小説『インフォーマ2』が早くも年の瀬に降臨
#沖田臥竜 #インフォーマ #インフォーマ2
固定概念を破った「情報屋」の誕生
「えっ⁈ 沖田さん! バーツに両替しないんですかっ⁈ え~!!!」
驚きたいのはこっちである。ヤツは現地で私にカネを使わせる気であったのだ。このバンコク取材は、ジョニーがかかわる仕事にも関係していた。ゆえに経費も、当然、ジョニー持ちのはずなのだが……。
「もう帰りたい……」と漏らすわたしに、 「ハッハハハハ~、沖田さん、またまた~。まだ日本から飛び立ってませんよ~。空港には、レストランとかいっぱいありますんで、奢りますよ!」
しかし、そこでは、250円くらいのウインナーパンしか売っていなかった。
「まあ、機内食は食べ放題、飲み放題ですから、気にしなくて大丈夫っすよ~」
パンを頬張るジョニーを見ながら、機内食のことを気にするしかなかった。
「まさか、キャビンアテンダントが外国人しかおらんから、注文がスムーズにできへんとかないよな?」
ジョニーに恐る恐る尋ねた。
「ハッハハハハ。まさか、半分は日本人っすよ」
飛行機に乗り込むと、客室乗務員は全員タイ人であった。
『インフォーマ2』に盛り込んだモチーフのひとつに、海外に渡った日本人が、ネットを使って遠隔操作で日本国内の実行犯に指示を出していたという、あの社会問題になった事件がある。この事件にとどまらず、昨今はSNSが犯罪に利用されるケースが多いのは誰しもが知っていることだろう。
今作では、インフォーマが、そんな海外を拠点としたSNSマフィアと対峙する。そこに入り乱れる人間模様。タイでの取材中、頭の中で、私はさまざまな場面を作り上げていた。
木原慶次郎率いるインフォーマという集団は、いわゆる「情報屋」と分類されるだろうが、もちろん実在しない。だが、作品で描くことすべてがフィクションであるかと言えばそうではないだろう。
一昨年、新幹線の中で「インフォーマ」というタイトルにしようと決めたとき、まず最初に私が考えたのは、世の中の人々が持つ情報屋という概念をぶち壊すことであった。
それは何も難しいことではなかった。情報屋と聞けば、闇に身を潜めてコソコソと暗躍する人物か、もしくはいかにも訳あり風な曲者というイメージがせいぜいだろう。
だが、インフォーマは違う。逃げ隠れすることなく、乱暴なくらい堂々と世の中のど真ん中で生きている。そして、接触する者みなをインフォーマに巻き込んでしまう能力。誰にも気づかれずに、それをしてしまう力を持っている。
そして、インフォーマたちの行動を決めるは、自身の意志よりも、情報を司る者の意思だ。つまり、インフォーマの中では、それができる木原の意志だけが尊重されているのである。そして情報屋のイメージとはかけ離れた、何の戸惑いも見せずに暴力を駆使することができることも特徴だ。
木原のそういった姿に周囲は戸惑いながらも自然と魅了されていく。木原に惹かれていったのが、バディとなる三島寛治であったり、シーズン1では、河村や愛之介であったりと言えるだろう。
ちなみに、今だから言うが、くだんのジャニーズの記者会見には私の息のかかった人間が何人かいたが、誰にもバレず、NGリストの存在もいち早く報告が上がってきていた。会見中の様々な写真の送られてきた。もっとわかりやすい話もある。「週刊文春」が報じ続けた文京区変死事件。私は4年前に記事化して、自身の単行本にも収録していたのである。そんな私は、どのメディア組織も所属していない。
もう一度言う。インフォーマはあくまで存在しない。だがすべてがフィクションかと言えば決してそうではないだろう。
新たなるインフォーマの世界観を堪能してもらいたい。だいたい続編はコケると言われるが、心配するな。その固定概念もぶち破っていく。
(文=沖田臥竜/作家)
『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』
沖田臥竜・作/サイゾー文芸・刊/1400円+税
amazonでは12月19日より発売、現在予約受付中
政治経済、芸能界はもちん、裏社会の情報にまで精通する「インフォーマ」を名乗る木原慶次郎と週刊タイムズ記者の三島寛治が再び巨悪に挑む。
今回の相手は、SNSを駆使して日本中で犯罪を繰り返す新手のマフィア組織。その拠点があるタイ・バンコクへと2人は向かうが、真の敵として浮上したのは意外な人物だった――。
元ヤクザにして豪放磊落な木原と取材能力よりも厄介を招く才能に長けた三島が下りなす「クライムアクション小説第二弾」
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