賞レースの「煽りV」問題再燃 ナイツ・塙の指摘と、霜降り明星・粗品の『M-1』運営批判
#ナイツ #THE W #霜降り明星 #粗品 #塙宣之
賞レースで芸人が登場する前の紹介VTRに、どれだけネタバレを含むか。時おり話題になるテーマだ。
14日、YouTube「ナイツ塙会長の自由時間」で、恒例となっているナイツ・塙宣之の「賞レース感想動画」が公開された。毎年、各賞レース終了後に塙が自由な感想を語る動画だが、今回の対象は『女芸人No.1決定戦 THE W 2023』(日本テレビ系)。9日に放送され、紅しょうがが悲願の優勝を果たした大会である。
塙は、出場者のネタやキャラクターについて独自の感想を述べたが、その中で気になる発言があった。
大会1番手に登場した、まいあんつについてだ。
「初めに、『唯一無二のギャガー』とか『ギャグ』って(強調して)言うじゃないですか。そういうの、言わないほうがいいのになと思いましたけどね」
まいあんつは、一般的にはほぼ無名といっていいピン芸人。ほとんどの視聴者にとって、まいあんつのネタを見るのは、今回の『THE W』が初めてとなる。
その状況で、登場前の紹介VTRでギャガーであることが強調されると、余計な先入観を与えることになるという指摘である。
「ギャグをすごいする人だって思っちゃって見てるから、ギャグやる人だって思わないで見たら、もっと変な面白さがあったのかなって」
確かに、まいあんつがギャグを連発するギャガーであることを知らずにネタを見始めたと仮定すると、単発のギャグのクオリティだけでなく「しつこくギャグをやる」という行為自体に面白さが宿る可能性はある。
だが、塙が「本人がギャグを売りにしてるからね、難しいかもね」と語った通り、あの紹介VTRが取っ掛かりとなっていることもまた、間違いないところだろう。
思い出すのは、2019年の『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)だ。かまいたちが伝家の宝刀「UFJ」ネタでトップに躍り出ると、和牛が敗者復活から盤石の出来で2位に滑り込み、それを7番手のミルクボーイが「コーンフレーク」でブチ抜いていくというダイナミックな展開で、史上最高レベルともいわれる大会である。そのラスト10番手に登場したぺこぱは、以下のような文言で紹介された。
「ツッコミ方改革 ぺこぱ」
「顔にメイク、派手な衣装のツッコミ松陰寺」
「一方、見た目奇抜さはないボケ、シュウペイ」
「まったくつかみどころのないボケに対し、見た目同様、型破りにツッコむ」
「さぁ今こそ、そのスタイルを輝かせるとき」
今やすっかり有名になったが、ぺこぱの漫才はその紹介の通り、シュウペイのボケに対して松陰寺太勇がツッコミつつ、それを否定しないという独特なスタイルで2人をブレークに導いた。審査員の松本人志も、その「ノリツッコまない」スタイルを「新しいところを突いてきましたよね」と評した。つまり、この紹介にはなんら間違ったことはなかったし、結果としてぺこぱに悪影響を及ぼしたこともなかった。
だが、この紹介VTRに敏感に反応した芸人がいた。
「あれだけ嫌やったな、煽りV、ちょっと言い過ぎてたなぁ。ちょっとショックでしたねえ」
大会直後の『霜降り明星のオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)、苦言を呈したのは粗品である。
「公平じゃないしな、それで俺、楽しみにしてたんですよ。でも、メイクしてる松陰寺さんのキャラ立ってるやんか。それで2人で歩いて、1人ずつ顔を抜かれたときに、思いっきり『ボケ』『ツッコミ』みたいに言うやん。そこでまず1個、ぺこぱさん不利というか。あんなかっこうしてる人がツッコミっていうのが、まずひとつおもろい。それで笑いたかったのに。それがまずショックというか」
正直、ナーバスすぎる意見だと思う。ぺこぱ自身もあの紹介VTRに、そこまで不公平感を抱いてはいなかっただろう。
「あと、『ツッコミ方改革』ですか。あれも良くないわ。言い過ぎ。しかも1本目のネタに『働き方改革』ってフレーズも出てますしね。めっちゃ気になるわ。(運営が)ネタを準決で見てんねやったら、違うキャッチコピー付けたらよかったのになと思いましたねえ」
粗品自身、言わずにはいられなかったのだろう。決して運営を指弾する論調ではなく「ショックだった」「残念だった」と最大限配慮した言葉選びだった。
この前年、霜降り明星は『M-1』で優勝している。もう『M-1』には出ないし、誰がどんな紹介をされようが、自分たちのキャリアには関係がない。その立場から、『M-1』に対してとことん公平であってほしいという願いを口にしているのだ。
今年9月、粗品が単独ライブで披露したネタの中で、松陰寺に対して「最近仕事ないもんなぁ!」などと毒づいたことが話題になった。そのときも、真っ先に思い出したのは、この日の粗品の悲しげな運営批判だった。
(文=新越谷ノリヲ)
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