『あらびき団』絶対王者・スルメの「無類の強さ」の裏側、その信頼と実績の証
#あらびき団 #スルメ
TBSの『あらびき団』は、バラエティにおけるネタ番組の概念を変えた番組だった。レギュラー放送は2007年10月から11年9月までの丸4年間。その後も定期的に特番として放送されているが、ステージ上で披露されるネタにCGで合成されたMC・レフト藤井(藤井隆)とライト東野(東野幸治)がツッコミを入れるスタイルは当初から変わっていない。
『あらびき団』がスタートした07年ころは『エンタの神様』(日本テレビ系)の最盛期。『エンタ』はスタッフが自らライブに足を運び、多くの知られざる芸人を発掘したことで知られている。一方でネタ中の過剰な説明テロップやスタッフによる芸人へのネタ変更指示など局側の意向が前面に押し出される演出で、一部のお笑いファンからの批判の声も少なくなかった。
そんな『エンタ』への「出演者を養成する」という『あらびき団』の当初のキャッチフレーズは、多分に皮肉を含んでいた。無名の芸人たちのネタは『エンタ』に比べれば洗練されていない、というより成立していないとも言えるものが数多く採用され、ネタ中に容赦なくツッコむ藤井と東野のフレーズ芸も含めて楽しむという番組スタイルが確立していき、そのスタイルは現在放送中の『千鳥のクセスゴ!』(フジテレビ系)というフォロワーも生んでいる。
そんな『あらびき団』が主催する賞レース「あら-1グランプリ」で無類の強さを発揮している芸人がいる。その名はスルメという。「あら-1」では18年と22年に優勝を飾っており、今月8日に放送した『あらびき団2024新春』でも優勝。ルパン三世のコスプレで披露されるピンネタは『あらびき団』ファンにはあまりにも有名であり、それ以外にはほとんど知られていない。
そんな『あらびき団』におけるスルメのネタがどのように収録されているのか、その意外な舞台裏をMCである東野が、19日深夜放送の『東野幸治のホンモノラジオ』(ABCラジオ)で明かしている。
スルメのネタといえば段ボールで作ったお手製のルーレットに従って、出た目のネタを披露していくというもの。毎回、スタッフはスルメに「(ネタの内容は)丸投げで大丈夫ですか?」と確認するというが、本人は平然と「大丈夫です」と返すのだという。
そして、実際に放送されるネタ尺は長くても3分程度だが、スルメの収録は50分にも及ぶのだという。
「カメラマンさんも一応、固定はしてるけど、たまに40分後くらいに腹ちぎれるほど笑うんですって。(収録を)止めない状況で、ぎゅっと編集して」
1人の芸人の収録を50分かけて行うなど、ほかのネタ番組では聞いたことがない。全員にそれだけの収録時間が与えられているとは考えにくいが、これこそ『あらびき団』のコンセプトを現したエピソードだ。
粗い芸をそのまま見せる。洗練されていないわけだから、当然、使えない部分も多くある。だが、スルメは50分カメラ回しておけば、数分は「腹がちぎれるほど」面白いことをやるに違いない。
普通に考えれば、事前に50分のネタ見せを行い、スタッフ側で使えそうなネタをチョイスして放送分だけの収録を行いそうなものだ。だが、『あらびき団』は効率よりも、スタジオで起こるミラクルを信じている。それは、スルメが築いてきた信頼と実績の証でもある。
『あらびき団』で名を挙げたハリウッドザコシショウが語っていたことがある。
「あらびき団で売れても、ほかの番組では使ってもらえない」
スルメに関しては、当たりだろう。数分のネタを放送するために50分の収録時間を使う番組など、ほかにあるはずもない。『あらびき団』だけで圧倒的に輝く。そんな芸人が1人くらいいてもいい。
この日のラジオでは、同じ宝塚出身のスルメの父親と東野の父親が知り合いだったという小さなミラクルも明かされていたが、それはまた別の話である。
(文=新越谷ノリヲ)
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