『チョコプランナー』で袋叩き……「ネタをやらない」鬼越トマホークの特異なキャリア
#鬼越トマホーク
チョコレートプラネットがMCを務める『チョコプランナー』31日深夜放送分は、「東京吉本新年会」と題したトーク企画。囲碁将棋、ネルソンズ、横澤夏子、コットン、シシガシラ、鬼越トマホークをゲストに迎え、現在の東京吉本が抱える問題について話し合った。
その中で、鬼越トマホークが集中砲火を浴びる場面があった。発端は、鬼越の金ちゃんがコットンに対し「コアなファンがいない」「(昨年コットンが不出場だった)M-1も出たほうがいい」と苦言を呈したこと。
それに対しコットン・西村真二が「あんたたちもテレビとYouTubeしかやってないでしょ」と言い返すと、きょんもそれに同調。鬼越が寄席出番でもネタを途中で降り、2人でキスをしてお茶を濁していることを指摘した。
すると、横澤が「クソつまんないやつね」と加勢し、ネルソンズ・和田まんじゅうも「ネタ頑張ってないのに『THE W』のアンバサダーやってる」「キングオブコントのCMにも出てる」と付け加えた。
スタジオは鬼越に対する非難一色という雰囲気であり、鬼越もいわゆる“負け顔”を見せてリアクションしていたが、まんじゅうの指摘はよく考えれば悪口でもなんでもない。鬼越のタレントパワーを証明するエピソードである。
昨年の『キングオブコント』(TBS系)の放送中に鬼越トマホークが出演するCMが流れたのは、ある意味で皮肉だった。お笑いのみならず芸能人の仕事の中でもっともギャラが高いのはCMなどの広告案件であり、それは本来『キングオブコント』などの賞レースで優勝したその先にあるものだったはずだ。
テレビ東京の深夜番組『ざっくりハイタッチ』で「ケンカ芸」が注目を集めたのは2014年、あれからもう10年になる。
当初、鬼越はこの「ケンカ芸」でさまざまな番組に呼ばれ、そのたびにケンカを止めにきた芸能人に「芯を食ったことを言い返す」という極めて難しいミッションを課せられていた。『ざっくり』時代は相手が芸人だけだったので自由に暴れることができたが、大御所タレントや俳優を相手にしなければならなくなると、2人はその日スタジオにいる出演者全員を調べ上げ、ネタを「食って」収録に臨んでいたという。
「うるせえなぁ」と坂井良多が怒鳴りながら、視聴者が考える一枚上のワードを繰り出し、金ちゃんが「本当はそう思ってないと思うんですけど」と言いながら、もう一枚上をかぶせるというパターンはスベることも少なくなかったというが、その姿はあらゆる芸能人を餌食にしていった有吉弘行の「あだ名芸」を彷彿とさせるものだった。
そのころの鬼越トマホークが自らのYouTubeなどで、よく口にしていたことがある。
自分たちは悪口ばかり言って、イメージが悪い。だからCM仕事が入らないので、いくら働いてもこれ以上収入は上がらない。
『チョコプランナー』で袋叩きに遭った翌日の1日、そんな鬼越トマホークのYouTubeで1本の動画が公開されている。「ファミリーマートさんに呼び出されました」。まごうことなきCM仕事である。
しかも、ファミリーマートの公式アプリ内で、鬼越の「ケンカ芸」がゲーム化されるのだという。10年前、彼らを芸能界に押し上げた悪口という一芸が、そのままナショナルクライアントのPRに利用されているのだ。これは、鬼越トマホークというコンビがまったくイメージを変えないまま、好感度だけを上げてきたことを意味する。
繰り返しになるが、昨年の『キングオブコント』放送中のカーネクストのCMを見たとき、彼らは賞レース重視のお笑い界の横っ腹に穴を開けたのだと思った。鬼越トマホークのたどってきた道のりは、誰かが狙って再現できるキャリアではない。
積極的に更新しているYouTubeでは話術の高さやインタビュアーとしての適性も証明している鬼越トマホーク。今後、どんな芸人になっていくのだろうか。
(文=新越谷ノリヲ)
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