「『M-1』審査は一般に戻せ」西川のりおの自説と、衝撃の“おぎやはぎ9票事件”
#ナイツ #M-1グランプリ
18日に放送された『ナイツ ザ・ラジオショー』(ニッポン放送)に、さまぁ~ず・三村マサカズがゲスト出演。ナイツの塙宣之が『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)の審査員としての苦悩を、三村に相談する一幕があった。
「のりお師匠に、先週『審査員やめろ』って言われたんですよ。どうしたらいいですか?」
先週12日に同番組にゲスト出演した西川のりおが、塙に審査員降板を進言していたのだ。
「塙くんに言おう思ってるけどね。審査員、辞めたほうがいいと思う」
西川のりおは芸歴50年を超える今も西川のりお・上方よしおとのコンビで舞台に立ち続けるレジェンド漫才師でありながら、『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)や『笑っていいとも!』(同)などにレギュラー出演していた経験もある、舞台とテレビの両方を知るお笑い界の生き字引のような存在である。そんなのりおに直接「審査員を辞めろ」と言われたのだから、塙の心中は穏やかではないだろう。
三村は塙の審査員としての発言について「辛口だったり甘口だったり、好きだけどね」とフォローした上で、「関東でやってる人がいないとダメだな」と、塙の続投を支持している。
のりおが先週の放送で塙に降板を進めた理由は、『M-1』での実績不足だった。
「いちおう、ナイツは(『M-1』に)出たじゃない。獲れなかったじゃん。目指して獲れなかったら、辞めるべきやと思うのよ」
ナイツの『M-1』での成績は、決勝に3回進出して最高順位は2008年の3位。その後、順位を落としていき、15年のラストイヤーは準決勝敗退で終えている。確かに歴代でも、のりおの言うように『M-1』に出場しながら優勝していない審査員は、塙ただ一人ではある。
一方で塙は漫才協会会長という重職についており、関東を代表する漫才師であることに異論を挟む者はいないだろう。
のりおの持論はこうだ。
「もとに戻して、素人が審査したほうがいいと思うのよ。変に色がないから。何もわかってないからいいの。何もわかってないから、おもしろいということなんよ」
『M-1』ではかつて、決勝でも一般投票を取り入れていたことがある。第1回大会、だがそれが原因で、事件ともいえる事態が起こっている。世に言う「おぎやはぎ9票事件」だ。
第1回『M-1』では、審査員7名に加えて、札幌、大阪、福岡の3会場にそれぞれ100人の一般審査員を集め、投票が行われた。審査員の100点満点に加え、一般票が各会場から100票ずつ。その合計でファーストラウンドの審査が行われたのだ。
おぎやはぎの漫才は、今とほとんど変わっていないスタイル。会場のウケも悪くはなかった。だが、審査員の得点発表に先立って行われた一般票の集計に、客席から悲鳴が上がることになる。
札幌22、大阪9、福岡12。合計は43点。小木博明も矢作兼も、この事態に爆笑するしかない。
おぎやはぎの出順は5番手だった。それまで、1番手の中川家は3会場合計で223票、フットボールアワーは191票、松本人志が50点を付けているチュートリアルでさえ154票、アメリカザリガニは優勝した中川家を凌ぐ242票を獲得している。その直後のおぎやはぎ43票、大阪9票という数字が与えた衝撃は、今でも昨日のことのように思い出せるほどだ。
おぎはやぎは、ひとしきり爆笑した後、大声で何か言っているが、マイクが切られて映像には明瞭な音声が入っていない。MC・赤坂泰彦の「いや、まだわかりません!」という煽りがスタジオに空しく響く。アシスタントの菊川怜も言葉を失い「数字って、リアルですね……」と声を絞り出すしかなかった。
結局、『M-1』における一般投票は翌年から採用されず、人選を入れ替えながら芸人や落語家が担当するようになった。
一般客の投票による審査も、一意的に否定するべきものではない。今年5月の『THE SECOND』(フジテレビ系)では、客席審査員を運営側が丁寧に選抜することで、いちおうの成功を見た。
だが、現在の『M-1』は審査員の得点や審査コメントもまた、コンテンツのひとつとして提供されているという側面もあるだろう。その分、塙をはじめとする審査員たちには負担がかかり、オファーを断る芸人も少なくないという。
のりおにも十分その資格はあると思うのだが、果たして。
(文=新越谷ノリヲ)
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