『マジ歌選手権』芸人たちの高すぎるモチベーションと“キメラ化”する企画の未来
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今年もお正月の3日に放送された『芸人マジ歌選手権』(テレビ東京系)。同局深夜の長寿バラエティ『ゴッドタン』から生まれた名物企画は、今回で第21回を迎えている。
出演者はバナナマン・日村勇紀、東京03・角田晃広、ロバート・秋山竜次、ハライチ・岩井勇気、フットボールアワー・後藤輝基、バカリズム、劇団ひとりに加えてスポットライトゲストとしてぱーてぃーちゃんという、いずれ劣らぬ超売れっ子ばかり。このため、番組プロデューサーの佐久間宣行氏によれば、年末年始の特番シーズンで裏かぶりを避けるため、なかなか放送日が決まらないという苦労もあったという。今回、出場メンバーの出演スケジュールを調整した結果、ナレーション担当の服部潤に裏かぶりが発生し、中井和哉が代役を務めるというハプニングもあった。
そんな『マジ歌』の制作裏話が、10日深夜の『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)で語られている。
佐久間氏は、今年の『マジ歌』を「近年で最高の出来」と自画自賛。だが、2007年に始まった同企画の制作スタイルは、当初とは大きく変わっているのだという。
「もうマジ歌選手権は、今やガチャなんですよ。昔は全体のコントロールまで俺が細かく入っていたところもあるんだけど」
第1回のメンバーはひとり、日村、角田の3人。ギターが弾けて歌を作れる芸人にちょっとやらせてみよう、くらいのノリだったように記憶している。
「もうみんな、すごい売れっ子の演者になってるじゃない。だから、それぞれの調子がその年、その年で違うっていう。みんなが調子がいいのを祈るしかないっていう感じになってきたの」
また、佐久間氏はメンバーによる楽曲制作の段取りにも大きな違いがあると明かす。
ロバート秋山は「完パケで持ってきた」。バカリズムは構想を提案されたものの佐久間氏らスタッフ側が理解できず「ちょっと地味じゃないか」と感じたというが、実際には大ウケして「今後、升野さん(バカリズムの本名)がどんなネタを持ってきても何も言えない」と舌を巻いた。
バナナマン日村とはディスカッションして作るといい、佐久間氏自身がフジロックフェスティバルでみたLizzoというアーティストからインスピレーションを受け、ふくよかな女性ダンサーとの共演を提案したのだという。
そのほか、劇団ひとりがゆうこりん、ハライチ岩井が中山秀征をゲストに加えた経緯などを明かしている。
これらのエピソードから伝わってくるのは、いずれの出演者たちの『マジ歌』に対するモチベーションの高さだ。楽曲制作は毎年、秋口から始まるという。毎年、ダンスを披露する日村のスケジュールの合間をぬった猛練習は苛烈を極めると、かつて同ラジオで語られていたこともある。
昨年6月にロバート秋山が『ANN0』にゲスト出演した際にも、『マジ歌』は話題に上がっている。
「ライフワークですよ。本当に。もうマジで毎年……もう早いんですよね。動きがもうね。年々、早くなってきてますよね? あれ、もう夏終わりから動き出してるから」
そう語る秋山が『マジ歌』に参加するようになった時期は、レギュラー出演していた『はねるのトびら』(フジテレビ系)がゴールデンに進出したころだった。
深夜でスタートした当初はゴリゴリのコント番組だった『はねる』だが、人気が高まるとともにゲーム企画ばかりに。フラストレーションをためていた秋山が双方の番組で作家を担当していたオークラに相談したことをきっかけに『マジ歌』に誘われている。
「歌を作って発表するあの場がすげえうれしかったですね。あの並びで。しかも。あのザ・コメディアンの並びに出さしてもらってね」
回を重ねるごとに芸人たちの独自色が強まっていき、日本でいちばん忙しい芸人たちが全力で勝手に爆発して帰ってゆく『マジ歌選手権』。近年ではまるでキメラのようにあらゆる方向に尖り散らかし、かなり見る者を選ぶ企画になっていることも否めないだろう。だが、芸人が「もっとも出たい番組」であり続けている限り、一定の視聴者が「もっとも見たい番組」として年末年始を待ち続けているのだ。
(文=新越谷ノリヲ)
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