絆會若頭の逮捕の波紋…約1200日の逃走中に別の殺人事件にも関与 !?

　仙台市内のアパートの一室で2月1日未明、閃光弾が放たれた。その後、警察が突入し、物々しい雰囲気となったその室内にいたのは、殺人未遂容疑で全国に重要指名手配されていた絆會の若頭、金澤成樹こと金成行容疑者であった。

　事件が起きたのは、2020年9月28日のこと。組員の移籍を巡るトラブルから、長野県宮田村の駐車場で、金澤容疑者は六代目山口組系傘下組織の組長に発砲。そこから3年以上、逃走していたのだった。

 「金澤容疑者といえば、絆會の織田絆誠会長の側近中の側近として知られており、業界内でも強い忠義心などを持つ同容疑者に対する評価は高かった。そんな中で起きた発砲事件は、もともと金澤容疑者自身が率いていた組織の一部が絆會を離脱し、古巣の六代目山口組系へと復帰することになったのが原因でした」（ヤクザ事情に詳しいジャーナリスト）

　つまり金澤容疑者は、自身の配下だった組長が離脱することを食い止めようとしたものの、組長がそれを拒否したことから発砲したと推測されている。

　ただ、このジャーナリストは「金澤容疑者が関与した事件は、これだけではないと囁かれてきた。今後は、その事件の解明が争点になっていくでしょう」とも言うのだ。どういうことだろうか。

 「金澤容疑者は、逃走中に2件の殺人事件に関与しているのではないかと、業界内では囁かれてきたのです。ひとつは22年1月に水戸市で起きた射殺事件。もう一つは、23年4月に神戸市長田区で起きた射殺事件です」

　水戸市の事件とは、六代目山口組三代目一心会系三瓶組の若頭が組事務所に尋ねてきた何者かに射殺された事件で、これの報復と見られる事件が、その4カ月後に三重県伊賀市にある病院の駐車場で起きている。

　神戸市長田区の射殺事件とは、三代目弘道会系組長が何者かによって射殺された事件で、業界内にすぐさま出回った防犯カメラの映像から、金澤容疑者の犯行ではないかと噂されていたのだ。もしもこれが事実ならば、金澤容疑者は逃走中に大胆にも2件の殺人事件を起こしたことになるのだ。

 「水戸も長田の事件も犯人は逮捕されていない。実際のところは、現段階ではもちろんわからない。だが、その可能性も考えられるからこそ、警察も閃光弾を使うという強硬手段に出たのではないか。ただそこから考えても、当局が金澤容疑者の居場所を知ったのは、内通者による密告ではないか。でなければ、突然、閃光弾など使えないだろう。使用するからには、ターゲットを絶対に間違えられない。踏み込んだときには、確実にそこに金澤容疑者がいることをわかっていたのだろう」（業界関係者）

　各報道によれば、逮捕のきっかけは「仙台市内で似た人物を見かけた」とフリーダイヤルに匿名の情報提供があったことだと報じられているが、「たまたまではないだろう」とこの関係者は疑問を呈している。これには、前述のジャーナリストも同じ見解を示す。

 「全国に指名手配書が貼られている逃走中の容疑者が、素顔のままで街中を歩いているとは考えづらい。メガネやマスクしたり、帽子を被ったりするものでしょう。それに、1人でいるところを踏み込まれたのも不自然と言えば不自然」

　事実、過去の例からみても逃走犯の逮捕は、内部からの密告によるものが多いという。逃走犯を匿っている側は、資金面はもちろん、さまざまな面で支援しなければならず負担は大きい。しかも、犯人隠避容疑のリスクも伴う。それが重荷となって、匿名を装って警察へと密告するというのだ。

　むろん、今回のケースがそれに当てはまるのかはわからないが、金澤容疑者を匿っていた人物がいたのは確かだろう。少なくとも警察が踏み込んだ住居となっていたアパートも、他人名義で借りられていたもののはずだ。ジャーナリストが続ける。

 「今後の展開はどうなるかは捜査次第だが、金澤容疑者が口を割るとは考えにくいとも見られている。それほどヤクザ社会では金澤容疑者の評判は高い。それに絆會の織田会長とはいまだに強い信頼関係で結ばれていると言われています。一方で、当局の狙いは、金澤容疑者の逃走中に起きた2件の射殺事件だけに重点を置いているかといえば、そうではないという噂もあります。ある未解決事件にも、金澤容疑者が関わっていたのではないかと捜査関係者や業界関係者は見ているようです」

　果たして、今後どういった展開を見せていくのか金澤容疑者の逮捕に、業界ではさまざまな話が飛び交っているようだ。

（文＝山口問題特別取材班）