全米を揺るがした“ゲームストップ株騒動”『ダム・マネー ウォール街を狙え!』
#ダム・マネー
マネーゲームで巨万の富を築いたウォール街の強欲なヘッジファンドに、しがない小口投資家が一発逆転! そんな事実を映画化した『ダム・マネー ウォール街を狙え!』は、大富豪と普通に働く一般庶民の階級闘争の物語だともいえる。
コロナ禍真っ只中の2021年。米マサチューセッツ州の平凡な会社員キース・ギルは、全財産の5万ドルをある銘柄に注ぎ込んだ。その銘柄とは、ゲームをダウンロードで買える時代になった今や時代遅れになりかけているゲームショップ「ゲームストップ」。「ローリング・キティ」という名義で動画配信をしているギルは、この銘柄が過小評価されていると視聴者に訴えたのだ。
それをせせら笑うのは、この銘柄を空売りして値が下がったときにボロ儲けしようとたくらんでいるウォール街の富豪たち。ところが、ギルの動画を見た庶民たちが「ゲームストップ」の株を買い、値がどんどん上がり始めると、富豪たちは慌て始める。株価が上がると、彼らは大損失を被って破産の危機に陥るからだ。そんな「ゲームストップ株騒動」が世の中で話題になり始めると、富裕層たちの妨害工作とも取れる出来事が起きて……。
この映画では、ウォール街の富豪たちと、彼らに戦いを挑む一般庶民の小口投資家たちが登場するが、それぞれのキャラクターの初登場時には、彼らの持っている資産額も紹介される。日々人命を救っている看護師が貧困にあえぐ一方で、小口投資家たちがゲームストップ株を買い始めると「愚かな投資(ダム・マネー)」だとバカにする富豪たちは、誰も救ってないのに巨額の富を得る。そんなヘッジファンド=富豪たちに一般庶民の小口投資家たちが“お仕置き”するのがこの映画の見どころだ。加えて、値がバカ上がりしたゲームストップ株を売ってしまえば生活が楽になるのに、これは富豪たちとのプライドを賭けた勝負だからと売らずに我慢する小口投資家たちの心意気に喝采を送りたくなる。
1989年以降、アメリカの家庭の上位10%が保有する資産が29兆ドル増えた一方、下位50%の資産は目減りしてきた。そんな傾向は2021年のコロナ禍でより鮮明となり、上位1%が新たな富全体の3分の2近くを手に入れて超富裕層の資産は倍増したという。そんな超富裕層の中核を占めるウォール街のディーラーたちへの反感をベースにしたこの映画。コロナ禍に起きた実際の事件の再現であると同時に、21世紀の資本主義社会について考察するヒントも与えてくれる快作だ。
『ダム・マネー ウォール街を狙え!』
2月2日(金)TOHO シネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
配給:キノフィルムズ
© 2023, BBP Antisocial, LLC. All rights reserved.
公式サイト
https://dumbmoney.jp/
監督:クレイグ・ギレスピー
原作:ベン・メズリック
脚本:ローレン・シューカー・ブラム&レベッカ・アンジェロ
出演:ポール・ダノ、ピート・デヴィッドソン、ヴィンセント・ドノフリオ、アメリカ・フェレーラ、ニック・オファーマンほか
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