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桃鉄シリーズ最新作『桃鉄ワールド』、ファミリーでのんびり“楽しめない”舞台裏

桃鉄シリーズ最新作『桃鉄ワールド』、ファミリーでのんびり楽しめない舞台裏の画像1
KONAMI『桃太郎電鉄ワールド』公式サイトより

“桃鉄”の愛称で知られるゲーム『桃太郎電鉄』シリーズの3年ぶりとなる新作『桃太郎電鉄ワールド』が11月に登場。タイトルからわかる通り、今作は世界が舞台となっている。

「桃鉄シリーズはファミコン時代の1988年に登場し、その後、スーパーファミコン、ゲームボーイ、PlayStation、ニンテンドーDSなどいろいろなゲーム機を経て、前作からはNintendo Switchで発売。家庭用ゲーム機版だけでもこれまで20作以上が発表されてきましたが、世界を舞台とする作品は13年ぶりです。新作のゲームエリアは地球全体。球体MAPが採用されており、南極大陸もゲームエリアに登場。そのため『電鉄』とうたいながら飛行機を使うことが多く、進行系のカードも『プロペラカード』『ジェットカード』など、飛行機の呼び方になっています」(エンタメ誌編集者)

 2020年発売の前作『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』は累計出荷本数が400万本を突破した桃鉄。年末年始に友人や家族とプレーするにはうってつけのゲームだが、制作現場の苦労は並大抵ではない。

「プレーする分には呑気で平和な桃鉄ですが、厄介な問題は多い。例えば桃鉄シリーズは一時期新作の発売が滞りましたが、これは東日本大震災の影響。震災では三陸地域を中心に広い範囲が大きな被害を受けましたが、これをゲームにもろに反映させるわけにはいかず、さりとて無視するわけにもいかず、新作発売まではかなりの時間を要しました。名産物の収益率が悪かったり、前作まで入っていた名産品が外されると、ゲーム会社にクレームが寄せられることもあるとか。一方では、“ゲームで使ってほしい”と、名産品をゲーム会社に送り付け、採用を催促するケースもあるそうで、決して作品完成がゴールではありません」(ゲーム誌記者)

 実在の世界を舞台にしている以上、天災、社会状況、経済情勢などとは無縁ではいられないのが桃鉄。世界編ともなれば、さらに頭を使う必要が出てくる。

「舞台が世界になると、MAPが複雑になるだけでなく、考えなくてはいけないことが飛躍的に増えてきます。ゲームでは、宗教や民族などの背景に配慮している旨の但し書きが登場しますが、例えば目的地到着シーンで、出迎えの人たちの人種の割合をどうするか、民族衣装が思わぬ批判や炎上を招かないかなど、“地雷”はいくらでもある。『日本海』という呼称ひとつをとっても、それに反発している国もあり、考えを巡らす必要はあります。他の駅は必ず国旗が表示されるのに、台湾の駅だけは国旗が表示されないのは、明らかに“政治的判断”でしょう」(ゲームメディアライター)

 ただ、そんな周囲の心配をよそに、『桃鉄ワールド』は初週だけで30万本以上を売り上げ、今も順調に数字を伸ばしている。制作には苦労が伴った世界編だが、今後の展望は明るい。

「桃鉄シリーズはハイペースで新作が発売されますが、それは完全に“ひな形”が出来上がっているから。日本編であれば、新しいカードを増やしたり、定番キャラクター「ボンビー」の種類を変えたり、物件をアップデートすれば最新バージョンが完成するわけで、これはさほど難しい仕事ではありません。一方、世界編の前作が発売されたのは10年以上前なので、今回の制作はほぼ一からの作業でしたが、叩き台となる作品が完成したことで、次作の制作は飛躍的にラクになる。コロナ禍での制作を、旅行ガイドの『地球の歩き方』とのコラボで乗り切ったのは見事でした。桃鉄は近年、子どもたちが地理や名産品を覚えるツールとして活用されていますが、世界編となれば、学習教材としてのメリットはいよいよ大きい。世界の国旗と首都を覚えるだけでも入試ではかなり役に立つので、それだけでも親が買い与える理由になります。ゲーム会社としては、長いスパンで莫大なリターンが見込める優秀なコンテンツです」(前出・エンタメ誌記者)

 この冬は受験生こそ桃鉄をやるしかない?

藤井利男(ライター)

1973年生まれ、東京都出身。大学卒業後に週刊誌編集、ネットニュース編集に携わった後、独立。フリーランスのジャーナリストとして、殺人、未解決事件、死刑囚、刑務所、少年院、自殺、貧困、差別、依存症といったテーマに取り組み続けてきた。趣味はダークツーリズム。

ふじいとしお

最終更新:2023/12/31 08:00
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