『さよならマエストロ』第4話 ラブコメもいいけど「天才」が見たいのよ
#さよならマエストロ
4日放送の日曜劇場『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』(TBS系)は第4話。毎回クラシックの名曲をモチーフにしている同作品ですが、今回は「セヴィリアの理髪師」。ロッシーニの有名なオペラですね。伯爵の恋を描いた喜劇ですので、今回のドラマも恋の喜劇、要するにラブコメです。
今回は関係性の整理と回収の回になりました。
マエストロ(西島秀俊)がウィーンから日本に帰ってきたのは、そもそも妻の志帆さん(石田ゆり子)が渡仏して家を開けるため、子どもたちの面倒を見てほしいとお願いしたからでした。しかし、実際には同じ町の郊外のアトリエに暮らしていて、娘の響(芦田愛菜)とマエストロである父との関係を改善させるためだった。
志帆さんがどういうつもりで、そんなトリッキーなことをしたのか。ドラマはあっさりと夫婦を面会させ、志帆さんにマエストロのダメ男な部分をしこたま糾弾させた上で、離婚の意思を伝えます。
第1話で投げておいた謎を回収しつつ、志帆さんに離婚の時期は「いろいろ片付いたら」と含みを持たせることで、関係性をひとつ前に進めておく。志帆さんの糾弾と後悔の吐露は、わりとクール後半のクライマックスに持ってきてもいいような重めの性質のものでしたが、4話のラブなコメディの中で処理したということは、もう一段階何か展開があるのでしょう。次回には、いよいよ物語の起点となっている響ちゃんのトラウマについても明かされるようです。
展開が早いな、と思うんです。あ、もう会わせちゃうんだ。それ、もう言っちゃうんだ。と思うことが多い回でした。クールの最初のほうで張っておいた伏線を、伏線のままいつまでももったいぶらない感じは非常に好印象です。
■カリスマ感とか神秘性とか
一方で、色気のない回だったなとも思います。
マエストロが音楽以外はまるでダメなことは今までも語られてきましたが、ことさら音楽の話になると冴える人だった。前回のケンカしてる若い2人の楽団員を客前でタイマン演奏させるところとか、コンダクター志望の女子高生をオケに引き入れたときの理由付けとか、優秀な音楽家ならではのロジックを披露するシーンでのマエストロの振る舞いが、まったく視聴者の想定を超えてくるところにこのドラマ独特のロマンがあったのですが、今回はクライマックスのオケの演奏でもマエストロは自分の恋路ばかりを気にして、指揮に集中していなかった。
いろいろあるけど、音が鳴ったらこうなっちゃう、没頭しちゃうというところに、このマエストロのカリスマ感とか天才という存在の神秘性とかが宿っていたわけですが、そこが演出されなかったんですよね。意図的に排除したのか、演出家の名前も変わってますし方向転換したのかは不明ですが、物足りなく感じた部分です。
まあ要するに第4話はあんまし面白くなかったし、とりわけグッとくる場面もなかったわけですが、人物相関もややこしくなってきたし、いったんこういう回があってもいいかなという感じで。そういえばまだモーツァルトも取り上げられてないですし、チェロの彼にはサリエリ的な匂いも感じますし、お楽しみは後半に、といったところでしょうか。
次回を待ちましょう。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事