大看板を背負う漫才師である。一方でNON STYLEは長年にわたって「女子中高生が選ぶ好きなお笑い芸人」といったジャンルのランキングでトップを走り続けている。ともに、コアなお笑いファン以外のライト層にリーチしながら、それぞれの世代で漫才の「大衆化」を担うコンビだ。
その2組がまったく違うアプローチで漫才を考えているというのも、また漫才というジャンルの奥深さを感じさせるエピソードだった。
(文=新越谷ノリヲ)
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