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北野武監督、『首』の評価が微妙な理由は主要ビジネスパートナーの不在か

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北野武(写真/Getty Imagesより)

 北野武監督の最新作『首』が11月23日に公開され、初日から4日間の累計成績は動員26万3000人、興収3億9500万円を記録した。

 同作は北野監督が構想に30年を費やし、監督・脚本を手がけ、歴史的大事件「本能寺の変」を題材に壮大なスケールで活写した戦国スペクタクル映画。武将や忍、芸人、農民らさまざまな人物の野望と策略が入り乱れる様を、バイオレンスと笑いを散りばめながら描き出す。

 公開2週目以降も数字を伸ばし、邦画のヒット作の基準とされている興収10億円は楽々突破しそうな集客ぶりだ。ただ、さる映画ライターは次のように語る。

「世界的に高い評価を受けている北野監督の作品だが、暴力的要素が多いこともあってか、思ったほど数字が伸びていない。歴代の監督作での興行収入トップは不朽の名作をリメークした『座頭市』(03年)の28.5億円。それに続くのが、藤竜也が元ヤクザの親分役で主演を務め、老人たちの活躍を描いた『龍三と七人の子分たち』(15年)の16億円。三部作の『アウトレイジ』シリーズは2作目と3作目が15億円ほどを記録したが、10億を超えたのはこの4本のみ。『首』がどこまで数字を伸ばすのかが注目される」

 製作から公開に至るまでには、脚本を読んだ渡辺謙が主演を断ったり、配給元のKADOKAWAと揉めたため、お蔵入りの危機が報じられたものの無事に公開。総製作費は邦画では破格の15億円で、主演の西島秀俊が明智光秀役、ビートたけしが羽柴秀吉役、加瀬亮が織田信長役、小林薫が徳川家康を演じるなど豪華キャストが名を連ねる。

 さらに5月に開催された『第76回カンヌ国際映画祭』の「カンヌ・プレミア部門」には、日本人監督の実写作品として初めて選出され、北野監督によると、故・黒澤明監督に「北野くんがこれを撮れば、『七人の侍』(1954)と並ぶ傑作が生まれるはず」と言わしめたほどの作品だというのだが……。

 大手映画情報サイト「映画.com」には500件を超えるレビューが寄せられ、評価は5点満点中の3.3(12月20日時点)。高評価が目立つ一方、《裸の王様か?》《下品な駄作》《グロい。意味なく首を斬る》《タイトルに寄せすぎた!?》などかなり辛らつな評価も目立つが、それも納得だという。

「北野監督は6年ぶりの新作となるが、前作まではしっかり“ブレーキ”を利かせ、その根幹を形成していたのが、北野監督の前所属事務所社長で長年の二人三脚で歩んでいた森昌行氏。森氏のプロデューサーとしての手腕もあったからこそ、北野監督の作品が世界でも注目を浴びたことは否定できない。しかし、件(くだん)のたけしの独立騒動により、今作ではその“ブレーキ”が利かなくなったようだ。やたらと切り落とされた首を並べたり、武将同士のBL的要素が強調されたりしている。また、セリフを覚えるのが面倒だったのか、たけしが演じた秀吉はほぼ現代語。秀吉の弟・羽柴秀長役は『アウトレイジ』シリーズで主人公を演じたたけしの子分役・大森南朋で、呼び方が『兄貴』から『兄者』に代わっただけ。もし、森氏が関わっていたら、どんな作品になっていたことやら。数字は伸びているものの、製作費が15億円ということは、『座頭市』を上回る興収をたたき出さないと赤字になってしまう」(映画担当記者)

 すでに次回作に取りかかっているという北野監督だが、大切なビジネスパートナーを失ってしまったのかもしれない。

黒崎さとし(編集者・ライター)

1983年、茨城県生まれ。ライター・編集者。普段は某エンタメ企業に勤務してます。

Twitter:@kurosakisatoshi

くろさきさとし

最終更新:2023/12/21 08:00
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