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『君が心をくれたから』第2話 理不尽なルールの下で強迫観念を押し付け合う地獄絵図

第2話 マカロンは恋と夢の味 | TVer

 15日に放送されたフジテレビ月9『君が心をくれたから』第2話。永野芽郁ちゃんはたいへんかわゆいです。振り返りましょう。

 前回、交通事故で瀕死の重傷を負った太陽くん(山田裕貴)の命を救うという奇跡と引き換えに、案内人(死神みたいなやつ)に心を奪われることを受け入れた雨ちゃん(永野)。今回は、改めてそのルールが説明されました。

 雨ちゃんは今後、味覚、嗅覚、聴覚、視覚、触覚の五感を3カ月かけて順番に失っていくことになります。ドラマいわく「五感が心を育む」そうで、五感を奪えば心を奪えるということのようです。なぜ死神が心を奪いたいのかはわかりませんし、これを作ってる人が聴覚を失ったベートーベン大先生や盲目のR-1王者・濱田祐太郎のことをどう考えてるのか、倫理的にけっこうヤバいことを言ってるのに気づいているのかもわかりません。

 さらに、雨ちゃんがこの秘密を太陽くん以外の人間に明かすと、雨ちゃんも太陽くんも死ぬんだそうです。五感や心だけでなく、雨ちゃんはなし崩し的に命さえも人質に取られてしまっていたのでした。口外したら死ぬとか先に言えよ、雨ちゃんも先に確かめとけよ。すごい理不尽。

■今回は、味覚を失わせましょう

 最初に雨ちゃんが失うことになったのは、味覚でした。あと15日くらいで、味を感じなくなる。明言されていませんが、たぶん死ぬまで戻らないのでしょう。雨ちゃんは、夢だったパティシエをあきらめなければならなくなります。

 そういう状況で、雨ちゃんに対して「あきらめんな」のコール大会が開催されました。手始めに市役所の知り合いが「自分はヒザをやってサッカーをあきらめたけど、雨ちゃんはあきらめんな」。続いては自分をクビにしたパティシエの師匠から「見込みがあるから厳しく当たってすまん。まだ若いんだから、あきらめんな」。極めつけは自分を虐待したママから「お菓子作りの才能でたくさんの人を幸せにしろ」。その間にも、雨ちゃんが味覚を失う日は刻一刻と近づいています。

 一方、太陽くんの悲劇も明らかにされました。太陽くん一家は過去に経営する花火工場が火災を起こし、お母さんを亡くしています。そのきっかけは親方でもある父(遠藤憲一)が静電気除去を怠ったものと伝えられていましたが、実際には太陽くんの火遊びが原因でした。「お母さんを殺したのは僕なんだ」ということで、太陽くんは泣いちゃいました。

 太陽くんが泣いていると、今度は雨ちゃんが太陽くんに「くじけんな、くじけたら許さない」とか言い出します。互いに強迫観念を押し付け合う地獄絵図。まったく趣味の悪い展開です。

 味覚を失う最後の日。雨ちゃんは最後のマカロンを作って太陽くんに食わせることにしました。

 おいしいおいしいと言って食べる太陽くん、雨ちゃんにもひとつ食べさせますが、雨ちゃんはその瞬間に、味覚を失ってしまいました。味がしない。泣いちゃう雨ちゃん。でも、「おまえの命を助けるために味覚を死神に差し出したから、味がしないよ」とか言いません。こういう自己犠牲が美しい、という世界観です。醜悪なもんです。

■このドラマは怖いよ

 めちゃくちゃサディスティックだなと思うんですよ。あらかじめ「味覚を失うよ」と設定しておいて、それによって起こる悲劇に弾力を付けるためだけに「パティシエをあきらめるな」と詰め寄っていく。できるだけ強く地面に叩きつけるためだけに、「あなたのお菓子作りの才能は素晴らしい」と雨ちゃんを持ち上げていく。で、今こいつ味覚を失ったぜ、マカロンの味がしないぜ、ホラ泣いた! 永野芽郁、泣いた! 泣いた! 泣いた!

 怖いよ。

 こんなのは作劇ではなく、キャラクターに対する暴力なんです。自分で作ったキャラクターに、よくこんな乱暴なことができるなと震えてしまいます。

 ほかにも怖いところがありました。太陽くんが、火災が自分の不注意だということを知って、父親に詰め寄るシーンです。

太陽「俺が母さんを殺したの?」

父「そうだよ」

 そうだよ、じゃねえんだよ。少しでもキャラクターに愛情があったら、「そうだよ」なんてセリフは書けないんですよ。ドラマ上の事実関係でも、火災に巻き込まれた幼い太陽くんを救うために突入した母親が一酸化炭素中毒で亡くなったということになってる。太陽くんは殺してない。もう一回言うけど、そうだよじゃねえんだよ。怖いよ。

 雨ちゃんや太陽くんに共感した視聴者は泣くでしょう。でもそれは、あなたドラマに感動して泣いてるわけじゃないからね。脚本家に殴られて泣いてるのと同じだからね。

 と、まあそんなことを書いていながら、共感しちゃったところがありました。味覚を失い、パティシエへの道を閉ざされた雨ちゃんが泣きながら語るシーンです。

「もっとがんばればよかった。あと1時間、30分でもいいから、寝るのを我慢して勉強すればよかった。動画見たり、スマホ触ってる時間があるなら、もっと必死に、もっと精一杯、必要ないって言われても、がんばればよかった」

 ホントにそう思うよ。こんな若年視聴者の涙を搾り取るだけの作業を目的としたドラマを見てる時間があったら、自分のやりたいことをやったほうがいいと思う。マジで時間の無駄だし、この自己犠牲を一面的に美徳とし、身体障害を一面的に欠落と扱う世界観は有害ですらある。

 私はこれ見て原稿書いたらお金もらえるから、次回も見るけどね!

(文=どらまっ子AKIちゃん)

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

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最終更新:2024/01/31 12:11
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