『ボクらの時代』ジェンダーレス時代を生きる女性芸人たちの現在
#ボクらの時代
24日に放送された『ボクらの時代』(フジテレビ系)は、ゆりやんレトリィバァ、ガンバレルーヤ、紅しょうが・熊元プロレスの3組が出演。養成所時代からを共に過ごした大阪NSC35期の同期が顔をそろえた。
ゆりやんは2017年の第1回『女芸人No.1決定戦 THE W』(日本テレビ系)、21年の『R-1グランプリ』(フジテレビ系)で優勝経験があり、紅しょうがも今年の『THE W』を制している。ガンバレルーヤは賞レースでの実績こそないものの、『内村てらす』(日本テレビ系)へのレギュラー出演をきっかけにブレーク。いずれも、若手の女性芸人の中ではトップクラスの実績がある3組だ。
そして、全員がその容姿を武器にしてきた芸人でもある。
ガンバレルーヤは、顔立ちをイジられたよしこが「クソが!」と返すくだりが有名だし、熊元プロレスはプロレスを名乗っている。ゆりやんは国内での活動こそ作り込んだコントも見せるが、19年に『America’s Got Talent』に挑戦し、星条旗をモチーフにした露出の激しい衣装に角刈りのヅラをかぶって登場したシーンは記憶に新しいところだ。
現在、特に在京のバラエティでは、女性の容姿に対するイジリはほとんどなくなっている。そうした流れの中で3時のヒロイン・福田麻貴、ヒコロヒー、Aマッソ・加納らが活躍の場を広げている。もちろん、彼女たちに腕があることは間違いない。だが、仕事がまったくなかった加納が『ゴッドタン』(テレビ東京)で、バラエティ番組では「デブとブスしか求められていない」と嘆いていたのは、たった5年前の話だ。
一方で、今回の『ボクらの時代』で語られた彼女たちの仕事の内容は、実に前時代的だ。ゆりやんとガンバレルーヤは3人で沖縄を訪れ、現地にいた男性に「付き合ってください」と告白し、全部フラれるというロケがあったという。その後、3人そろって「好きになってごめんなさ~い~」と歌いながら踊ったのだという。
また、よしこは好きなタイプの男性と1日デートし、夜の12時になったところで「魔法が解け」て、鼻フックされるというロケもあったと明かす。
ゆりやんは「この10年って、めっちゃ変わったよね」と言う。
「昔のネタ帳出てきてさ、読んでたらさ、『私、実はブスなんですよ』ってボケがあってさ。悲しいよな、今思えば、そんなん」
この話にほかの3人も大いに同調するが、沖縄も鼻フックも10年前ではなく、今年の仕事だったというのだから、女性芸人という存在がいかに時代に振り回されているかがよくわかるエピソードだ。バラエティの世界では、見つかっていないだけで、炎上確実の企画がまだまだ普通に放送されているのだ。
そして、彼女たちはそれを楽しんでいる。上記の沖縄と鼻フックのエピソードも、爆笑しながら話している。
番組の最後に、熊元プロレスが問う。
「ずっと聞いてみたいと思っててんけど、芸人になって幸せやなって思うことって、改めてどう思う?」
「毎日、毎日」と、ゆりやんが即答する。ガンバレルーヤと熊プロも「わかるわ」「確かにね」とゆりやんを見つめている。
「嫌なこととかあってもさ、嫌なことで終わらないっていうのがいいよね」(ゆりやん)
「こっちで笑いに変えれるっていうのがな」(熊元)
そしてよしこが、「楽しかったらいいんだよ」と満面の笑顔を見せて、番組が終わる。
コンプライアンス、ジェンダーレス、大いにけっこうな考えではあるだろう。「毎日幸せ」「楽しかったらいい」と語る彼女たちの仕事内容を尊重することもまた、多様性であると思う。
(文=新越谷ノリヲ)
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